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2章 VIPルームへご招待
10.何度も会いたくなる男だからしゃーない
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ダンスショーのあと、またパンイチにジャケットだけ羽織ってホールにでた。
接客の時のスタイルはコレばっかりだ。なんてったって手間がないし、たいていの客が喜ぶ。
今日の客が喜ぶかどうかは……さすがに予測がつかね~。
歩いていく俺に気づかないウォーレンの横顔は、昼間と同じように冷たく見える。
チラチラ踊る光の反射がその横顔にあたっても変わることのない冷たさだ。
こんなところに来ても、まだ大聖堂の神官長モードなんか?
でもあんな涼しい顔して指名したキャストは股間強制タッチさせた男だぞ!
昨日はすぐに逃げ帰ったのに、いったいどういう心境の変化かな?
まさか……やっぱり、聖堂騎士のクラレンスがダンサーのランスだって気づいたとか?!
あまりにもジッと見過ぎたか。ウォーレンがこっちに気づいてしまった。
その目を見ると昼間の中庭での鋭い視線を思い出してしまって、背中がゾッと震えた。
目があった、と思った。
そして少し上がった口角……。
すこし困ったような微笑み……やば……さっそく撃ち抜いてくるじゃん……。
やっぱり全然気づいてないよな?! 同一人物だと思ったら、あんな笑顔は浮かべないよな!?!!
………………。
来てほしくない相手なのに、なんでこんなに高揚してしまうんだ。
俺よ……俺の息子よ……バレたらきっと昼職クビになるぞ? 公序良俗に反する副業がバレたら騎士抹消されんぞ?!
昨日はなんとか難を逃れたわけだけど、今夜も絶対逃げ切るぞ!!
内心の動揺を隠して、口元にはいつもの笑顔を浮かべてウォーレンの隣に座った。
昨日に続いて今日も顔上半分の覆面に感謝する。
「ウォーレン、また来てくれたんだな、ありがとう! それも今日は俺を指名したって? やっぱり~? 俺は何度も会いたくなる味のある良い男だからな~」
「そうだな。……昨日は突然帰って申し訳なかった。もう少し話したいと思って、今日はあなたをお願いしたんだ」
「大丈夫! 気にしてねーよ。俺も会いたいと思ってたしさ。ん? 今日もあんまり飲まずに帰る気か? ほらほら、グラスが減ってないぞ」
「いや、今日は……そうだな、貰おうかな。あなたも」
「いいね。今日も喉が渇いてるんだ。ドンドンいこうぜ!」
昨日の固かった様子からだいぶ変わったな。
昨日は結局1杯もグラスを空けなかったのに。ボーイに頼むと、俺と一緒にさっそく1杯飲み干した。すぐに次を頼む。
顔色は変わらないのに、ウォーレンは酔いが回ったように額に手を当てて動かない。何か考える表情は、少し困ったようにも見える。
「昨日……驚いて帰ってしまったが、後で何度も思い出してしまって」
まさか、あの変態が大聖堂を警備している騎士に似ているんじゃないかって?!
いやここは、あの時勇気をだしてチンコ触っとけば良かったなって?!
いやいや、どっちにしても変な汗が出てくるぜ。
「あなたは楽しめって言っただろう? たしかにこの店にきて、ショーも見ない、酒も飲まないなんて、客として失格だ。普段、楽しむということがなかったから、私は失礼なことをしたんじゃないかと思って……」
まさか昼間のぞき見した時の悩める顔もそれ?
ま、まじめか~~~っ!
でもこの人らしい。真面目すぎて堅すぎる。一周回って可愛く見えるな。
「それじゃ、今日は楽しんで行く気なんだ?」
「そう思ってきた。……ただ、こういう店の楽しみかたがわからないんだ。だからあなたに教えてほしくて」
はれ? 処女み強ない? 30近い年上の男だぞ? 俺の本能がバグってきた……。
遊びかたを教えて~だなんて、そんなこと言われたら、手取り足取り悪いことを教えたくなっちゃうんだけど。
「なるほどね。そういうご要望なら俺が最適! まずは昨日のおさらいから……あれあれ? 今回もウォーレンくんからはおひねりは無かったような気が?」
パンツのゴムを引っ張ってパタパタやったら、ウォーレンがスゥ~ッと目を逸らした。
「それについては異議がある。手渡しの客もいたようだが」
「はれ? 今回はしっかりショーを見ていたわけだ」
「もちろん」
昨日の強制タッチの二の舞にはならないって意志を感じる。ちくしょう!
「それじゃあウォーレンくんはこの店に何を求めてやってきたのかな?」
「何を……とは?」
「たとえば~……職場の愚痴とかも聴いちゃうけど?」
何を求めて、って聞いたところで一瞬緊張が走ったのが分かった。やっぱり何やら目的があるらしい。
じゃないと、あんな醜態を晒してまた来ようなんて思わないよなぁ。
「愚痴か。充実した毎日を過ごしているからこれといって………………」
「いやいや、今何か思い出したね? 難しい顔したな?! もしや人間関係で悩んでるとか!」
俺のこと?! ねぇ俺のこと?!!
「……そうだな。職場に難しい関係の相手がいてな、ちょっと態度を決めかねているというのはある」
「どういう態度の候補だよ?」
「知らないふりをするか、はっきり断るべきか」
やっぱり俺のこと?! ねぇはっきり言って!!
