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第一章 竜の国
34.ゲーム
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小雨が降りしきる中、第四騎士団は一日中山を登り続け、最初の小屋に到着した。
すぐに野営用のテントの設営が始まる。
食事を用意するものは小屋の台所を使う。
空気は少し湿っていたが、雨はやみ、騎士達は火の傍で雨よけに使った外套を並べて乾かした。
ラーシアは暖炉の前に座り、固くなった足の裏を指でもみほぐした。
岩だらけの山は少し気を抜くと、足首をひねりそうになる。
転びそうになって何度も両手を地面についた。
台所に立つ数名の騎士達は袖をまくり、手際よく担いできた食材を使って料理を作る。
忙しそうな騎士達を眺め、ラーシアはなんとなく裏口に回った。
ふもとから運んできた薪が積まれている。
暖炉にくべようとラーシアは薪の束を抱え、室内に戻った。
「これ、使っていいよね?」
勝手に仕事をしているラーシアに驚き、デレクが飛んでくる。
「そんな力仕事しなくていい。お前は生贄だぞ?その辺に座って休んでおけ」
どうせ死ぬ生贄に、休んでおけというのも妙な話だと、ラーシアは笑った。
皆で食事をとるのだと思ったが、料理が仕上がると、騎士達は次々にそれを外に運び始めた。
テーブルの上に残されたのは二人分の食事だけだった。
いつの間にか、山小屋にはデレクとラーシア二人だけになっていた。
デレクが生贄用の高級食材が入った箱を開け、ぴたりと手を止めた。
かなり強い酒が何本か並んでいる。
それは恐怖を紛らわせるために用意されたものだった。
デレクはグラスを用意し、ただの水の入ったピッチャーをテーブルに置いた。
「食事の支度が出来たぞ」
暖炉の前に座っていたラーシアはデレクに向かい合うように座った。
デレクは小さな嘘をついた。
「酒でもあればよかったが……」
「いらないよ。酔って一緒に過ごした時間を覚えていないとなったら、後悔するぞ」
ラーシアは思念が読める。本当は箱の中に酒があることも知っているはずだ。
デレクは柔らかく微笑んだ。
「そうだな」
食事を終えると、二人は二階の寝室に上がった。
他の騎士達は小屋に入ってこなかった。
窓際の寝台に座ったラーシアの前に、デレクが膝をついた。
「ラーシア、形だけでいい。結婚しないか?」
ラーシアは目を丸くした。結婚しても妻でいられる時間は二日程度だ。
たった二日間の結婚生活に何の意味があるだろう。
デレクを死に縛り付けるだけだ。
「冗談だろう?生贄になる女と結婚するのか?」
「竜との対話が成功すれば、戻ってくるだろう?」
ラーシアは黙り込む。
「どういうことなんだ?そうなんだろう?」
デレクの必死の眼差しに、ラーシアは重い口を開いた。
「デレク……これは、預言者と私の間でしか知らない話だ。私が最後の生贄だ。つまり、これを最後にもう生贄は求めないという約束だ」
意味がわからないと、デレクは膝の上に置かれたラーシアの両手を掴んだ。
「ど、どういうことだ?」
ラーシアは泣き出しそうなデレクの目を真っすぐに見つめた。
「私はいなくなる。でも、いなくなる人間は私が最後だ。その約束が守られたなら、もう誰も生贄に行かなくてすむ」
「君は戻らない?対話に成功しても?なぜ?うまくいけばと言っていただろう?」
デレクはラーシアの腰に抱き着いた。
「戻ると言ってくれ」
「デレク……対話を続ける予定ではある。でもその望みは薄いと思っている。言っただろう?私のことは……待たなくていい」
その言葉には聞き覚えがあった。
卑怯でずるい都合の良い言葉だが、愛がないわけじゃない。
「待たなくていいとは、待っていて欲しいと思いながらも、相手を幸せに出来る自信がないため、相手の幸せを想って、他に幸せになれる道があるならそっちを選んでも良いという意味だ。つまり、本当は待っていて欲しいという意味だ。
ラーシア、愛している。どうか、戻って来てくれ。戻れないと思っていても、俺が待っていることを忘れないでくれ」
デレクはラーシアの胸に顔を押し付ける。
困惑し、ラーシアはデレクの硬い黒髪に覆われた後頭部を見おろした。
「なんでそんないらない罪悪感を持とうとする?身近に自分を好きだという子が現れたらどうするつもりだ?
