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グルドフ旅行記・9 偽物グルドフ
無銭飲食をした勇者
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グルドフたちはスーズの町にやってきた。
スーズという町はミレファルコとポイを結ぶ主要街道から少し離れたところにあり、多くの旅人が訪れる町ではなかった。事実、グルドフとポポンも以前の旅ではスーズに行く予定はなかったのだが、ポポンが旅の途中で体調を崩し、やむを得ずスーズで休暇を取った。
その時に町の中をぶらぶらしていたグルドフが、たまたま見つけたのがイワンの道場だった。
グルドフはその若い道場主と稽古をしたのだが、たちまちイワンのことを気に入ってしまった。
イワンは剣術の技量が優れているというわけではなかった。むしろ、小さいながらも自分の道場を構え、門人を取っているにしては、これほど弱い武道家をグルドフはほかに知らなかった。
どちらかというと、素直で屈託がなくて、自分が強くなるために武術をしているのではなく、門人たちに稽古をつけ、世話を焼くために武術をしているかのようだった。事実、イワンの剣の筋は良いし、技も良いものを持っているのに、瞬発力や力が弱く、体力もなかった。それはひとえに稽古をしないことから来ていた。
剣術の技量がたいしたことなくても、弟子を取り、それで生活していけるということは、グルドフと同じようにイワンの人柄に惹かれ、慕う人が多かったからだ。近隣の町村からわざわざイワンの道場に来る者もいて、特に剣術の道場の無いポイからは、何日も泊りがけでイワンの道場に来て稽古をつけてもらう熱心な弟子もいた。
グルドフはスーズの町に寄ることが楽しみになっていたし、それは道場に行ってイワンに会えるからだった。
正午過ぎにスーズの町に入ったグルドフとポポンは、遅い昼食を取るために町の食堂に入った。
少ないメニューの中から何を食べようかと品定めをしている時に、近くのテーブルで話しをしている男たちの声が聞こえてきた。
「グルドフ? どこかで聞いたことのある名前だなあ」
「この前、ポイで盗人たちを捕らえた」
「ああ、勇者か。すごい剣の達人の」
「そう」
「ええ? そいつが食い逃げしたのか?」
「むっ」
男たちの話を聞いていたグルドフが、思わずうなり声を出した。
「そうらしい。昨日、この町にやってきて、南の食堂で飯を食い終えてから、金がないと言い出したそうだ。後で金を持ってくると言うのを店主が引き留めて名前を聞いたら、剣の達人のグルドフだと名乗ったらしい」
「勇者の偽物じゃないのか?」
「でも、いかにも強そうだったし、どうやって金を工面してくるかと尋ねたら、剣の使い手と勝負して、勝ったら金を貰うと言っていたそうだ」
「へー。それでグルドフとやらは、金を払いに来たのかね?」
「昨日は来なかったらしい」
「じゃ、うまく騙されたのだろうよ」
「でも、その店の店主に武道家のことを訊いていたと言っていたから、そこへ行くつもりかもしれない」
「ふーん」
グルドフとポポンは運ばれてきた料理を大急ぎで食べ、店を出た。
スーズという町はミレファルコとポイを結ぶ主要街道から少し離れたところにあり、多くの旅人が訪れる町ではなかった。事実、グルドフとポポンも以前の旅ではスーズに行く予定はなかったのだが、ポポンが旅の途中で体調を崩し、やむを得ずスーズで休暇を取った。
その時に町の中をぶらぶらしていたグルドフが、たまたま見つけたのがイワンの道場だった。
グルドフはその若い道場主と稽古をしたのだが、たちまちイワンのことを気に入ってしまった。
イワンは剣術の技量が優れているというわけではなかった。むしろ、小さいながらも自分の道場を構え、門人を取っているにしては、これほど弱い武道家をグルドフはほかに知らなかった。
どちらかというと、素直で屈託がなくて、自分が強くなるために武術をしているのではなく、門人たちに稽古をつけ、世話を焼くために武術をしているかのようだった。事実、イワンの剣の筋は良いし、技も良いものを持っているのに、瞬発力や力が弱く、体力もなかった。それはひとえに稽古をしないことから来ていた。
剣術の技量がたいしたことなくても、弟子を取り、それで生活していけるということは、グルドフと同じようにイワンの人柄に惹かれ、慕う人が多かったからだ。近隣の町村からわざわざイワンの道場に来る者もいて、特に剣術の道場の無いポイからは、何日も泊りがけでイワンの道場に来て稽古をつけてもらう熱心な弟子もいた。
グルドフはスーズの町に寄ることが楽しみになっていたし、それは道場に行ってイワンに会えるからだった。
正午過ぎにスーズの町に入ったグルドフとポポンは、遅い昼食を取るために町の食堂に入った。
少ないメニューの中から何を食べようかと品定めをしている時に、近くのテーブルで話しをしている男たちの声が聞こえてきた。
「グルドフ? どこかで聞いたことのある名前だなあ」
「この前、ポイで盗人たちを捕らえた」
「ああ、勇者か。すごい剣の達人の」
「そう」
「ええ? そいつが食い逃げしたのか?」
「むっ」
男たちの話を聞いていたグルドフが、思わずうなり声を出した。
「そうらしい。昨日、この町にやってきて、南の食堂で飯を食い終えてから、金がないと言い出したそうだ。後で金を持ってくると言うのを店主が引き留めて名前を聞いたら、剣の達人のグルドフだと名乗ったらしい」
「勇者の偽物じゃないのか?」
「でも、いかにも強そうだったし、どうやって金を工面してくるかと尋ねたら、剣の使い手と勝負して、勝ったら金を貰うと言っていたそうだ」
「へー。それでグルドフとやらは、金を払いに来たのかね?」
「昨日は来なかったらしい」
「じゃ、うまく騙されたのだろうよ」
「でも、その店の店主に武道家のことを訊いていたと言っていたから、そこへ行くつもりかもしれない」
「ふーん」
グルドフとポポンは運ばれてきた料理を大急ぎで食べ、店を出た。
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