上 下
118 / 212
蜘蛛の処刑台

115. 待てが苦手な猟犬の収獲*

しおりを挟む

「あ―――あ、あぁ―――……!」
「ン……」
「だめ、だめだ……!」

 尻の孔には、数本の指。そして股間には、アレッシオの頭が埋まっていた。
 閉じられないよう膝裏を掴んで開かされた足が宙を掻き、つま先がぎゅっと丸まっている。
 やめて欲しいのに、髪を掴んで痛い思いをさせたくなくて、力なくサラサラと撫でることしかできなかった。

 アレッシオの口に中心を含まれている。
 裏筋を舌がねぶり、喉奥が亀頭に纏わりついて絞る動きをしていた。
 だめだ。これ、だめだ。頭がおかしくなる。飛んでしまう。

「だめ、だめ、だめ……ぁっ……!」

 頭を振りながらのけ反り、足をぴんと突っ張った瞬間―――ふ、と口が離れた。
 果てる寸前だった。あと数秒も続けられたら、彼の口の中に出すところだった。
 解放された自分のものが、アレッシオの唾液と先端から滲む液とでぬらりと光り、後孔を貫く指はたっぷりと香油を纏っていて……。

 俺は、ナイトガウンがなぜ人気商品になったのか、『使い勝手の良さ』の一端をこんな時なのに察してしまった。
 これのおかげで、ソファが汚れない。ソファだけじゃなく、これがあればベッドのシーツだって汚れにくい。
 そんなつもりで作らせたわけじゃないのに、絶対ほかにもこの用途で使っている奴いるだろ……!!

 たっぷりと俺のを愉しんだアレッシオは、スウと目を細め、ペロリと唇を舐めた。肉食獣めいた表情に、ぞくりと全身が粟立った。
 彼は俺の両方の膝裏に手を添え、先ほどよりぐいと高く持ち上げてきた。
 慌ててひじ置きを掴み、はたと気付く。
 ……この一人掛けのソファ、やばい。
 フィット感があり過ぎる。この体勢がぴったりまり過ぎてやばい。
 職人さん、絶対この用途で作ったわけじゃないのに……!

 ほころんだそこに亀頭が当てられ、ずぷり、と沈み込んだ。
 それから、浅い部分を……指でいじられたら悶絶するほど感じるしこりを狙い、ぬぐぬぐと行き来を始めた。

「あっ、いやっ、いやっ、あっ、あっ……だめっ、そこっ、いやっ……」
「嘘は、いけませんよ。ここ、好きでしょう……?」
「あんっ! やっ! そこっ、だめだっ、いやっ、いやぁっ……!」
「ほら、ちゃんと見なさい。ここが、どうなっているのか。目を閉じないで」
「や、や……!」
「見るんだ」
「っ……」

 おそるおそる、そこに目をやった。
 アレッシオの長大なものが、俺のそこに……みっちりと埋まって、ぬち、ぬち、と音を立てながら、行き来している……。
 ぶわわわ、と強烈な羞恥に襲われ、涙がこぼれた。クスリと笑いながら、彼は俺のふくらはぎを舐めた。

「可愛い……」
「あ―――」

 舐められた瞬間、きゅっとそこが収縮したのが見えてしまった。
 意識を逸らせず凝視していると……それはどんどん、奥へ奥へと侵入を始めた。

「ぁ……あぁああ!」

 ズン、と奥を突かれた。たまらず、自分を犯す男の背に縋りついた。
 抱きしめるというより、完全に動けないように全身を拘束され、己の先端から勢いよく液体が噴き出るのを感じた。
 しかも、中にいる男は萎えていない。彼は果てなかったのだ。最奥にまり込んだままで、俺が震えるたびに締め付けてしまい、そこから微弱な電流のような快楽が伝わり続けて、一度で終わらず断続的に達してしまった。
 あまりにも強い悦楽に、目の前で火花が散った。やっと落ち着いて息をついた頃には、情けないことに泣き出してしまった。
 アレッシオは俺の頬にキスをし、涙を吸いながら、何度も「可愛い」とささやいてくれた。……他人に言われたらムカつきそうなのに、こいつに言われたらなんでこんなに嬉しくてホッとするんだろう……。

