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5.突然の命令
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ナリアたちにお茶を配り終えたアロナは、ナリアの了承を得て客間の点検をした。
幸い、冬の会が終わったばかりであり、掃除を終えている部屋には塵一つ落ちていなかった。
「おつきの方々のお部屋は少し離れになりますが、西棟の従業員用のお部屋がありますのでそちらに用意してもいいですか?その護衛の方々はお隣で一部屋ということで」
暖炉の薪の量を確認し、腰を上げたアロナは、その異変にすぐに気が付いた。
いつの間にか、扉の前にナリアが連れてきた使用人たちが並んでいた。
これでは部屋を出ていけない。
「あなた、元夫のドルバインと……肉体的な関係があるの?」
目を丸くし、アロナは両手でスカートの布地を固く掴んだ。
「な、なぜそんな……」
やはり、ナリアはドルバインとよりを戻したいのかもしれないとアロナは考えた。
それ故、体の関係にあるアロナに嫉妬して、怒っているのかもしれない。
人妻が好きだというドルバインの言葉を信じなかったというのであれば、アロナのことを普通に愛人だと思っている可能性もある。
「そ、それは……私の口からは言えませんが、私は……夫を心から愛しています。夫以外の男性に心まで捧げたことはありません」
「そうよね。元夫はお世辞にも美しいとはいえないもの。禿げているし、お腹も出ていて顔も醜いわ。美しい部分は一つもないでしょう?」
生理的に受け付けないと思った時期も確かにあったが、アロナはドルバインの内面を知った今となっては、とても聞き流せない言葉だった。
「ドルバイン様は……高潔な方です。とても優しいですし、心からお慕いしております。醜いところなどどこにもありません」
不思議な物でも見るかのように、ナリアはアロナを下から上までじろじろと見た。
「背だけは高いしね。あなたは低いわね。顔も可愛らしいし、どこもかしこも元夫につり合っていないわ。慕っているというけど、彼の体をどう思う?どこもかしこも毛むくじゃらで獣のようだと思わない?」
なぜそんな元夫を蔑むようなことを言うのかと、アロナは混乱した。
嫉妬しているにしても、その言動は不可解すぎる。
「思いません……。男性らしくて素敵だと思います……」
「お腹が出ていて、脂ぎっていて、髪の毛も変でしょう?あんなのに触られると思うだけで、身の毛がよだつと思わない?」
「そ、そんなことありません!」
途端に、ナリアはつまらなそうな顔をしてそっぽを向いた。
「そう……。まぁいいわ。あなた達には、私と私の護衛と侍女たちの世話もしてもらうから。左から紹介するわ」
扉に立ちふさがる召使たちは、自己紹介待ちだったのかと、アロナはほっとした。
「左から、護衛のジーン、侍女のミリー、ケイラ、ペイジー、それから護衛のドムよ」
ジーンとドムは同じような大きな体格で、立派な騎士といった装いだった。
茶髪の方がジーンで、ドムは黒髪で二人とも短髪だ。
鋭い目つきは、鍛錬を積んだ戦士のものだった。
侍女たちも全員、感情のわからない顔つきで、人形のようにひっそりと立っている。
「わかりました。心を込めてお世話させて頂きます」
貴族の召使たちより、アロナとカインの身分は低い。
「では、そろそろ失礼させて頂きます」
アロナは丁寧に頭を下げたが、扉の前に並んだ使用人たちは動かなかった。
「あ、あの……」
「あなた……私の元夫と寝たのでしょう?」
「そ、それは……」
「夫がいながら……そんなことが簡単に出来てしまうなんて、大人しそうな顔をしてずいぶん大胆なのね。わからないのよ……人妻だからあなたを抱いたの?夫とは本当に愛し合えないわけ?」
ドルバインが人妻にしか興味を持てないのだと信じていないナリアらしい言葉に思えたが、アロナには何も答えることが出来ない。