傍にいて、抱きたい時に抱けて、愛しているといえば愛していると答える、いつもぬくもりを確かめられる相手が見つかれば、触れることもできない女のことは重荷になる。
約束したことを守り切れなかった罪悪感を抱え、いつか戻ってくるかもしれない私の影に怯えることになるぞ?
ケティアの件で学んだはずだろう?好きな女が出来ても待たせている女を気にして踏み切れなくなる」
苦い過去を蒸し返され、デレクはもうそんなことはないと首を振った。
「あの時の気持ちとは全く違う。ラーシア、俺には君だけだ。知っていたか?人は成長する」
ラーシアはその頭を押しやり、自分から遠ざけようとした。
「拒むな、ラーシア!」
「デレク!」
ラーシアの鋭い一言で、感情的になっていたデレクは少し冷静さを取り戻し、体を離した。
「デレク、わかった。じゃあゲームをしよう。デレク、君が勝てば私は君の言葉をきこう。そのかわり、負けたら私の言葉をきいてもらう。ゲームの内容は、動かないことだ」
騎士団の訓練は忍耐の連続だ。
デレクは即答で「やろう」と口にした。
ラーシアはにやりとした。
「じゃあまず、互いに服を脱ごう。最初は君だ。服を脱いだら後ろで手を組んでくれ」
シャツを脱ぎ、寝台に座ろうとしたデレクに、ラーシアはズボンも脱げと言い、自分も全裸になった。
途端に、デレクの股間の物がたちあがる。
「さて、後ろで手を組んでくれ。寝台に座って」
これはまずいとデレクは顔を引き締めた。
ラーシアはデレクの膝の間に座り、立ち上がった肉の棒にふっと息をふきかけた。
「うっ……」
デレクの腰がびくりと動いた。
「もうゲームは始まっている。動くなよ?」
床についているデレクの足に、ラーシアの指が触れた。
優しく、舐めるように固い脛をなぞり、膝を登って腿まで滑り込む。
デレクの体に緊張が走り、固くなる。
その心とは裏腹に、股間の物は刺激を待ちわびるようにそそり立っている。
しかしそこには触れず、ラーシアの手は内ももの奥に入り込み、柔らかな袋をそっと包み込む。
「ふっ……うっ……」
優しく指の腹で愛撫を重ねながら、ラーシアは股間に頭を入れて舌でぺろりとその膨らみを舐めあげた。
「うあっ」
デレクの体が大きく後ろに傾いた。
ラーシアが手を伸ばし、デレクの体を後ろに押し倒すと、腰がもちあがりお尻の下に隙間が出来た。
重たい腿と腰を床についたつま先が支えている。
ラーシアはすかさず股間の下に潜り込むと柔らかなふくらみを咥えこみ、指で後ろの窪みを撫で始めた。皺の数を数えるような繊細な動きで優しい愛撫を重ね、さらに口に咥えこんだ膨らみを舌で嬲る。
「ああっ……うう……」
掠れたデレクの声には堪えきれない欲望が滲む。
すっかり濡れて温かくなるまでふくらみを口の中でもてあそび、ラーシアは指を走らせ次の場所を探し始める。
ちらりと目を向けると、痛そうなほど腫れあがった肉棒は熱い涙を浮かべている。
肝心のそこには触れず、今度は逞しい体を這うように登り、小さな突起を捕まえた。
「はっはっ……」
袋とお尻の愛撫ですっかり呼吸は乱れ、デレクの額には汗が浮かんでいる。
触れてもいないのに肉棒の先端は涙を流し、ぶるぶると震えている。
それを楽しそうに眺め、ラーシアは指の刺激で固く立ち上がった乳首に食いついた。
「うわっ……ラーシア……こんなのはずるい……」
反対側の乳首を指で擦りながら、ラーシアが一瞬口を離す。
「だったら動いて止めてみたら?」
ねっとりと乳首に唇を被せ、舌でその先端を擦り上げる。
デレクの体に覆いかぶさっているラーシアの肌に時々濡れた肉棒の先端が触れる。
熱い雫を浮かべたそれは、せめて肌に触れる刺激だけでも欲しいと伸びあがり、ラーシアの肌をぬるぬると濡らす。
「うっ……ぐっ……」
デレクはそれを理性で抑え込もうとラーシアの肌と肉棒の先端が触れ合う度に苦しそうな声を漏らす。
ところが残念なことに、ラーシアの肌は欲望の滴りに濡れ、触れ合うたびにぬるぬると滑り、先端部分が擦られ体が欲する刺激に近づいていく。
「あれ?動いている?」
意地悪く問いかけ、ラーシアは手を体に這わせ、股間で揺れているそれをそっと掴む。
