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10章 崩壊と再生(最終章)
63.俺の合図を見逃したか
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幕間を挟んで俺たちの出番になった。
最近練習を重ねた新しいダンス曲で、飾り紐を体に巻きつけたり絡めながら踊るSMチックなダンスだ。
リックと息を合わせて操りながら立ち位置に注意が必要。なぜなら絡まって転けそうになるからだ。
そんな演技の裏事情は見せないように余裕のダンスを披露する。じゃないとエロスが霧散してしまう。
跪き、腕を紐で絡め上げられながらウォーレンの様子を伺う。覆面の下からでも目があった気がするほど、ずっと俺を見ていた。
ピーコックグリーンの目は舞台照明の照り返しにキラキラ光っている。
その目に体をなぞられている……筋肉のラインを辿るように。その想像がウォーレンの手の感触まで思い起こさせてカッと体が熱くなった。
「ランス」
リックの小さな合図にウォーレンの視線を振り切り、縄抜けの要領で紐を解いて立ち上がる。後ろを向いて腰を捻りながらダンスをするうちに、だんだんと余計な火照りが消えていった。
それでもウォーレンの視線がまだ追いかけてくるのを感じるし、腹の奥の熱は灯ったままだった。
舞台が終わってウォーレンの席に向かうと、待ち侘びたような親しげな笑顔で迎えられた。
「新しいダンスだったな。とても良かったよ」
「そーなんよ、同じのばっかりだとマンネリだろ? これでもまじめに練習してんだ」
「ランスは努力家だ、怠け者だとは思っていない。体づくりも、気配りも、何も考えてない者に到達できるレベルじゃない」
て、照れるぜ! ってかベタ褒めすぎだしぃ顔が熱いぃ!
「ウォーレンだめだ、俺を甘やかすなら違うだろ? そこは新ダンスのお披露目祝いにワイン樽で持ってこーいッ!」
笑ったウォーレンの太っ腹により、場内客に1本ずつ振る舞い酒が配られた。
俺とウォーレンはワインを乾杯して飲み干した。
喉が熱い、呼気が熱い、体が熱い。体の熱さがアルコールのせいか他のなんなのか、分からなくなるといい。
「久しぶりだな。あの、あれの証拠が揃ったから、もう店に来る必要はないのかと思ってた」
熱さで額に汗が流れた。腕で拭おうとしたのを止められ、ウォーレンの手拭いを当てられた。
ウォーレンに握られた手首が熱いし、手拭いのサラリとした感触は心地いい。手拭いからもウォーレンの香りがする。
「ランスと約束していたからな。ホールから間近でランスを見るって。投げキッスをしてくれる約束じゃなかったか?」
「しただろ~? ほら、こんな感じで?」
チムチムッと投げキッスポーズをするとウォーレンがニヤッと笑った。
「嘘だな。私はずっと見ていたんだから、見逃すはずがない。あなたも私の視線を意識していただろう? だから私との約束から逃げたんだ。コレに隠れていてもわかるよ」
ウォーレンに覆面の上から目の下をなぞられた。
その指の感触は俺の背をゾクゾクと感じさせる。
「なん……くそッ! 投げキッスなんて冗談に決まってんだろ!」
逃げたことを白状させられた。羞恥に舌が震える俺をウォーレンはしたり顔で笑った。
その顔が可愛いけどやっぱりムカつく!
「しかたねぇから今してやんよッ!」
ウォーレンの後頭部を掴み、噛みつくようにキスした。ハグハグと唇を噛んでやったら、ウォーレンに耳を撫でて引っ張られた。
勢いで離れた唇にウォーレンの吐息がかかる。
「あなたの事がかなり分かってきた。恥ずかしくなると私の口をふさぎにくるんだ」
「……ッ!」
「でも約束して。次のショーではきっと舞台の上で、あなたは私のものだって合図をしてくれるって」
ウォーレンに俺がどう見えているのか怖い。
俺をつぶさに解剖して分からせようとしてるのは羞恥プレイの一貫なのか?