「すみません……あなたが可愛らしくて、つい虐めてしまう。悪いくせだとわかっているんですが……」
「ぐす……」
「気持ち、いいですか?」
「……うん……」

 硬いままのアレッシオが、今もおなかの一番深いところにぴったり納まっている。こうして喋ったり、呼吸をしているだけでも、自然に軽く絞るというか……中が勝手に、吸い付くような動きをしてしまって……それがすごく、気持ちいいんだ。
 に奥を突かれると、頭がぐちゃぐちゃになって、わけがわからなくなってしまうんだけど。

「おまえ、こそ……きもちい、のか……?」
「最高ですね。理性が吹っ飛ぶぐらい、いいですよ……」
「……本当に? 私に、気遣いは、いらないぞ?」
「最高ですよ。私を待つ時、下着を穿くかどうか葛藤しているあなたを想像すると、かなります」
「ぐ」
「それに私は、こう見えて育ちが悪いので。重い上に粗野な部分を出し過ぎて、せっかく手に入ったあなたに、今さら嫌われたくはないんですよ……」

 は? 俺がおまえを嫌うだと? それこそ何を言っているんだ。

「見くびるな。私は、おまえがブルーノを今も平民言葉で『父さん』と呼ぶのも好きだし、意外と意地悪なのも好きだし、性格が荒っぽいのも、執着してくれるのも、こういう時に粗野な口調が出るのも、全部好きだぞ。今さら、おまえのどこをどうやって嫌えと?」
「―――……」
「あっ? お、おおきく、なっ?」
「あなたね……」
「やっ、おおき、おおきいっ? おく、そんな、おくっ?」
「本当にもう……俺を煽って自滅するそのくせ、どうにかならないのか……!!」
「あっ!? あっ、あっ、ひんっ、あぁっ、あぁあ!」

 煽る!? いつ!? 知らねぇよ、そんな高等テクニック、俺にあるもんかーっ!
 ……あ、だめ……ちくびなめな……おく、ずんずんて……あぁあ……あたまおかしくなる……。



   ■  ■  ■ 



 ソファで何やらスイッチの入ったアレッシオに徹底的に虐められ、中に出された後。
 ベッドに運ばれ、インターバルを置かずに後ろから……あれ、さっき出されたような、なんて首を傾げる間もなく第二戦。
 さっきまでと違う角度で、中のまずいところを漏れなくえぐられ、さんざん鳴かされ。何回果てたのか、もはや数えていない。

 さらに今回、普段は俺の意識が朦朧もうろうとしている間に済ませていた、後ろの『後始末』をされてしまった。
 たっぷり出されたのを、なんというか、こうね……。
 アレッシオが、それはそれは愉しそうだったとだけ言っておこう……。

 さらりと乾いたガウンとシーツが心地良い。現在、満腹になった猛獣の腕の中だ。
 骨までおいしくしゃぶられた感じがすごい。いや、やはり骨すらも残っていないかもしれない。彼の腹が満ちたような表情は、あらかじめ準備していた軽食を平らげたからではなかろう。

「身体、つらくはありませんか?」
「う、うん……」

 俺の目尻に口付けをし、髪を撫でながら、愛しげな声で労られる。この声も好きだ。ああもう、好き……。

「先にお話をしておいてから、こうしたほうがよかったのかもしれませんが。申し訳ありません、堪え性がなく」
「あ、いや、それはいいんだが」

 ―――おっと、そうそう、そういえば憶測とか言ってたんだっけ? 忘れてたわ。

「何か調べていたのか?」
「……フェランドという男が、どのように見えていたのか、証言を収集していました」

 撫でられる心地良さに落ちかけていた瞼が、ぱちりと開いた。

「メイド、従僕、家庭教師、庭師、料理人、当時の学園の教師だった者、当時の後輩……あの男が眼中に入れなかったであろう人々は特に、あの男がどのように見えていたのか、聞き取りをしていました。私だけではもちろん手が足りませんので、部下や商会の人員にも手を借りて」

 お祖父様とお祖母様、アンドレア、エウジェニア……俺は彼らの再調査を命じ、『当時の詳細を知ることは不可能』『証拠を発見することは不可能』という結論ばかりを目にしていた。
 だがアレッシオは、証拠能力の有無はとりあえず抜きにして、あくまで人々の『個人的な感想』を集め、フェランド=ロッソがどのように育ち、どのような人物で、いったい何をしてきたのか仮説を立てる……ということを試してみたそうだ。

「不明な部分は想像で補うことになるので、裁判に持ち込めるほどの証拠にはならないと思いましたが。我々の知るあの男の性格や気性、思考の傾向などを合わせれば、『これはこういうことなのではないか』というものが形になりました。それをニコラ殿にまとめてもらい、ラウル殿が戻れば修正を加える予定です」