途端に、デレクの腰が跳ね上がった。
「ああっ」
無念の声をあげたデレクは無かったことにしようと腰を寝台に押し付ける。
ところが、ラーシアは手に包んだ肉棒をゆっくり擦り上げる。
その間も、ラーシアの指はデレクの乳首を擦り上げ、時々きゅっとつまみあげる。
「こ、こんなのは拷問だっ……」
固く目を閉じ、顔を真っ赤にしてデレクが苦痛の声をあげる。
じれったい動きで肉棒を擦っていたラーシアが素早く数回擦り上げた。
「あああっ」
デレクの腰が再びつきあがる。その瞬間、ラーシアはぱっと手を離した。
「ふっ……う……」
食いしばったデレクの歯の間から欲望に染まった声が漏れる。
物欲し気に泣いているその先端を見おろし、ラーシアは愛し気にそこに口づけを落とす。
柔らかく包み込むように口内に受け入れると、ごくりと喉を鳴らして雫を飲み込んだ。
耳にはデレクの苦しそうな息遣いが聞こえている。
ラーシアはゆっくり頭を上下させて肉棒を口の中で擦り始めた。
再び先端から滴りがこぼれ始めると、それを舌で舐めとり頭を後ろに引いた。
その瞬間、口から出されまいとデレクが再び腰を突き上げた。
あたたかな口内の粘膜に肉棒をこすりつけ、さらなる刺激を求め、腰がひくひくと動き出す。
容赦なくラーシアは口を離した。
三度もその刺激を取り上げられ、デレクは顔を真っ赤にして泣いている。
それは刺激を奪われたからではない。
「デレク……」
心から残念そうにラーシアが告げる。
「残念ながら、君の負けだ」
「ううう……」
負けを認めまいとデレクはまだ後ろで腕を組んだままだ。
情けなく股間を晒し、乳首を赤く尖らせ、腰はひくひく動いている。
欲しくてたまらないそのすべてが目の前にある。
それなのに、もうそれは手に入らない。
ゲームに負けてしまったデレクには、何を告げられるのかわかっている。
『自分のことは忘れてくれ』『他の女性と幸せになってくれ』『これが最後の夜だ』『どうか私のいない未来を幸せに生きてくれ』
突き放される恐怖に泣き、デレクはラーシアの口から吐き出される、その残酷な言葉を待った。
すぐに野営用のテントの設営が始まる。
食事を用意するものは小屋の台所を使う。
空気は少し湿っていたが、雨はやみ、騎士達は火の傍で雨よけに使った外套を並べて乾かした。
ラーシアは暖炉の前に座り、固くなった足の裏を指でもみほぐした。
岩だらけの山は少し気を抜くと、足首をひねりそうになる。
転びそうになって何度も両手を地面についた。
台所に立つ数名の騎士達は袖をまくり、手際よく担いできた食材を使って料理を作る。
忙しそうな騎士達を眺め、ラーシアはなんとなく裏口に回った。
ふもとから運んできた薪が積まれている。
暖炉にくべようとラーシアは薪の束を抱え、室内に戻った。
「これ、使っていいよね?」
勝手に仕事をしているラーシアに驚き、デレクが飛んでくる。
「そんな力仕事しなくていい。お前は生贄だぞ?その辺に座って休んでおけ」
どうせ死ぬ生贄に、休んでおけというのも妙な話だと、ラーシアは笑った。
皆で食事をとるのだと思ったが、料理が仕上がると、騎士達は次々にそれを外に運び始めた。
テーブルの上に残されたのは二人分の食事だけだった。
いつの間にか、山小屋にはデレクとラーシア二人だけになっていた。
デレクが生贄用の高級食材が入った箱を開け、ぴたりと手を止めた。
かなり強い酒が何本か並んでいる。
それは恐怖を紛らわせるために用意されたものだった。
デレクはグラスを用意し、ただの水の入ったピッチャーをテーブルに置いた。
「食事の支度が出来たぞ」
暖炉の前に座っていたラーシアはデレクに向かい合うように座った。
デレクは小さな嘘をついた。
「酒でもあればよかったが……」
「いらないよ。酔って一緒に過ごした時間を覚えていないとなったら、後悔するぞ」
ラーシアは思念が読める。本当は箱の中に酒があることも知っているはずだ。
デレクは柔らかく微笑んだ。
「そうだな」
食事を終えると、二人は二階の寝室に上がった。
他の騎士達は小屋に入ってこなかった。
窓際の寝台に座ったラーシアの前に、デレクが膝をついた。
「ラーシア、形だけでいい。結婚しないか?」
