グルドフ旅行記

原口源太郎

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グルドフ旅行記・1 ジング王国の少年

魔物退治・2

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 大きな岩だらけの山の中腹に、魔物らしきものがうごめいているのが見えた。
 三人はそろりそろりと、山の上から回り込むようにそこへ近づいていった。
「まずはどのような魔物がどれくらいいるのかを確かめてから作戦を立てよう」
 シェフがババロンとパフラットに言った。
 しかし確かめる前に、魔物たちがいる方向でギャアギャアと騒ぐ声がした。
 魔物たちが現れ、三人に向かってきた。
「しまった、見つかったようだ」
 シェフが言った。
 どれもこれも大きくて強そうで、それも二体や三体ではない。
「これはまずい。ひとまず逃げよう」
 シェフは袋から火薬玉を取り出した。
 すると背後からも魔物の鳴き声がした。
「しまった、囲まれたようだ」
 パフラットが剣を抜き、先頭の魔物に向かった。
 しかし大きな手で振り払われ、地面に倒れた。
 空を裂いて矢が飛んできたが、魔物の固いうろこに跳ね返されて地面に転がった。
 魔物は鋭い爪のある手を振り上げた。
 その時、三人の前を何かが駆け抜けた。
 魔物がゆっくりと倒れる。その後ろの魔物も、その後ろの魔物も。
 立ち止まったグルドフが三人を見た。
「よいか、よく見ておきなさい」
 そう言うと、またグルドフは目にも止まらない速さで魔物に向かい、一撃で次々と魔物を倒していった。
 元魔法使いのシェフも、そんな人間離れした技を見るのは初めてだった。
 全ての魔物を打ち倒したグルドフが三人の前に戻ってきた。
 ババロンは腰が抜けてその場に座り込んでいる。
 パフラットは驚きすぎて口をあんぐりと開けたままでいた。
 グルドフは丁寧に剣をぬぐうと、鞘に納めた。
「たまたま近くを通りかかったので、助太刀しました」
 グルドフの言葉に、シェフはこんな山奥でたまたま通りかかったはないだろうと思ったが、子供たちは信じたようだった。

 ソラテの村に戻ると、ババロンが村長に報告をした。
「魔物を退治したというのですか?」
 村長は驚いて子供たちとシェフを見た。
「別の魔物がまた来ない限り、しばらく村は安泰でしょう」
 シェフが付け足して言った。
「それでは何かお礼を」
「王様の命令で来たのですから、礼には及びません」
 シェフは言った。

 その日は村の宿に泊まり、翌日早くに三人は村を出て帰路に就いた。
 三人が村を出たのを見て、グルドフも宿をたった。
「これは旅のお方」
 冒険者たちを見送りに来ていたソラテ村の村長がグルドフを見つけて言った。
「あ、これは村長殿。先日は大変ご馳走になりました」
「いやいや、構いません。それよりも、あの三人の者たちが魔物をきれいさっぱりと退治してしまったようです」
「ほう」
「人は見かけによりませんな」
「その通りですな」
 グルドフも村長の意見に同意した。
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