グルドフ旅行記

原口源太郎

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グルドフ旅行記・4 怪しい奴らの正体を暴け!

となり村へ捜索に

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 翌朝、グルドフはニタリキの村を目指して一人で旅立った。背中に老剣士イナハが徹夜で作ってくれたという木刀を二本、旅の荷物と共に背負っている。
 いくら相手が悪い者たちだとしても、人間を魔物と同じように剣で斬ってしまうわけにはいかない。木刀で手に負えないようなら剣を抜かなければならないだろうが、できればそれは避けたかった。
 ニタリキの村までは半日もあれば行けるとイナハは言っていた。そこも小さな村のようなので、ガラの悪い連中のことを調べるにしても、そう時間はかからないだろう。
 もしその連中がシェイという若者を襲ったことと全く関係がないとわかった時は困るなとグルドフは思った。何者かが再びシェイを襲うまで、この辺境の村にいるわけにはいかない。その再びが数日後になるのか、数か月後になるのかわからないのだから。

 ポポンはグルドフを見送ったあと、宿で朝食をゆっくりと食べ、その後レンタルショップに行ってみた。
 やはりレンタル品の中に魔法の道具などなかった。改造すれば使えそうな物もあったが、レンタル品を改造するわけにもいかない。
 ポポンは村の雑貨屋などを巡り、何か魔法に使える物がないかと探して歩いた。

 森を抜けると、木々の柵に囲まれた牧草地帯に出た。羊や牛が優雅に草を食べている。
 さらに進むと、辺りはブドウや桃、リンゴを栽培する果樹園になった。
 それからほどなく、グルドフはニタリキの村に到着した。
 正午を少し過ぎている。
 グルドフはお昼ご飯を食べるところを探した。
 村の中央に宿を兼ねた食堂があり、グルドフはそこに入って食べるものを注文した。
「今晩、宿は空いておりますか?」
 グルドフは食堂のおかみに尋ねた。
「空いています」
「泊まることになると思うので、予約をお願いします」
「はい」
「私はあちこちを旅している者なのですが、隣の村で聞いたところ、この村には怪しげな連中が大勢たむろしているらしいですな」
「怪しげな人たちと言われればそうかもしれませんが」
「それを聞いたので、この村に来ようか止めようか迷ったのです。その者たちはどういった連中なのですか?」
「さあ。よくわかりません。一年ほど前に二十人くらいでこの村に来て、村の外れの大きな家と隣の小さな家の二軒を借りて住んでいます。体格がよくて、身なりはよいとは言えない人が多いのですけれど、何か悪いことをするわけではないですし、この店にもよく来てくれます」
 中年のおかみは、その者たちにあまり悪い印象は抱いていないようだ。
「何か仕事はしているのですか?」
「さあ。働いているという話は聞きません。ですがここの料金はいつもきちんと払ってくれます。月に一度くらい大勢で出かけていき、数日してまた戻ってきます。今も出かけていて、この村に残っているのは留守番をしている人だけです」
「そうですか。最後に村長さんの家の場所をお聞きしたいのですが」
「村長さんですか?」
「いつも村長さんや町長さんに一筆書いてもらっているのです。その場所に寄ったという証として」
 グルドフの言葉をおかみは信じた。

 グルドフが宿のおかみから教えられた家に行くと、ちょうど村長は在宅中だった。
「私は以前ゲルグ王国で勇者をしていたグルドフという者です」
「勇者をしていた方?」
 村長はグルドフをしげしげと観察した。
「なんだか物々しい装備ですな」
 グルドフは腰に剣を差し、二本の木刀と弓矢を背負っている。
「ちょっと訳ありまして」
「それで私に何か?」
「実はある方に頼まれまして、この村の怪しげな人々について調べに参ったのです」
「ほう」
「村長さんの知っていることを教えていただけるとありがたいのですが」
「ふむ。その怪しげな人々について話すことは構いませんが、その前にあなたが本当にゲルグ王国の勇者だったのか、そしてあなたに調査を命じたのが誰かをはっきりさせていただきたいのですが」
 年配の小柄な村長は、グルドフの目を見て言った。
「まあ、そうですな。どこの誰ともわからぬ者がいきなり訪ねてきて、この村に住んでいる者について教えろと言われても、そう簡単に教えられるわけがありませんな」
「そうですな」
「では、その者たちの住んでいる家の場所を教えてください。直接訪ねていって話をしてみたいと思います。それくらいならよろしいでしょう?」
「自分で勝手に調べるというのなら、止めはしません」
「できれば村長さんも一緒に来ていただいて、そこで起こることを見ていていただけるとありがたいのですが。何かごたごたでも起こった時の証人になっていただきたい」
「ふむ。そうですな。確かにあの者たちは普通の者ではなさそうですし、何か問題があったら困りますから、ご一緒しましょう」
「村長さんは私と一緒にその者たちに会いにに行くのではなく、遠くから見ていて下さるだけで結構ですから」
「わかりました。私のほかに、王様のところから派遣されている役人にも来てもらいましょう。といっても、この村に役人は二人しかいませんが」

 村長は近くに住む若い二人の役人に声をかけ、四人で村外れの大きな家へと向かった。
 グルドフは村長の家を出るときに、長いロープを借り、背負っているカバンに入れていた。
 村長はそれを何に使うつもりなのかわからなかったが、あえて訊こうとはしなかった。
 一人で怪しげな者たちのところに乗り込むというグルドフを信用したのか、村長は道を歩きながら、一年ほど前に村にやって来た連中について話をしだした。
「十八人が二軒の家を借りて共同生活をしております。連中を仕切っているのは三十くらいの比較的若い男で、ほかの者たちのようにいかつい感じではないのですが、少々不気味な男です。家賃や税金はきちんと払っていますし、村人とトラブルを起こすようなこともありません。仕事はしていないようなので、金はしっかり持っているのではないかと思います。なぜあのように大勢で生活をしているのかは不明ですな」
「月に一度くらい、皆でどこかに出かけていくと聞いたのですが」
「ええ。この村には小さな食堂が一軒あるだけですので、時々大勢で隣町のポイに出かけていくようです。ポイには食堂が何軒もありますし、飲み屋もあります。二、三日泊りがけで出かけていっては、羽目を外して酒を飲み明かしているのでしょう」
「ほう。なかなか変わった者たちの集まりのように思えますな」
「私もそう思います」
 そうたくさん話をする間もなく、怪しげな連中が暮らしているという家の前まで来た。
「ここです」
 村長が言った。
「では、みなさんはしばらくここでお待ちを。必要あればお呼びします」
「あなた一人で大丈夫ですかな?」
「まあ、大丈夫でしょうよ」
 グルドフはそう言うと、スタスタと大きな家に入っていった。
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