ラーシアは目を丸くした。結婚しても妻でいられる時間は二日程度だ。
たった二日間の結婚生活に何の意味があるだろう。
デレクを死に縛り付けるだけだ。
「冗談だろう?生贄になる女と結婚するのか?」
「竜との対話が成功すれば、戻ってくるだろう?」
ラーシアは黙り込む。
「どういうことなんだ?そうなんだろう?」
デレクの必死の眼差しに、ラーシアは重い口を開いた。
「デレク……これは、預言者と私の間でしか知らない話だ。私が最後の生贄だ。つまり、これを最後にもう生贄は求めないという約束だ」
意味がわからないと、デレクは膝の上に置かれたラーシアの両手を掴んだ。
「ど、どういうことだ?」
ラーシアは泣き出しそうなデレクの目を真っすぐに見つめた。
「私はいなくなる。でも、いなくなる人間は私が最後だ。その約束が守られたなら、もう誰も生贄に行かなくてすむ」
「君は戻らない?対話に成功しても?なぜ?うまくいけばと言っていただろう?」
デレクはラーシアの腰に抱き着いた。
「戻ると言ってくれ」
「デレク……対話を続ける予定ではある。でもその望みは薄いと思っている。言っただろう?私のことは……待たなくていい」
その言葉には聞き覚えがあった。
卑怯でずるい都合の良い言葉だが、愛がないわけじゃない。
「待たなくていいとは、待っていて欲しいと思いながらも、相手を幸せに出来る自信がないため、相手の幸せを想って、他に幸せになれる道があるならそっちを選んでも良いという意味だ。つまり、本当は待っていて欲しいという意味だ。
ラーシア、愛している。どうか、戻って来てくれ。戻れないと思っていても、俺が待っていることを忘れないでくれ」
デレクはラーシアの胸に顔を押し付ける。
困惑し、ラーシアはデレクの硬い黒髪に覆われた後頭部を見おろした。
「なんでそんないらない罪悪感を持とうとする?身近に自分を好きだという子が現れたらどうするつもりだ?
傍にいて、抱きたい時に抱けて、愛しているといえば愛していると答える、いつもぬくもりを確かめられる相手が見つかれば、触れることもできない女のことは重荷になる。
約束したことを守り切れなかった罪悪感を抱え、いつか戻ってくるかもしれない私の影に怯えることになるぞ?
ケティアの件で学んだはずだろう?好きな女が出来ても待たせている女を気にして踏み切れなくなる」
苦い過去を蒸し返され、デレクはもうそんなことはないと首を振った。
「あの時の気持ちとは全く違う。ラーシア、俺には君だけだ。知っていたか?人は成長する」
ラーシアはその頭を押しやり、自分から遠ざけようとした。
「拒むな、ラーシア!」
「デレク!」
ラーシアの鋭い一言で、感情的になっていたデレクは少し冷静さを取り戻し、体を離した。
「デレク、わかった。じゃあゲームをしよう。デレク、君が勝てば私は君の言葉をきこう。そのかわり、負けたら私の言葉をきいてもらう。ゲームの内容は、動かないことだ」
騎士団の訓練は忍耐の連続だ。
デレクは即答で「やろう」と口にした。
ラーシアはにやりとした。
「じゃあまず、互いに服を脱ごう。最初は君だ。服を脱いだら後ろで手を組んでくれ」
シャツを脱ぎ、寝台に座ろうとしたデレクに、ラーシアはズボンも脱げと言い、自分も全裸になった。
途端に、デレクの股間の物がたちあがる。
「さて、後ろで手を組んでくれ。寝台に座って」
これはまずいとデレクは顔を引き締めた。
ラーシアはデレクの膝の間に座り、立ち上がった肉の棒にふっと息をふきかけた。
「うっ……」
デレクの腰がびくりと動いた。
「もうゲームは始まっている。動くなよ?」
床についているデレクの足に、ラーシアの指が触れた。
優しく、舐めるように固い脛をなぞり、膝を登って腿まで滑り込む。
デレクの体に緊張が走り、固くなる。
その心とは裏腹に、股間の物は刺激を待ちわびるようにそそり立っている。
しかしそこには触れず、ラーシアの手は内ももの奥に入り込み、柔らかな袋をそっと包み込む。
「ふっ……うっ……」
優しく指の腹で愛撫を重ねながら、ラーシアは股間に頭を入れて舌でぺろりとその膨らみを舐めあげた。
「うあっ」
デレクの体が大きく後ろに傾いた。