元妻とはいえ、ナリアにドルバインの個人的な性癖の話は出来ないし、公表したいことでもない。
「夫とは……愛し合っています。私の心は常に夫のものです」
体は違うのだとナリアはその言葉を受け取った。
「体は違うのね?ジーン、その子を抱いてあげて」
扉の前に並んでいた護衛の男が一人、アロナに近づいた。
驚いたアロナが後ろに逃げる。
「な、何をするのです!夫を愛しているのに!そ、そんなことできません!」
「あら、冬の間中、見知らぬ男に抱かれていると聞いているわよ。そういう会なのでしょう?あなたも好きなのでしょう?それともどこまでが嘘なの?」
「ど、ドルバイン様に直接聞いてください!私からは何も言えません!」
ジーンと呼ばれた護衛の男がアロナをあっという間に捕まえ、床に押し倒した。
ドルバインより男前だが、最悪な状況だ。
服を無理やり脱がされそうになりながら、アロナは必死に体をねじって男の手を掴んだ。
「い、いやです!いやっ!こういう、こういうのは違います!」
世間的には変態と言われてしまう性癖なのかもしれないが、相手の心を無視した行為を楽しんでいるわけではない。
普通から外れた性癖をひとくくりにして、こういうのが好きなのでしょうと決めつけられるのはやはり違うと感じている。
それを言葉で伝えるのは難しいし、理解してもらうのは無理だともわかっている。
「お願いです!いやっ!」
体重でアロナを押さえ込むジーンが、長い腕でアロナの下着を抜き取った。
その時、扉が勢いよく開き、扉の前にいた三人の侍女たちが悲鳴を上げて前に倒れた。
その上を飛び越え、カインが突進し、アロナを押さえ込むジーンの体に抱き着いた。
「離れろ!」
身分もおかまいなしに、その体を引きはがそうと力を込める。
それが無理だとみるとアロナとジーンの間に体を割り込ませ、必死にその巨体を退けようとする。
ナリアは目をぱちくりさせ、そのよくわからない光景を見ていた。
アロナは夫に泣きながらすがりつき、夫は声を震わせながら、自分よりもはるかに体躯の大きな男を押しのけようと格闘している。
ジーンはそれを本気で払いのけていいのかと、確認するようにナリアを振り返った。
「自分は妻を抱けないくせに、他の男が抱こうとすることが許せないの?ひどい話ね」
ナリアにはさっぱりわからない話だったが、新たな提案をした。
「じゃあ本当に出来るのか見せてみてよ。マットを持ってきて、そこで夫婦でやってみなさい」
カインとアロナは仰天した。
夫婦の秘め事を人前で披露しなければならないなんて、普通ではないし、それが同じ性癖の人達を集めた会の中でならまだわかるが、変態ではない普通の、しかも初対面の人達の前で披露するなんて、それこそ変態的な行為だと言えないだろうか。
「な、なぜ、そんなことを?」
カインの当たり前の質問に、ナリアは顔色一つ変えずにあっさり答えた。
「知りたいのよ。あなた達が本当に変態なのかどうか」
唖然としたが、アロナはカインにしがみついた。
「知らない人なんて嫌。カイン、あなたが良い。お願い」
性器に拘束具を嵌められたばかりのカインは、困惑しながらも頷いた。
一同は寝室に場所を移した。
そこは秘密の会でよく使われる大部屋で、中央に飾り気のないシンプルな寝台が一台だけ置かれていた。
寝台で行われる行為をみんなで観察して楽しめる部屋だった。
その寝台にアロナが横たわり、そこに拘束具を付けたままのカインが四つん這いの姿勢であがってきた。
その顔は既に苦痛に歪み、息遣いまで乱れていた。
「あ、あの……夫のそれは……取って下さらないのですか?」
アロナはカインの物をぎちぎちに閉じ込めている拘束具を指さしたが、ゆったりと椅子に腰かけたナリアは涼しい顔をしていた。
「いらないでしょう?自分の妻には興奮しないはずなんだから」
まさかと、アロナは表情を強張らせたが、カインはアロナに抱き着き、その耳を舐めながら囁いた。