「俺は……あんたのものだ」
「そうだ。この時間、あなたを買った時間、あなたは俺のものだって教えてくれた」
グッと後ろ髪を引っ張られた。のけぞった喉にウォーレンがキスしてくる。
「ふ……ッ、ぅ」
「私はそんな言葉で私との関係を線引きするあなたの残酷さに気づいているよ。でも、もっと奥底まであなたを欲してしまう強欲な私を許して欲しい」
喉にキスされているとくすぐったいのに体が疼く。髪を引っ張られるのは不快なはずなのに、その頭皮の痛みがウォーレンによる心の痛みに思えてグッと喉が詰まった。
ウォーレンの手が俺の腹を撫で上げ、胸の頂に到達する。そのウォーレンの目に危険なものを感じて思わず手を掴んで制止した。
「まて……ッて! わかったから、それ以上は部屋で……だろ」
最近練習を重ねた新しいダンス曲で、飾り紐を体に巻きつけたり絡めながら踊るSMチックなダンスだ。
リックと息を合わせて操りながら立ち位置に注意が必要。なぜなら絡まって転けそうになるからだ。
そんな演技の裏事情は見せないように余裕のダンスを披露する。じゃないとエロスが霧散してしまう。
跪き、腕を紐で絡め上げられながらウォーレンの様子を伺う。覆面の下からでも目があった気がするほど、ずっと俺を見ていた。
ピーコックグリーンの目は舞台照明の照り返しにキラキラ光っている。
その目に体をなぞられている……筋肉のラインを辿るように。その想像がウォーレンの手の感触まで思い起こさせてカッと体が熱くなった。
「ランス」
リックの小さな合図にウォーレンの視線を振り切り、縄抜けの要領で紐を解いて立ち上がる。後ろを向いて腰を捻りながらダンスをするうちに、だんだんと余計な火照りが消えていった。
それでもウォーレンの視線がまだ追いかけてくるのを感じるし、腹の奥の熱は灯ったままだった。
舞台が終わってウォーレンの席に向かうと、待ち侘びたような親しげな笑顔で迎えられた。
「新しいダンスだったな。とても良かったよ」
「そーなんよ、同じのばっかりだとマンネリだろ? これでもまじめに練習してんだ」
「ランスは努力家だ、怠け者だとは思っていない。体づくりも、気配りも、何も考えてない者に到達できるレベルじゃない」
て、照れるぜ! ってかベタ褒めすぎだしぃ顔が熱いぃ!
「ウォーレンだめだ、俺を甘やかすなら違うだろ? そこは新ダンスのお披露目祝いにワイン樽で持ってこーいッ!」
笑ったウォーレンの太っ腹により、場内客に1本ずつ振る舞い酒が配られた。
俺とウォーレンはワインを乾杯して飲み干した。
喉が熱い、呼気が熱い、体が熱い。体の熱さがアルコールのせいか他のなんなのか、分からなくなるといい。
「久しぶりだな。あの、あれの証拠が揃ったから、もう店に来る必要はないのかと思ってた」
熱さで額に汗が流れた。腕で拭おうとしたのを止められ、ウォーレンの手拭いを当てられた。
ウォーレンに握られた手首が熱いし、手拭いのサラリとした感触は心地いい。手拭いからもウォーレンの香りがする。
「ランスと約束していたからな。ホールから間近でランスを見るって。投げキッスをしてくれる約束じゃなかったか?」
「しただろ~? ほら、こんな感じで?」
チムチムッと投げキッスポーズをするとウォーレンがニヤッと笑った。
「嘘だな。私はずっと見ていたんだから、見逃すはずがない。あなたも私の視線を意識していただろう? だから私との約束から逃げたんだ。コレに隠れていてもわかるよ」
ウォーレンに覆面の上から目の下をなぞられた。
その指の感触は俺の背をゾクゾクと感じさせる。
「なん……くそッ! 投げキッスなんて冗談に決まってんだろ!」
逃げたことを白状させられた。羞恥に舌が震える俺をウォーレンはしたり顔で笑った。
その顔が可愛いけどやっぱりムカつく!
「しかたねぇから今してやんよッ!」
ウォーレンの後頭部を掴み、噛みつくようにキスした。ハグハグと唇を噛んでやったら、ウォーレンに耳を撫でて引っ張られた。
勢いで離れた唇にウォーレンの吐息がかかる。
「あなたの事がかなり分かってきた。恥ずかしくなると私の口をふさぎにくるんだ」
「……ッ!」
「でも約束して。次のショーではきっと舞台の上で、あなたは私のものだって合図をしてくれるって」
ウォーレンに俺がどう見えているのか怖い。
俺をつぶさに解剖して分からせようとしてるのは羞恥プレイの一貫なのか?
「俺は……あんたのものだ」
「そうだ。この時間、あなたを買った時間、あなたは俺のものだって教えてくれた」
グッと後ろ髪を引っ張られた。のけぞった喉にウォーレンがキスしてくる。
「ふ……ッ、ぅ」
「私はそんな言葉で私との関係を線引きするあなたの残酷さに気づいているよ。でも、もっと奥底まであなたを欲してしまう強欲な私を許して欲しい」
喉にキスされているとくすぐったいのに体が疼く。髪を引っ張られるのは不快なはずなのに、その頭皮の痛みがウォーレンによる心の痛みに思えてグッと喉が詰まった。
ウォーレンの手が俺の腹を撫で上げ、胸の頂に到達する。そのウォーレンの目に危険なものを感じて思わず手を掴んで制止した。
「まて……ッて! わかったから、それ以上は部屋で……だろ」
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