ラーシアが手を伸ばし、デレクの体を後ろに押し倒すと、腰がもちあがりお尻の下に隙間が出来た。
重たい腿と腰を床についたつま先が支えている。
ラーシアはすかさず股間の下に潜り込むと柔らかなふくらみを咥えこみ、指で後ろの窪みを撫で始めた。皺の数を数えるような繊細な動きで優しい愛撫を重ね、さらに口に咥えこんだ膨らみを舌で嬲る。
「ああっ……うう……」
掠れたデレクの声には堪えきれない欲望が滲む。
すっかり濡れて温かくなるまでふくらみを口の中でもてあそび、ラーシアは指を走らせ次の場所を探し始める。
ちらりと目を向けると、痛そうなほど腫れあがった肉棒は熱い涙を浮かべている。
肝心のそこには触れず、今度は逞しい体を這うように登り、小さな突起を捕まえた。
「はっはっ……」
袋とお尻の愛撫ですっかり呼吸は乱れ、デレクの額には汗が浮かんでいる。
触れてもいないのに肉棒の先端は涙を流し、ぶるぶると震えている。
それを楽しそうに眺め、ラーシアは指の刺激で固く立ち上がった乳首に食いついた。
「うわっ……ラーシア……こんなのはずるい……」
反対側の乳首を指で擦りながら、ラーシアが一瞬口を離す。
「だったら動いて止めてみたら?」
ねっとりと乳首に唇を被せ、舌でその先端を擦り上げる。
デレクの体に覆いかぶさっているラーシアの肌に時々濡れた肉棒の先端が触れる。
熱い雫を浮かべたそれは、せめて肌に触れる刺激だけでも欲しいと伸びあがり、ラーシアの肌をぬるぬると濡らす。
「うっ……ぐっ……」
デレクはそれを理性で抑え込もうとラーシアの肌と肉棒の先端が触れ合う度に苦しそうな声を漏らす。
ところが残念なことに、ラーシアの肌は欲望の滴りに濡れ、触れ合うたびにぬるぬると滑り、先端部分が擦られ体が欲する刺激に近づいていく。
「あれ?動いている?」
意地悪く問いかけ、ラーシアは手を体に這わせ、股間で揺れているそれをそっと掴む。
途端に、デレクの腰が跳ね上がった。
「ああっ」
無念の声をあげたデレクは無かったことにしようと腰を寝台に押し付ける。
ところが、ラーシアは手に包んだ肉棒をゆっくり擦り上げる。
その間も、ラーシアの指はデレクの乳首を擦り上げ、時々きゅっとつまみあげる。
「こ、こんなのは拷問だっ……」
固く目を閉じ、顔を真っ赤にしてデレクが苦痛の声をあげる。
じれったい動きで肉棒を擦っていたラーシアが素早く数回擦り上げた。
「あああっ」
デレクの腰が再びつきあがる。その瞬間、ラーシアはぱっと手を離した。
「ふっ……う……」
食いしばったデレクの歯の間から欲望に染まった声が漏れる。
物欲し気に泣いているその先端を見おろし、ラーシアは愛し気にそこに口づけを落とす。
柔らかく包み込むように口内に受け入れると、ごくりと喉を鳴らして雫を飲み込んだ。
耳にはデレクの苦しそうな息遣いが聞こえている。
ラーシアはゆっくり頭を上下させて肉棒を口の中で擦り始めた。
再び先端から滴りがこぼれ始めると、それを舌で舐めとり頭を後ろに引いた。
その瞬間、口から出されまいとデレクが再び腰を突き上げた。
あたたかな口内の粘膜に肉棒をこすりつけ、さらなる刺激を求め、腰がひくひくと動き出す。
容赦なくラーシアは口を離した。
三度もその刺激を取り上げられ、デレクは顔を真っ赤にして泣いている。
それは刺激を奪われたからではない。
「デレク……」
心から残念そうにラーシアが告げる。
「残念ながら、君の負けだ」
「ううう……」
負けを認めまいとデレクはまだ後ろで腕を組んだままだ。
情けなく股間を晒し、乳首を赤く尖らせ、腰はひくひく動いている。
欲しくてたまらないそのすべてが目の前にある。
それなのに、もうそれは手に入らない。
ゲームに負けてしまったデレクには、何を告げられるのかわかっている。
『自分のことは忘れてくれ』『他の女性と幸せになってくれ』『これが最後の夜だ』『どうか私のいない未来を幸せに生きてくれ』
突き放される恐怖に泣き、デレクはラーシアの口から吐き出される、その残酷な言葉を待った。
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