グルドフ旅行記

原口源太郎

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グルドフ旅行記・7 かわいい同行者

生きていた!

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 山の中腹に大きな洞窟があった。
 グルドフは背負っていた荷物を置き、中から電灯を取り出した。
 ポポンとセーラも明かりを手にし、グルドフに続いて洞窟の中に入っていった。
 洞窟の中は広い部屋のようになっている。
 奥で獣の唸り声がした。
「下がってください」
 グルドフがそう言ったとき、暗闇から巨大な獣が飛び出してきた。
 グルドフは咄嗟に避けながら剣を振う。
 グルドフの横を駆け抜けた獣が地面を転がった。
 巨大なオオカミに似た魔物が、唸り声をあげながら立ち上がる。グルドフが魔物に与えた一撃は、前足の付け根辺りを軽く斬っただけだった。
 魔物はポポンやセーラを見向きもせず、グルドフに対し牙をむき出した。
 その時、洞窟の奥で子供の泣き声がした。
「む」
 グルドフが小さな声を出した時、オオカミの魔物が再び襲いかかった。
 しかし今度は魔物が手傷を負っていることと、グルドフに魔物の姿が見えていることで、余裕を持って対応することができた。
 グルドフはオオカミが背後に回って噛みつこうとするのをかわし、先ほどとは反対側の前足の付け根辺りを浅く斬った。
 オオカミは再び洞窟の中で倒れこんだ。よろよろと立ち上がろうとするが、思うように力が入らず、よろけてまた倒れた。
「さ、今です。子供たちを」
 オオカミに対峙するグルドフの後ろを通り、ポポンとセーラが子供の泣き声のするところに行った。
 オオカミは地面に横たわって唸り声を上げているが、もう跳びかかろうとはしない。
 ポポンとセーラは敷き詰められた枯草の上にいる子供たちを抱き上げた。
「キャッ」
 セーラが小さな悲鳴を上げた。
 子供たちがいた反対側の壁際に、小さなぬいぐるみのようなものがあった。
 干からびたオオカミの子供だった。背に長い矢が刺さっている。
「早く行きなさい」
 グルドフが言った。
 ポポンとセーラはまたグルドフの後ろを通り、洞窟の外へと出ていった。
 子供たちがいた枯草の上に、同じような大きさの人形だけが残った。
 オオカミはゆっくりと立ち上がると、両足を引きずるようにしてよろよろと干からびたオオカミの所まで行き、また体を横たえた。
「お前の子か」
 グルドフが言った。
 そのオオカミは魔物といっても、野生の動物に近い魔物だ。多分グルドフの言葉は理解できないだろう。
 それでもグルドフはオオカミに話しかけた。
「人間の子供を育てていてくれたのか?」
 大きな魔物のオオカミは、子供の亡骸の横でグルドフに斬られた足をぺろぺろ舐めている。
 グルドフはゆっくりと下がり、洞窟を出た。 
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