 早ければ、二~三日中には俺に見せられるものができるという。

「役に立つものかどうかは不明ですし、勝手な真似をしてしまいましたが」
「いや―――そんなことはない」

 そんなことはない。
 限定的な範囲で調査をさせていた俺よりも、彼はきっと、核心に迫ることができている。


しおりを挟む
感想 632

あなたにおすすめの小説

ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目

カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。

運命を変えるために良い子を目指したら、ハイスペ従者に溺愛されました

十夜 篁
BL
 初めて会った家族や使用人に『バケモノ』として扱われ、傷ついたユーリ(5歳)は、階段から落ちたことがきっかけで神様に出会った。 そして、神様から教えてもらった未来はとんでもないものだった…。 「えぇ!僕、16歳で死んじゃうの!? しかも、死ぬまでずっと1人ぼっちだなんて…」 ユーリは神様からもらったチートスキルを活かして未来を変えることを決意! 「いい子になってみんなに愛してもらえるように頑張ります!」  まずユーリは、1番近くにいてくれる従者のアルバートと仲良くなろうとするが…? 「ユーリ様を害する者は、すべて私が排除しましょう」 「うぇ!?は、排除はしなくていいよ!!」 健気に頑張るご主人様に、ハイスペ従者の溺愛が急成長中!? そんなユーリの周りにはいつの間にか人が集まり… 《これは、1人ぼっちになった少年が、温かい居場所を見つけ、運命を変えるまでの物語》

一日だけの魔法

うりぼう
BL
一日だけの魔法をかけた。 彼が自分を好きになってくれる魔法。 禁忌とされている、たった一日しか持たない魔法。 彼は魔法にかかり、自分に夢中になってくれた。 俺の名を呼び、俺に微笑みかけ、俺だけを好きだと言ってくれる。 嬉しいはずなのに、これを望んでいたはずなのに…… ※いきなり始まりいきなり終わる ※エセファンタジー ※エセ魔法 ※二重人格もどき ※細かいツッコミはなしで

異世界転生して病んじゃったコの話

るて
BL
突然ですが、僕、異世界転生しちゃったみたいです。 これからどうしよう… あれ、僕嫌われてる…? あ、れ…? もう、わかんないや。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 異世界転生して、病んじゃったコの話 嫌われ→総愛され 性癖バンバン入れるので、ごちゃごちゃするかも…

悪役令息の死ぬ前に

やぬい
BL
「あんたら全員最高の馬鹿だ」  ある日、高貴な血筋に生まれた公爵令息であるラインハルト・ニーチェ・デ・サヴォイアが突如として婚約者によって破棄されるという衝撃的な出来事が起こった。  彼が愛し、心から信じていた相手の裏切りに、しかもその新たな相手が自分の義弟だということに彼の心は深く傷ついた。  さらに冤罪をかけられたラインハルトは公爵家の自室に幽閉され、数日後、シーツで作った縄で首を吊っているのを発見された。  青年たちは、ラインハルトの遺体を抱きしめる男からその話を聞いた。その青年たちこそ、マークの元婚約者と義弟とその友人である。 「真実も分からないクセに分かった風になっているガキがいたからラインは死んだんだ」  男によって過去に戻された青年たちは「真実」を見つけられるのか。

無自覚な

ネオン
BL
小さい頃に母が再婚した相手には連れ子がいた。 1つ上の義兄と1つ下の義弟、どちらも幼いながらに イケメンで運動もでき勉強もできる完璧な義兄弟だった。 それに比べて僕は周りの同級生や1つ下の義弟よりも小さくて いじめられやすく、母に教えられた料理や裁縫以外 何をやっても平凡だった。 そんな僕も花の高校2年生、1年生の頃と変わらず平和に過ごしてる それに比べて義兄弟達は学校で知らない人はいない そんな存在にまで上り積めていた。 こんな僕でも優しくしてくれる義兄と 僕のことを嫌ってる義弟。 でも最近みんなの様子が変で困ってます 無自覚美少年主人公が義兄弟や周りに愛される話です。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

龍の寵愛を受けし者達

樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、 父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、 ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。 それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。 それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。 王家はある者に裏切りにより、 無惨にもその策に敗れてしまう。 剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、 責めて騎士だけは助けようと、 刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる 時戻しの術をかけるが…

処理中です...