グルドフ旅行記

原口源太郎

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グルドフ旅行記・3 勇者をやっつけろ

岩山に潜む魔物たち

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 コウモリに似た魔物が、青い空の中をパタパタと飛んでいく。
 やがて魔物は険しい山々に囲まれた谷に降りていき、谷底にある洞窟へと入っていった。
 洞窟の中には多くの魔物がたむろしている。
 コウモリ型の魔物は、洞窟の一番奥にいる大きなオオカミ男風の魔物の前まで飛んでいき、そこで天井に張り付いた。
「キーキー、キーキー」
 コウモリ型が言った。
「ガウ?」
 オオカミ男風が訊いた。
「キーキーキー」
「ガウガウ」
「キーキーキーキーキー、キーキーキーキー」
「ガウ!」
「キーキーキーキーキー」
「ガウー」
「キー・・・・・
 この物語を読んでいるのは人間様なので、魔物言葉を理解できないと思うので、訳を入れてもう一度書き直します。

 コウモリに似た魔物が、青い空の中をパタパタと飛んでいく。
 やがて魔物は険しい山々に囲まれた谷に降りていき、谷底にある洞窟へと入っていった。
 洞窟の中には多くの魔物がたむろしている。
 コウモリ型の魔物は、洞窟の一番奥にいる大きなオオカミ男風の魔物の前まで飛んでいき、そこで天井に張り付いた。
「キーキー、キーキー」
(てぇへんだ、てぇへんだ)
 コウモリ型が言った。
「ガウ?」
(どうした?)
 オオカミ男風が訊いた。
「キーキーキー」
(勇者がやって来る)
「ガウガウ」
(勇者だと)
「キーキーキーキーキー、キーキーキーキー」
(ドラゴンのタツ様とダバイン様を、やっつけた奴のうちの一人だ)
「ガウ!」
(何!)
「キーキーキーキーキー」
(小さくてちょび髭をはやした方だ)
「ガウー」
(うーむ)
「キー・・・・・
 意味が理解できないのに魔物言葉を書いても仕方がないので、以下、魔物言葉を省略し、訳のみ表記します。
(あいつら、勇者と年寄りの魔法使いみてえなの二人だけだ。ヤッちまいましょう)
(いや、あいつはめちゃくちゃ強い。わしらが束になってかかったところで、かなわねぇ)
(それでも親分・・・・)
(ちょっと待て。おい! みんな集まってくれ!)
 オオカミ男は洞窟の魔物たちに向かって叫んだ。
 魔物たちがぞろぞろと洞窟の奥に集まった。
 実はこの魔物、数年前にアザム王国(当時はダバイン王国)の王、ダバインが殺された時、その城にいた魔物たちだ。
 オオカミ男はドラゴンの手下で、ダバイン王のいる王の間でダバイン王を守る役目についていた。しかし、力自慢の魔物たちをいとも簡単に斬り捨てていく勇者を見て、驚き、怖くなってその場から逃げ出した。
 いつしか、その時に逃げ出した魔物たちが集まって徒党を組むようになったが、仲間を見捨てて逃げ出した物たちという目で他の魔物たちに見られ、人も魔物もほとんど寄り付かない高地の山奥で暮らすようになっていた。
(親分だったタツ様とその友人のダバイン様を殺した勇者が近くに来ている。敵を討つ絶好の機会だと思わねーか!)
 オオカミ男は集まった魔物たちに呼びかけた。
 魔物たちは戸惑っている。勇者の実力を知っている魔物もいるからだ。
(相手は勇者と老いぼれの二人だけだ)
 それを聞いて魔物たちの顔つきが変わった。
(よし、敵を討ってやろう)
(そうだ、殺っちまえ)
(殺せ、殺せ)
(よし、決まった。では、どうやって殺すか? まともに戦っては、あの勇者一人でもとても勝ち目はない)
 それを聞いて、魔物たちはまたしゅんと大人しくなった。
(皆、頭を絞って考えろ)
 オオカミ男が言った。だが、人間よりも知能レベルの低い魔物たちだ。そう良い考えなどすぐに浮かんでくるわけがない。
 一時間ほど考えていると、人間のゾンビタイプの魔物が口を開いた。
(オオカミ親分、勇者に近づくと斬られてしまいます。遠くから攻撃して殺すのがいいんじゃねぇかと思いますが)
(どうやって?)
(山の上から大きな岩をゴロゴロっと転がして、潰してしまうのでさぁ)
(勇者どもはそんなもの、簡単にかわしてしまうぞ)
(かわしきれねぇほど沢山の岩を、いっぺんに落としてやるんでさぁ。数撃ちゃ当たるってやつで)
(うむ。それならたとえ失敗したとしても、我々は安全だ。それで行こう。ドラ吉、奴らのいる辺りまで案内してくれ)
(あいよ)
 コウモリに似た魔物が応えた。
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