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グルドフ旅行記・12 オオカミ親分の涙
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オオカミ親分の勢力はますます強大になっていった。
マットアン王国とジング王国を隔てる険しい山脈のみならず、その周辺の山々に潜む魔物たちまで、オオカミ親分の一家やその配下にあるキング・ナイト一味、ひとつ目一家を恐れて配下に入れてくれと言ってくる魔物たちが多かったからだ。
オオカミ親分は怖い勇者の言いつけ通り、マットアン王国とジング王国の間を旅する人間に危害を加える魔物がいなければ、そのほかの土地のことなどどうでもよかった。だから親分の配下に入れてくださいと言ってくる魔物たちには、好きにしろと答えるのが常だった。
オオカミ親分に好きにしろと言われた魔物たちは、親分の配下に入れてもらったものと勝手に解釈して、親分に忠誠の言葉を述べると喜々として自分の暮らす地へと戻っていった。
また、魔物界にオオカミ親分ありとその名を轟かせてしまったために、世界中から力自慢、喧嘩自慢の魔物がやってきて親分に勝負を挑むようになった。それはオオカミ親分を打ち負かしてその名声や権力を手に入れたいという野心のある魔物たちだった。
オオカミ親分は次から次へとやってくる魔物と戦い、必ず勝った。そういった強い魔物たちとのタイマン勝負を重ねるたびに、オオカミ親分はそう望んでいるわけでもないのにますます強くなっていった。
しかし親分は次から次へとやってくる魔物たちを、いちいち相手にしているのが面倒くさくなってしまった。
そこでオオカミ一家の幹部で戦いの経験も豊富なフラケンや鬼之助を、自分の代わりを務めるように指名した。
フラケンや鬼之助はオオカミ親分に次ぐ実力者と言われるだけあって強かった。オオカミ親分と勝負しにやってくる魔物は先にフラケンか鬼之助と勝負し、大抵負けた。
フラケンや鬼之助が負けた時は、仕方なくオオカミ親分がねぐらの洞窟から出てきて相手をした。
やっぱり親分は強かった。一度も負けることはなかった。
オオカミ親分に打ちのめされた魔物たちは自分の国に帰ると、親分の強さを語って歩いた。
また、親分の強さと度量の広さに惚れこみ、親分の手下になることを望む魔物もいた。
オオカミ親分をはじめ、フラケンや鬼之助が強い魔物との戦いを重ねてどんどん強くなっていくと同時に、強い魔物がオオカミ親分の子分になっていくので、親分の一家はますます強くなっていった。
そんなある日・・・・
空にいくつもの大きな物体が舞った。
早速オオカミ親分の子分の鳥型の魔物が様子を見に行ったが、話しをする間もなく打ちのめされて地面に落ちてきた。
空を舞う強力な魔物が現れたと聞き、慌ててオオカミ親分が洞窟から跳び出してきた。そいつらが峠を旅する人間どもに手を出したら大変なことになる。
オオカミ親分の姿を認めたのか、空を舞っていた魔物たちが次々と降りてきた。
それは大型のドラゴンだった。
ドラゴンは魔物の中でも最高の魔物の部類に入る。強力な力に鋭い爪をもち、空を飛ぶこともできる。口からは鉄をも溶かすといわれる炎を吐く。
そんなドラゴン十体ほどが翼をバタバタさせてオオカミ親分の前に降り立った。小さな魔物はその翼の風力に飛ばされた。
(なんだ、お前たちは?)
オオカミ親分は身構えながら言った。ドラゴンたちは交流を目的にやってきたようには見えない。
(お前がオオカミ親分だな?)
ドラゴンたちの中央にいるひときわ大きなドラゴンが重々しい声を出した。
(そうだ。何しに来たんだ?)
(私はリュウ。タツのことは覚えているか?)
(タツ? は! お前はタツ様の)
タツとはオオカミ親分が慕っていたドラゴンだった。
(そうだ。タツは私の兄だ。兄を見殺しにしたキサマがこの世で最強の魔物だと? 笑わせるな)
(俺はこの世で最強の魔物だなんて一言も言ってねえ)
(何を言う!)
そう言うとドラゴンは口から炎を吐きだした。
オオカミ親分は素早い身のこなしで炎をかわした。周りにいた魔物たちがちりちりと焼かれて黒焦げになった。
(お前らは下がっていろ!)