「そ、それは……どういう経緯とか……聞いて良い?」
きっと違う、きっと違うんだけど、心臓がドッキドキに早鐘を打ってる。
「同僚の娘さんを嫁に勧められそうでな。そんな噂が耳に入った。私はとても若い娘さんを娶れる立場ではないから固辞したいんだ」
セーーーフ!! グラスのアルコールを祝杯に煽った。
接客の時のスタイルはコレばっかりだ。なんてったって手間がないし、たいていの客が喜ぶ。
今日の客が喜ぶかどうかは……さすがに予測がつかね~。
歩いていく俺に気づかないウォーレンの横顔は、昼間と同じように冷たく見える。
チラチラ踊る光の反射がその横顔にあたっても変わることのない冷たさだ。
こんなところに来ても、まだ大聖堂の神官長モードなんか?
でもあんな涼しい顔して指名したキャストは股間強制タッチさせた男だぞ!
昨日はすぐに逃げ帰ったのに、いったいどういう心境の変化かな?
まさか……やっぱり、聖堂騎士のクラレンスがダンサーのランスだって気づいたとか?!
あまりにもジッと見過ぎたか。ウォーレンがこっちに気づいてしまった。
その目を見ると昼間の中庭での鋭い視線を思い出してしまって、背中がゾッと震えた。
目があった、と思った。
そして少し上がった口角……。
すこし困ったような微笑み……やば……さっそく撃ち抜いてくるじゃん……。
やっぱり全然気づいてないよな?! 同一人物だと思ったら、あんな笑顔は浮かべないよな!?!!
………………。
来てほしくない相手なのに、なんでこんなに高揚してしまうんだ。
俺よ……俺の息子よ……バレたらきっと昼職クビになるぞ? 公序良俗に反する副業がバレたら騎士抹消されんぞ?!
昨日はなんとか難を逃れたわけだけど、今夜も絶対逃げ切るぞ!!
内心の動揺を隠して、口元にはいつもの笑顔を浮かべてウォーレンの隣に座った。
昨日に続いて今日も顔上半分の覆面に感謝する。
「ウォーレン、また来てくれたんだな、ありがとう! それも今日は俺を指名したって? やっぱり~? 俺は何度も会いたくなる味のある良い男だからな~」
「そうだな。……昨日は突然帰って申し訳なかった。もう少し話したいと思って、今日はあなたをお願いしたんだ」
「大丈夫! 気にしてねーよ。俺も会いたいと思ってたしさ。ん? 今日もあんまり飲まずに帰る気か? ほらほら、グラスが減ってないぞ」
「いや、今日は……そうだな、貰おうかな。あなたも」
「いいね。今日も喉が渇いてるんだ。ドンドンいこうぜ!」
昨日の固かった様子からだいぶ変わったな。
昨日は結局1杯もグラスを空けなかったのに。ボーイに頼むと、俺と一緒にさっそく1杯飲み干した。すぐに次を頼む。
顔色は変わらないのに、ウォーレンは酔いが回ったように額に手を当てて動かない。何か考える表情は、少し困ったようにも見える。
「昨日……驚いて帰ってしまったが、後で何度も思い出してしまって」
まさか、あの変態が大聖堂を警備している騎士に似ているんじゃないかって?!
いやここは、あの時勇気をだしてチンコ触っとけば良かったなって?!
いやいや、どっちにしても変な汗が出てくるぜ。
「あなたは楽しめって言っただろう? たしかにこの店にきて、ショーも見ない、酒も飲まないなんて、客として失格だ。普段、楽しむということがなかったから、私は失礼なことをしたんじゃないかと思って……」
まさか昼間のぞき見した時の悩める顔もそれ?
ま、まじめか~~~っ!
でもこの人らしい。真面目すぎて堅すぎる。一周回って可愛く見えるな。
「それじゃ、今日は楽しんで行く気なんだ?」
「そう思ってきた。……ただ、こういう店の楽しみかたがわからないんだ。だからあなたに教えてほしくて」
はれ? 処女み強ない? 30近い年上の男だぞ? 俺の本能がバグってきた……。
遊びかたを教えて~だなんて、そんなこと言われたら、手取り足取り悪いことを教えたくなっちゃうんだけど。
「なるほどね。そういうご要望なら俺が最適! まずは昨日のおさらいから……あれあれ? 今回もウォーレンくんからはおひねりは無かったような気が?」
パンツのゴムを引っ張ってパタパタやったら、ウォーレンがスゥ~ッと目を逸らした。
「それについては異議がある。手渡しの客もいたようだが」
「はれ? 今回はしっかりショーを見ていたわけだ」
「もちろん」
昨日の強制タッチの二の舞にはならないって意志を感じる。ちくしょう!
「それじゃあウォーレンくんはこの店に何を求めてやってきたのかな?」
「何を……とは?」
「たとえば~……職場の愚痴とかも聴いちゃうけど?」
何を求めて、って聞いたところで一瞬緊張が走ったのが分かった。やっぱり何やら目的があるらしい。
じゃないと、あんな醜態を晒してまた来ようなんて思わないよなぁ。
「愚痴か。充実した毎日を過ごしているからこれといって………………」
「いやいや、今何か思い出したね? 難しい顔したな?! もしや人間関係で悩んでるとか!」
俺のこと?! ねぇ俺のこと?!!
「……そうだな。職場に難しい関係の相手がいてな、ちょっと態度を決めかねているというのはある」
「どういう態度の候補だよ?」
「知らないふりをするか、はっきり断るべきか」
やっぱり俺のこと?! ねぇはっきり言って!!
「そ、それは……どういう経緯とか……聞いて良い?」
きっと違う、きっと違うんだけど、心臓がドッキドキに早鐘を打ってる。
「同僚の娘さんを嫁に勧められそうでな。そんな噂が耳に入った。私はとても若い娘さんを娶れる立場ではないから固辞したいんだ」
セーーーフ!! グラスのアルコールを祝杯に煽った。
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