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グルドフ旅行記・2 お宝を盗んだ犯人は
盗まれたお宝・1
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一軒しかない宿は、村の中心近くにある。
村に入り、グルドフたちが宿へと歩いていくと、村の中央にある広場に大勢の人が集まっていた。皆、浮かない顔をしている。
「どうしたのかな?」
グルドフがそう呟きながら歩いていると、不意に声をかけられた。
「おや、旅のお方。またこの村にお越しで?」
グルドフに声をかけたのは、集団の中心にいるこの村の村長だった。グルドフは前回この村を訪れた時に村人たちと一緒に酒を飲んだので、幾人か覚えのある顔もあった。
「今日もこの村にご厄介になり、明日、峠を越えてマットアン国に向かう予定であります」
「それはそれは」
「皆さん、浮かない顔をしておりますね」
「それが、困ったことが起こりまして」
「困ったこと?」
グルドフが眉をひそめて言うと、後ろからポポンがグルドフの袖を引っ張った。
ポポンは暗に、グルドフに余計なことに首を突っ込むなと言っている。
「実は村の大事なお宝が何者かに盗まれまして」
「おやおや」
広場の中心に小さな祠が祀ってある。皆がその周りに集まっているということは、その祠に村の宝が安置されていたのだろう。
「何を盗まれたのです?」
グルドフは興味を持って訊いた。
「村のお宝です」
「で、そのお宝とは?」
「その、誰も知らないのです。昔からこの祠に箱に入れられて祀られていたのですが、箱の中身を見た者は誰もいないのです」
村長は申し訳なさそうに言った。
「箱が空だったということはないのですか?」
「一人、何年か前に箱を手に取ってみた者がおりまして、がたがたと音がしたとのことであります」
「ふむ。でも、それならばお宝がなくなったとしても誰も困る者はいないわけですな。お宝が何かも分からずに何年も経っているわけですから」
「いや、そういう訳にはいきません。春と秋に五穀豊穣、無病息災、その他もろもろを祈願してお祭りをしているのです。大事なお宝がなくなってしまってはそれができません」
「そうですか、それはまことに困った話ですな」
「困ったものです」
ポポンがまた、グルドフの袖を引っ張った。
「私は明日の準備がありますので、これで・・・・」
「村の恥をお話ししてしまい、申し訳ありません」
「いえ、何のお役にも立てなくて」
グルドフとポポンは宿にチェックインし、レンタルショップで借りるものをリストアップして紙に書きだしていった。
「これくらいかな。あとは店に行ってみて、足りない物が有ったら借りるとしましょう」
グルドフとポポンはレンタルショップに行くために宿を出た。
村の人々はまだ広場に集まっていた。
そこへ数人の男がバタバタと走ってきた。
「村長、村長」
「どうした?」
「村の外でこれを見つけました」
先頭を走ってきた男が手にしているのは、いくつもの木切れだった。
「これは。お宝を入れていた木の箱だ。どこにあったのだ?」
「村の畑を出て、街道を南に三百メートルほど行った岩山の中です」
「付近を捜してみたのか?」
「はい。しかしお宝らしきものは何も見つけることができませんでした」
「そうか・・・・」
村長はがっかりしたように言った。
グルドフはポポンがしきりに袖を引っ張るのにも構わず、石のようにその場に佇んで今の会話を聞いていた。
「何者かがここから村のお宝を盗み出し、村の外で入れ物の箱を壊して中のお宝を取り出して、どこかへ逃げ去ったらしいな」
「はい・・・・」
村長たちは考え込んだ。
グルドフはこれ以上そこにいても仕方がないと思い、レンタルショップへと歩き出した。
「そうだ!」
村長が顔を上げた。
「丁度、旅のお方がおられる」
「へ? 私?」
グルドフは驚いて、自分の顔を指さした。
村に入り、グルドフたちが宿へと歩いていくと、村の中央にある広場に大勢の人が集まっていた。皆、浮かない顔をしている。
「どうしたのかな?」
グルドフがそう呟きながら歩いていると、不意に声をかけられた。
「おや、旅のお方。またこの村にお越しで?」
グルドフに声をかけたのは、集団の中心にいるこの村の村長だった。グルドフは前回この村を訪れた時に村人たちと一緒に酒を飲んだので、幾人か覚えのある顔もあった。
「今日もこの村にご厄介になり、明日、峠を越えてマットアン国に向かう予定であります」
「それはそれは」
「皆さん、浮かない顔をしておりますね」
「それが、困ったことが起こりまして」
「困ったこと?」
グルドフが眉をひそめて言うと、後ろからポポンがグルドフの袖を引っ張った。
ポポンは暗に、グルドフに余計なことに首を突っ込むなと言っている。
「実は村の大事なお宝が何者かに盗まれまして」
「おやおや」
広場の中心に小さな祠が祀ってある。皆がその周りに集まっているということは、その祠に村の宝が安置されていたのだろう。
「何を盗まれたのです?」
グルドフは興味を持って訊いた。
「村のお宝です」
「で、そのお宝とは?」
「その、誰も知らないのです。昔からこの祠に箱に入れられて祀られていたのですが、箱の中身を見た者は誰もいないのです」
村長は申し訳なさそうに言った。
「箱が空だったということはないのですか?」
「一人、何年か前に箱を手に取ってみた者がおりまして、がたがたと音がしたとのことであります」
「ふむ。でも、それならばお宝がなくなったとしても誰も困る者はいないわけですな。お宝が何かも分からずに何年も経っているわけですから」
「いや、そういう訳にはいきません。春と秋に五穀豊穣、無病息災、その他もろもろを祈願してお祭りをしているのです。大事なお宝がなくなってしまってはそれができません」
「そうですか、それはまことに困った話ですな」
「困ったものです」
ポポンがまた、グルドフの袖を引っ張った。
「私は明日の準備がありますので、これで・・・・」
「村の恥をお話ししてしまい、申し訳ありません」
「いえ、何のお役にも立てなくて」
グルドフとポポンは宿にチェックインし、レンタルショップで借りるものをリストアップして紙に書きだしていった。
「これくらいかな。あとは店に行ってみて、足りない物が有ったら借りるとしましょう」
グルドフとポポンはレンタルショップに行くために宿を出た。
村の人々はまだ広場に集まっていた。
そこへ数人の男がバタバタと走ってきた。
「村長、村長」
「どうした?」
「村の外でこれを見つけました」
先頭を走ってきた男が手にしているのは、いくつもの木切れだった。
「これは。お宝を入れていた木の箱だ。どこにあったのだ?」
「村の畑を出て、街道を南に三百メートルほど行った岩山の中です」
「付近を捜してみたのか?」
「はい。しかしお宝らしきものは何も見つけることができませんでした」
「そうか・・・・」
村長はがっかりしたように言った。
グルドフはポポンがしきりに袖を引っ張るのにも構わず、石のようにその場に佇んで今の会話を聞いていた。
「何者かがここから村のお宝を盗み出し、村の外で入れ物の箱を壊して中のお宝を取り出して、どこかへ逃げ去ったらしいな」
「はい・・・・」
村長たちは考え込んだ。
グルドフはこれ以上そこにいても仕方がないと思い、レンタルショップへと歩き出した。
「そうだ!」
村長が顔を上げた。
「丁度、旅のお方がおられる」
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グルドフは驚いて、自分の顔を指さした。
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