オオカミ親分は子分たちに命じた。
マットアン王国とジング王国を隔てる険しい山脈のみならず、その周辺の山々に潜む魔物たちまで、オオカミ親分の一家やその配下にあるキング・ナイト一味、ひとつ目一家を恐れて配下に入れてくれと言ってくる魔物たちが多かったからだ。
オオカミ親分は怖い勇者の言いつけ通り、マットアン王国とジング王国の間を旅する人間に危害を加える魔物がいなければ、そのほかの土地のことなどどうでもよかった。だから親分の配下に入れてくださいと言ってくる魔物たちには、好きにしろと答えるのが常だった。
オオカミ親分に好きにしろと言われた魔物たちは、親分の配下に入れてもらったものと勝手に解釈して、親分に忠誠の言葉を述べると喜々として自分の暮らす地へと戻っていった。
また、魔物界にオオカミ親分ありとその名を轟かせてしまったために、世界中から力自慢、喧嘩自慢の魔物がやってきて親分に勝負を挑むようになった。それはオオカミ親分を打ち負かしてその名声や権力を手に入れたいという野心のある魔物たちだった。
オオカミ親分は次から次へとやってくる魔物と戦い、必ず勝った。そういった強い魔物たちとのタイマン勝負を重ねるたびに、オオカミ親分はそう望んでいるわけでもないのにますます強くなっていった。
しかし親分は次から次へとやってくる魔物たちを、いちいち相手にしているのが面倒くさくなってしまった。
そこでオオカミ一家の幹部で戦いの経験も豊富なフラケンや鬼之助を、自分の代わりを務めるように指名した。
フラケンや鬼之助はオオカミ親分に次ぐ実力者と言われるだけあって強かった。オオカミ親分と勝負しにやってくる魔物は先にフラケンか鬼之助と勝負し、大抵負けた。
フラケンや鬼之助が負けた時は、仕方なくオオカミ親分がねぐらの洞窟から出てきて相手をした。
やっぱり親分は強かった。一度も負けることはなかった。
オオカミ親分に打ちのめされた魔物たちは自分の国に帰ると、親分の強さを語って歩いた。
また、親分の強さと度量の広さに惚れこみ、親分の手下になることを望む魔物もいた。
オオカミ親分をはじめ、フラケンや鬼之助が強い魔物との戦いを重ねてどんどん強くなっていくと同時に、強い魔物がオオカミ親分の子分になっていくので、親分の一家はますます強くなっていった。
そんなある日・・・・
空にいくつもの大きな物体が舞った。
早速オオカミ親分の子分の鳥型の魔物が様子を見に行ったが、話しをする間もなく打ちのめされて地面に落ちてきた。
空を舞う強力な魔物が現れたと聞き、慌ててオオカミ親分が洞窟から跳び出してきた。そいつらが峠を旅する人間どもに手を出したら大変なことになる。
オオカミ親分の姿を認めたのか、空を舞っていた魔物たちが次々と降りてきた。
それは大型のドラゴンだった。
ドラゴンは魔物の中でも最高の魔物の部類に入る。強力な力に鋭い爪をもち、空を飛ぶこともできる。口からは鉄をも溶かすといわれる炎を吐く。
そんなドラゴン十体ほどが翼をバタバタさせてオオカミ親分の前に降り立った。小さな魔物はその翼の風力に飛ばされた。
(なんだ、お前たちは?)
オオカミ親分は身構えながら言った。ドラゴンたちは交流を目的にやってきたようには見えない。
(お前がオオカミ親分だな?)
ドラゴンたちの中央にいるひときわ大きなドラゴンが重々しい声を出した。
(そうだ。何しに来たんだ?)
(私はリュウ。タツのことは覚えているか?)
(タツ? は! お前はタツ様の)
タツとはオオカミ親分が慕っていたドラゴンだった。
(そうだ。タツは私の兄だ。兄を見殺しにしたキサマがこの世で最強の魔物だと? 笑わせるな)
(俺はこの世で最強の魔物だなんて一言も言ってねえ)
(何を言う!)
そう言うとドラゴンは口から炎を吐きだした。
オオカミ親分は素早い身のこなしで炎をかわした。周りにいた魔物たちがちりちりと焼かれて黒焦げになった。
(お前らは下がっていろ!)
オオカミ親分は子分たちに命じた。
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