「なんだか……ドルバイン様と俺が同じ趣味だと思われているようなんだ……。妻で立たないことがあるのか疑っているのかもしれない……。だけどドルバイン様が人妻にしか興味が持てないことが本当のことだと俺達が口に出して言っていいことかもわからない。
個人的な性癖を他人が決めつけて話すようなことでもないし……」
「そ、そうだけど、あなたのことは話してもいいのではない?」
「俺に興味がないのに?ナリア様は、俺の性癖なんて知っても気持ちが悪いと思われるだけだ」
もうこんな気持ち悪いことをしているのに、今更何をどう隠す必要があるのかさっぱりわからない。
アロナは状況の整理が追い付かず、混乱したまま口を閉ざした。
「大丈夫だよ、アロナ。すごく痛くて……苦しくて……頭が馬鹿になってしまいそうに……気持ちが良い!」
熱く囁きながら、カインはアロナの唇を激しく貪りだした。
その腰は既に動き出し、戒められた中からはち切れそうな肉が編み目に食い込んできている。
「アロナ……アロナ……ああ、君に入りたい。君の温かさを感じたい。もっと、もっと触れたいのに……」
性器は大きくならないし、アロナの濡れそぼったそこには入っていけないのだ。
カインは必死に下半身をアロナの下腹部に擦り付け、せっせと腰を振りながら物足りない快感を少しでも得ようと、アロナの乳房にしゃぶりつき、その体を荒々しくまさぐった。
乳房をもみ、乳首をこねくり回しながら、胸や腰、お腹をすり合わせ、まるで熱い肉棒が中に入っているかのように腰を振り続ける。
「ああ、ああ……痛いよ……入れたい……」
殻に覆われた部分がアロナの小さな突起にこすれ、アロナも甘い声を上げ始める。
周りに無表情の五人の見学者がいるということに、気持ちは冷めがちだが、最愛の夫から与えられる刺激も完全には無視できない。
拘束具で戒められ、入れられない股間の物を必死に擦り付け、腰を振り続ける夫を見上げ、アロナは自分ばかりが気持ち良くなっていくことに戸惑いながら横を見た。
ナリアが退屈そうに自分の爪を見ている。
高貴な人たちの前で夫婦の交わりを、しかも夫は股間を封じられたまま続けさせられている。この状況の結末はどこにあるのか。
カインがアロナの乳首を強く引っ張った。
「んんっ……」
身をのけぞらせ、痛みに顔を歪めるアロナの目がナリアの目とぴたりと合った。
先ほどまで関心もなさそうに爪を見ていたのに、今はアロナの顔をじっと見ている。
快感を必死に堪えるカインが、さらに乱暴にアロナの乳首を引っ張り、ひねりあげた。
「ああああっ」
痛みに顔をふり、カインを咎めようとするが、カインは自分のはりつめた性器の痛みに耐えるだけで精一杯らしく、乳房に吸い付き必死に気を紛らわしている。
「アロナ、ごめん。アロナ……愛している……」
達することのできない苦しみの中で、カインは蕩けるように微笑んだ。
幸せそうなカインを見ては、アロナも文句は言えなくなる。
「いいの……カイン、愛している」
じんわりと心が熱くなれば、体だって火照ってくる。
愛する人の肌、声、その心に触れ抱き合っていればそれだけで満たされるものがある。
アロナは不思議な感触の貞操帯に、感じやすい突起をこすられながら軽く達し、カインの首に抱き着いた。
「んっ……」
中は濡れてぐずぐずと物足りない刺激に疼いているが、アロナは満足そうな吐息をついた。
「カイン……私だけ、ごめんなさい」
とりあえず、終わった形には出来たのだ。
ナリアは何も言わなかった。
ただ立ち上がると、背を向けて部屋を出ていった。
その後ろを召使たちもついていき、部屋に二人きりになると、カインとアロナはやっとほっとして改めて抱き合った。
「一体、今のは何だったのかしら?」
カインもよくわからないと首を横に振った。
「貞操帯をつけても満足できるか試したかったとか?あるいは……ドルバイン様のことをもっと知りたいのかもしれない……」
