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グルドフ旅行記・11 本物の偽物グルドフ
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「初めまして、グルドフ様。わざわざお越しいただいて、誠に恐縮です」
「困っている方がいると聞けば、放っておくわけにはいきません」
そこはウォースターの町長執務室。町長のクアンに促されてグルドフとポポンは椅子に座った。
「お噂はかねがねお伺いしています」
「それでお困りごととは?」
グルドフが尋ねた。
「当町であなた様の名をかたる者が、素行不良な者たちを集めて狼藉を働いているのです。いよいよ手が付けられなくなりましたら領主様に報告をして手を打ってもらうしかないと考えていたのですが、ちょうどグルドフ様がこの町に来たというので、ぜひ手助け願いたいと思った次第です」
「そうですか。わかりました。お力になります。もう少し詳しく話してください」
「はい。三日前にゲルグ王国の勇者グルドフと名乗る男が、ポポンという魔法使いの男と一緒にここにやってきました。二人とも立派な体格で、いかにも勇者と魔法使いといった出で立ちでしたので、私はすっかり信じてしまいました」
その言葉を聞いてグルドフとポポンは顔を見合わせた。
「よく考えたら、勇者を引退しているので、あなた様方のように普通の旅人の装いのはずなのに・・・・」
「それで?」
グルドフは先を促した。
「ここへ来た二人は、この国を旅していてポイの町で起こった事件や、ドーアンの村の事件を解決してきたと話しました。そしてこの町で何か困り事があれば解決してやると言うのです。私はここはめったに争い事がなく、平和な町なので特別問題はないと申しました。すると勇者をかたる者はそんなはずはない、まるっきり平和な町や村などこの世に存在しないからよく考えろと言うのです。それで町の南に時々トラブルを起こす4、5人のグループがあると申したところ、すぐに解決してやると言ってここを出てきました」
「そうですか。勇者がそのようなことを言うはずがないのですが」
「そうですね。でもその時はその者たちの姿に圧倒されていましたし、私は勇者様に会ったことがありませんでしたので、すっかり信じてしまいました」
「それで?」
「その日の夕方、再びここに来て問題を解決してやったから礼をよこせというのです。一緒に同行させた役人の報告によると、かなりひどい暴力を振るったようでした。それでも勇者様にお仕事をお願いしたのですから、幾らかのお礼はするつもりでした。しかしその者たちはとんでもない額を要求してきたのです」
「そうですか。いかにも偽物がやりそうなことです」
「私はとてもそのような金額は払えないと申しました。すると半額にまけてやるから払えと言いました。それでもとても払える金額ではなかったので、私は町の予算から始まって詳しい話をしようとしたのですが、その者たちはろくに話しを聞かずにここを出ていってしまったのです」
「それはそれは」
グルドフは小さく首を左右に振りながら言った。
「それだけで事が済めばよかったのですが、その者たちは懲らしめた者たちのところに行き、痛めつけていない仲間を使って町の者に因縁をつけて喧嘩を吹っ掛けたり、物を勝手にタダ同然に値切って買っていったりといったことを堂々と行うようになりました」
「それは二日前から?」
「そうです。住人からの訴えを聞いて昨日、役人が出向いて話をしてきたのですが、約束の報酬を払わない限りそのような行いを続けるというのです。私は報酬の約束などした覚えはないのですが」
「わかりました。早速行ってみます」
グルドフとポポンは町長の執務室を出ていった。
「困っている方がいると聞けば、放っておくわけにはいきません」
そこはウォースターの町長執務室。町長のクアンに促されてグルドフとポポンは椅子に座った。
「お噂はかねがねお伺いしています」
「それでお困りごととは?」
グルドフが尋ねた。
「当町であなた様の名をかたる者が、素行不良な者たちを集めて狼藉を働いているのです。いよいよ手が付けられなくなりましたら領主様に報告をして手を打ってもらうしかないと考えていたのですが、ちょうどグルドフ様がこの町に来たというので、ぜひ手助け願いたいと思った次第です」
「そうですか。わかりました。お力になります。もう少し詳しく話してください」
「はい。三日前にゲルグ王国の勇者グルドフと名乗る男が、ポポンという魔法使いの男と一緒にここにやってきました。二人とも立派な体格で、いかにも勇者と魔法使いといった出で立ちでしたので、私はすっかり信じてしまいました」
その言葉を聞いてグルドフとポポンは顔を見合わせた。
「よく考えたら、勇者を引退しているので、あなた様方のように普通の旅人の装いのはずなのに・・・・」
「それで?」
グルドフは先を促した。
「ここへ来た二人は、この国を旅していてポイの町で起こった事件や、ドーアンの村の事件を解決してきたと話しました。そしてこの町で何か困り事があれば解決してやると言うのです。私はここはめったに争い事がなく、平和な町なので特別問題はないと申しました。すると勇者をかたる者はそんなはずはない、まるっきり平和な町や村などこの世に存在しないからよく考えろと言うのです。それで町の南に時々トラブルを起こす4、5人のグループがあると申したところ、すぐに解決してやると言ってここを出てきました」
「そうですか。勇者がそのようなことを言うはずがないのですが」
「そうですね。でもその時はその者たちの姿に圧倒されていましたし、私は勇者様に会ったことがありませんでしたので、すっかり信じてしまいました」
「それで?」
「その日の夕方、再びここに来て問題を解決してやったから礼をよこせというのです。一緒に同行させた役人の報告によると、かなりひどい暴力を振るったようでした。それでも勇者様にお仕事をお願いしたのですから、幾らかのお礼はするつもりでした。しかしその者たちはとんでもない額を要求してきたのです」
「そうですか。いかにも偽物がやりそうなことです」
「私はとてもそのような金額は払えないと申しました。すると半額にまけてやるから払えと言いました。それでもとても払える金額ではなかったので、私は町の予算から始まって詳しい話をしようとしたのですが、その者たちはろくに話しを聞かずにここを出ていってしまったのです」
「それはそれは」
グルドフは小さく首を左右に振りながら言った。
「それだけで事が済めばよかったのですが、その者たちは懲らしめた者たちのところに行き、痛めつけていない仲間を使って町の者に因縁をつけて喧嘩を吹っ掛けたり、物を勝手にタダ同然に値切って買っていったりといったことを堂々と行うようになりました」
「それは二日前から?」
「そうです。住人からの訴えを聞いて昨日、役人が出向いて話をしてきたのですが、約束の報酬を払わない限りそのような行いを続けるというのです。私は報酬の約束などした覚えはないのですが」
「わかりました。早速行ってみます」
グルドフとポポンは町長の執務室を出ていった。
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