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グルドフ旅行記・7 かわいい同行者
捜索再び
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翌朝、グルドフはテントや寝袋など三人分の荷物の大半を背負って村を出発した。セーラが少しの自分の荷物と丁寧に梱包された人形を背負い、ポポンは昨晩作った人形を乗せて動かすための台車を背負っていた。
一日目は山の中で野宿をし、次の日の午前中に、ハゲタカに似た魔物たちの住む山の上の小さな盆地に着いた。
ふたたび見慣れない客を見つけ、魔物たちはギャアギャア叫び声をあげながら上空を飛び回った。
グルドフたちは切り立った壁のような岩の隙間から盆地の中に入り、箱に四つの輪を取り付けた台車の上に人形を置いた。その上に布を被せて、用意が整うまで魔物たちの目に触れないようにした。
ポポンとセーラもその場で布を頭から被り、魔物から身を隠した。
グルドフだけが台車に取り付けた長い紐の反対側を持ち、盆地の外周をぐるりと回って、ポポンたちの反対側に行った。
その場所でグルドフも布を被って動かずにいて、魔物たちが落ち着くのを待った。
やがて空を飛んでいた魔物たちが一羽、二羽と棲家の巣に戻ってきた。
グルドフは布の下からそっと手を出して振り、ポポンに合図を送った。
ポポンはそれを見て、人形にかけてあった布を取り除いた。
白地に赤や黄色のカラフルな服を着せた赤ちゃんの人形を乗せた台車に取り付けた紐を、グルドフはゆっくりと手繰り寄せ始める。
盆地の中央へカラカラと音を立てて近付いてくる人形に気が付いて、ハゲタカ似の魔物たちはまたギャアギャアと声をあげた。
その中の一羽、折れた短い矢の刺さった魔物が人形に近付き、くちばしでそっと突き始めた。
そして人形の服をくちばしで噛むと、ぐいぐいと引っ張った。
人形は台車から落ちてころころっと転がった。
魔物は驚いたように飛び退いた。
そしてまた、顔を盛んに動かしながら人形を観察する。
その時、巣に戻っていた魔物たちがまたギャアギャアと叫び、空に飛び立った。
岩の間から牛ほどもある大きなオオカミが現れた。その姿は野生の獣と同じようだったが、その普通ではない大きさから、魔物とわかる。
グルドフは息を殺して、新たに現れた魔物を見ていた。
オオカミは用心するように盆地へ降りていくと、タタタッと人形に近付き、しばらく匂いを嗅いでいたが、やがてパクッとくわえた。そのまま小走りで盆地を出ていく。
グルドフはオオカミの後を追った。
ポポンとセーラも慌てて、それでもできるだけ音を立てないようにしながら、オオカミの去った方向へと走り出した。
グルドフはオオカミを追って、岩と瓦礫の獣道を軽々と滑るようにして走っていく。だがポポンとセーラはそんなわけにはいかない。必死にグルドフの姿を追ったが、すぐに見失ってしまった。
「下手に動かずに、ここで待っていたほうがいいね」
ポポンは腰の短剣を抜きながら言った。
「はい」
セーラは引き締まった顔になり、手にした短剣を鞘から抜いた。
魔物を警戒しながら二人がしばらく待っていると、グルドフが帰ってきた。
「オオカミのねぐらを見つけました」
「では早速行ってみるかね?」
「行きましょう」
グルドフを先頭に、三人は歩いて山を下りていった。
一日目は山の中で野宿をし、次の日の午前中に、ハゲタカに似た魔物たちの住む山の上の小さな盆地に着いた。
ふたたび見慣れない客を見つけ、魔物たちはギャアギャア叫び声をあげながら上空を飛び回った。
グルドフたちは切り立った壁のような岩の隙間から盆地の中に入り、箱に四つの輪を取り付けた台車の上に人形を置いた。その上に布を被せて、用意が整うまで魔物たちの目に触れないようにした。
ポポンとセーラもその場で布を頭から被り、魔物から身を隠した。
グルドフだけが台車に取り付けた長い紐の反対側を持ち、盆地の外周をぐるりと回って、ポポンたちの反対側に行った。
その場所でグルドフも布を被って動かずにいて、魔物たちが落ち着くのを待った。
やがて空を飛んでいた魔物たちが一羽、二羽と棲家の巣に戻ってきた。
グルドフは布の下からそっと手を出して振り、ポポンに合図を送った。
ポポンはそれを見て、人形にかけてあった布を取り除いた。
白地に赤や黄色のカラフルな服を着せた赤ちゃんの人形を乗せた台車に取り付けた紐を、グルドフはゆっくりと手繰り寄せ始める。
盆地の中央へカラカラと音を立てて近付いてくる人形に気が付いて、ハゲタカ似の魔物たちはまたギャアギャアと声をあげた。
その中の一羽、折れた短い矢の刺さった魔物が人形に近付き、くちばしでそっと突き始めた。
そして人形の服をくちばしで噛むと、ぐいぐいと引っ張った。
人形は台車から落ちてころころっと転がった。
魔物は驚いたように飛び退いた。
そしてまた、顔を盛んに動かしながら人形を観察する。
その時、巣に戻っていた魔物たちがまたギャアギャアと叫び、空に飛び立った。
岩の間から牛ほどもある大きなオオカミが現れた。その姿は野生の獣と同じようだったが、その普通ではない大きさから、魔物とわかる。
グルドフは息を殺して、新たに現れた魔物を見ていた。
オオカミは用心するように盆地へ降りていくと、タタタッと人形に近付き、しばらく匂いを嗅いでいたが、やがてパクッとくわえた。そのまま小走りで盆地を出ていく。
グルドフはオオカミの後を追った。
ポポンとセーラも慌てて、それでもできるだけ音を立てないようにしながら、オオカミの去った方向へと走り出した。
グルドフはオオカミを追って、岩と瓦礫の獣道を軽々と滑るようにして走っていく。だがポポンとセーラはそんなわけにはいかない。必死にグルドフの姿を追ったが、すぐに見失ってしまった。
「下手に動かずに、ここで待っていたほうがいいね」
ポポンは腰の短剣を抜きながら言った。
「はい」
セーラは引き締まった顔になり、手にした短剣を鞘から抜いた。
魔物を警戒しながら二人がしばらく待っていると、グルドフが帰ってきた。
「オオカミのねぐらを見つけました」
「では早速行ってみるかね?」
「行きましょう」
グルドフを先頭に、三人は歩いて山を下りていった。
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