ぱっと二人は顔を見合わせた。
「やっぱり、ドルバイン様のことをまだ好きなのよ」
「俺もそう思った……」
互いに同じ考えであることを確認しあうと、二人は急いで服を着始めた。
幸い、冬の会が終わったばかりであり、掃除を終えている部屋には塵一つ落ちていなかった。
「おつきの方々のお部屋は少し離れになりますが、西棟の従業員用のお部屋がありますのでそちらに用意してもいいですか?その護衛の方々はお隣で一部屋ということで」
暖炉の薪の量を確認し、腰を上げたアロナは、その異変にすぐに気が付いた。
いつの間にか、扉の前にナリアが連れてきた使用人たちが並んでいた。
これでは部屋を出ていけない。
「あなた、元夫のドルバインと……肉体的な関係があるの?」
目を丸くし、アロナは両手でスカートの布地を固く掴んだ。
「な、なぜそんな……」
やはり、ナリアはドルバインとよりを戻したいのかもしれないとアロナは考えた。
それ故、体の関係にあるアロナに嫉妬して、怒っているのかもしれない。
人妻が好きだというドルバインの言葉を信じなかったというのであれば、アロナのことを普通に愛人だと思っている可能性もある。
「そ、それは……私の口からは言えませんが、私は……夫を心から愛しています。夫以外の男性に心まで捧げたことはありません」
「そうよね。元夫はお世辞にも美しいとはいえないもの。禿げているし、お腹も出ていて顔も醜いわ。美しい部分は一つもないでしょう?」
生理的に受け付けないと思った時期も確かにあったが、アロナはドルバインの内面を知った今となっては、とても聞き流せない言葉だった。
「ドルバイン様は……高潔な方です。とても優しいですし、心からお慕いしております。醜いところなどどこにもありません」
不思議な物でも見るかのように、ナリアはアロナを下から上までじろじろと見た。
「背だけは高いしね。あなたは低いわね。顔も可愛らしいし、どこもかしこも元夫につり合っていないわ。慕っているというけど、彼の体をどう思う?どこもかしこも毛むくじゃらで獣のようだと思わない?」
なぜそんな元夫を蔑むようなことを言うのかと、アロナは混乱した。
嫉妬しているにしても、その言動は不可解すぎる。
「思いません……。男性らしくて素敵だと思います……」
「お腹が出ていて、脂ぎっていて、髪の毛も変でしょう?あんなのに触られると思うだけで、身の毛がよだつと思わない?」
「そ、そんなことありません!」
途端に、ナリアはつまらなそうな顔をしてそっぽを向いた。
「そう……。まぁいいわ。あなた達には、私と私の護衛と侍女たちの世話もしてもらうから。左から紹介するわ」
扉に立ちふさがる召使たちは、自己紹介待ちだったのかと、アロナはほっとした。
「左から、護衛のジーン、侍女のミリー、ケイラ、ペイジー、それから護衛のドムよ」
ジーンとドムは同じような大きな体格で、立派な騎士といった装いだった。
茶髪の方がジーンで、ドムは黒髪で二人とも短髪だ。
鋭い目つきは、鍛錬を積んだ戦士のものだった。
侍女たちも全員、感情のわからない顔つきで、人形のようにひっそりと立っている。
「わかりました。心を込めてお世話させて頂きます」
貴族の召使たちより、アロナとカインの身分は低い。
「では、そろそろ失礼させて頂きます」
アロナは丁寧に頭を下げたが、扉の前に並んだ使用人たちは動かなかった。
「あ、あの……」
「あなた……私の元夫と寝たのでしょう?」
「そ、それは……」
「夫がいながら……そんなことが簡単に出来てしまうなんて、大人しそうな顔をしてずいぶん大胆なのね。わからないのよ……人妻だからあなたを抱いたの?夫とは本当に愛し合えないわけ?」
ドルバインが人妻にしか興味を持てないのだと信じていないナリアらしい言葉に思えたが、アロナには何も答えることが出来ない。
元妻とはいえ、ナリアにドルバインの個人的な性癖の話は出来ないし、公表したいことでもない。
「夫とは……愛し合っています。私の心は常に夫のものです」
体は違うのだとナリアはその言葉を受け取った。
「体は違うのね?ジーン、その子を抱いてあげて」
扉の前に並んでいた護衛の男が一人、アロナに近づいた。
驚いたアロナが後ろに逃げる。
「な、何をするのです!夫を愛しているのに!そ、そんなことできません!」
「あら、冬の間中、見知らぬ男に抱かれていると聞いているわよ。そういう会なのでしょう?あなたも好きなのでしょう?それともどこまでが嘘なの?」
「ど、ドルバイン様に直接聞いてください!私からは何も言えません!」
ジーンと呼ばれた護衛の男がアロナをあっという間に捕まえ、床に押し倒した。
ドルバインより男前だが、最悪な状況だ。
服を無理やり脱がされそうになりながら、アロナは必死に体をねじって男の手を掴んだ。
「い、いやです!いやっ!こういう、こういうのは違います!」
世間的には変態と言われてしまう性癖なのかもしれないが、相手の心を無視した行為を楽しんでいるわけではない。
普通から外れた性癖をひとくくりにして、こういうのが好きなのでしょうと決めつけられるのはやはり違うと感じている。
それを言葉で伝えるのは難しいし、理解してもらうのは無理だともわかっている。
「お願いです!いやっ!」
体重でアロナを押さえ込むジーンが、長い腕でアロナの下着を抜き取った。
その時、扉が勢いよく開き、扉の前にいた三人の侍女たちが悲鳴を上げて前に倒れた。
その上を飛び越え、カインが突進し、アロナを押さえ込むジーンの体に抱き着いた。
「離れろ!」
身分もおかまいなしに、その体を引きはがそうと力を込める。
それが無理だとみるとアロナとジーンの間に体を割り込ませ、必死にその巨体を退けようとする。
ナリアは目をぱちくりさせ、そのよくわからない光景を見ていた。
アロナは夫に泣きながらすがりつき、夫は声を震わせながら、自分よりもはるかに体躯の大きな男を押しのけようと格闘している。
ジーンはそれを本気で払いのけていいのかと、確認するようにナリアを振り返った。
「自分は妻を抱けないくせに、他の男が抱こうとすることが許せないの?ひどい話ね」
ナリアにはさっぱりわからない話だったが、新たな提案をした。
「じゃあ本当に出来るのか見せてみてよ。マットを持ってきて、そこで夫婦でやってみなさい」
カインとアロナは仰天した。
夫婦の秘め事を人前で披露しなければならないなんて、普通ではないし、それが同じ性癖の人達を集めた会の中でならまだわかるが、変態ではない普通の、しかも初対面の人達の前で披露するなんて、それこそ変態的な行為だと言えないだろうか。
「な、なぜ、そんなことを?」
カインの当たり前の質問に、ナリアは顔色一つ変えずにあっさり答えた。
「知りたいのよ。あなた達が本当に変態なのかどうか」
唖然としたが、アロナはカインにしがみついた。
「知らない人なんて嫌。カイン、あなたが良い。お願い」
性器に拘束具を嵌められたばかりのカインは、困惑しながらも頷いた。
一同は寝室に場所を移した。
そこは秘密の会でよく使われる大部屋で、中央に飾り気のないシンプルな寝台が一台だけ置かれていた。
寝台で行われる行為をみんなで観察して楽しめる部屋だった。
その寝台にアロナが横たわり、そこに拘束具を付けたままのカインが四つん這いの姿勢であがってきた。
その顔は既に苦痛に歪み、息遣いまで乱れていた。
「あ、あの……夫のそれは……取って下さらないのですか?」
アロナはカインの物をぎちぎちに閉じ込めている拘束具を指さしたが、ゆったりと椅子に腰かけたナリアは涼しい顔をしていた。
「いらないでしょう?自分の妻には興奮しないはずなんだから」
まさかと、アロナは表情を強張らせたが、カインはアロナに抱き着き、その耳を舐めながら囁いた。
「なんだか……ドルバイン様と俺が同じ趣味だと思われているようなんだ……。妻で立たないことがあるのか疑っているのかもしれない……。だけどドルバイン様が人妻にしか興味が持てないことが本当のことだと俺達が口に出して言っていいことかもわからない。
個人的な性癖を他人が決めつけて話すようなことでもないし……」
「そ、そうだけど、あなたのことは話してもいいのではない?」
「俺に興味がないのに?ナリア様は、俺の性癖なんて知っても気持ちが悪いと思われるだけだ」
もうこんな気持ち悪いことをしているのに、今更何をどう隠す必要があるのかさっぱりわからない。
アロナは状況の整理が追い付かず、混乱したまま口を閉ざした。
「大丈夫だよ、アロナ。すごく痛くて……苦しくて……頭が馬鹿になってしまいそうに……気持ちが良い!」
熱く囁きながら、カインはアロナの唇を激しく貪りだした。
その腰は既に動き出し、戒められた中からはち切れそうな肉が編み目に食い込んできている。
「アロナ……アロナ……ああ、君に入りたい。君の温かさを感じたい。もっと、もっと触れたいのに……」
性器は大きくならないし、アロナの濡れそぼったそこには入っていけないのだ。
カインは必死に下半身をアロナの下腹部に擦り付け、せっせと腰を振りながら物足りない快感を少しでも得ようと、アロナの乳房にしゃぶりつき、その体を荒々しくまさぐった。
乳房をもみ、乳首をこねくり回しながら、胸や腰、お腹をすり合わせ、まるで熱い肉棒が中に入っているかのように腰を振り続ける。
「ああ、ああ……痛いよ……入れたい……」
殻に覆われた部分がアロナの小さな突起にこすれ、アロナも甘い声を上げ始める。
周りに無表情の五人の見学者がいるということに、気持ちは冷めがちだが、最愛の夫から与えられる刺激も完全には無視できない。
拘束具で戒められ、入れられない股間の物を必死に擦り付け、腰を振り続ける夫を見上げ、アロナは自分ばかりが気持ち良くなっていくことに戸惑いながら横を見た。
ナリアが退屈そうに自分の爪を見ている。
高貴な人たちの前で夫婦の交わりを、しかも夫は股間を封じられたまま続けさせられている。この状況の結末はどこにあるのか。
カインがアロナの乳首を強く引っ張った。
「んんっ……」
身をのけぞらせ、痛みに顔を歪めるアロナの目がナリアの目とぴたりと合った。
先ほどまで関心もなさそうに爪を見ていたのに、今はアロナの顔をじっと見ている。
快感を必死に堪えるカインが、さらに乱暴にアロナの乳首を引っ張り、ひねりあげた。
「ああああっ」
痛みに顔をふり、カインを咎めようとするが、カインは自分のはりつめた性器の痛みに耐えるだけで精一杯らしく、乳房に吸い付き必死に気を紛らわしている。
「アロナ、ごめん。アロナ……愛している……」
達することのできない苦しみの中で、カインは蕩けるように微笑んだ。
幸せそうなカインを見ては、アロナも文句は言えなくなる。
「いいの……カイン、愛している」
じんわりと心が熱くなれば、体だって火照ってくる。
愛する人の肌、声、その心に触れ抱き合っていればそれだけで満たされるものがある。
アロナは不思議な感触の貞操帯に、感じやすい突起をこすられながら軽く達し、カインの首に抱き着いた。
「んっ……」
中は濡れてぐずぐずと物足りない刺激に疼いているが、アロナは満足そうな吐息をついた。
「カイン……私だけ、ごめんなさい」
とりあえず、終わった形には出来たのだ。
ナリアは何も言わなかった。
ただ立ち上がると、背を向けて部屋を出ていった。
その後ろを召使たちもついていき、部屋に二人きりになると、カインとアロナはやっとほっとして改めて抱き合った。
「一体、今のは何だったのかしら?」
カインもよくわからないと首を横に振った。
「貞操帯をつけても満足できるか試したかったとか?あるいは……ドルバイン様のことをもっと知りたいのかもしれない……」
ぱっと二人は顔を見合わせた。
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