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そして、月日は流れ・・・
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本人の宣言通り、二ルガルは何度もジェンヌに会いにきた。
ある時は花を、ある時は本を、ある時は果物を、様々なものを手土産に持ってきては共に過ごす時間を増やしていく。
そんなある日のこと。仕事も片付き時間があいたジェンヌは二ルガルが持ってきた本を開く事にした。
平民にとって本は高価な趣向品。
前世では大好きだった本も、今のジェンヌには手が届かず、こうして読むのは久しぶりだった。
二ルガルが持ってきた本は、冒険もので主人公が沢山の苦難を乗り越えて仲間と共に笑い合うというもの。
はらり、はらりとページをめくる。その時、突然影ができ、話しかけてきた。
「何を読んでいるの?」
「二ルガル。後ろには立たないで頂戴。これは、貴方がくれた本よ」
「気に入った?」
「ええ、とても面白いわ・・・でも」
前世での少女が好んでいたのは恋愛ものだった。
二ルガルもそれはよく知っているはず・・・。
「よかった。今の君ならこっちの方が好みだと思ったんだ」
「え?」
「この間言ってただろう?毎日同じことの繰り返しで刺激が欲しいって」
「お、覚えていたの?」
「勿論!君の事だもの」
ジェンヌははたと気がついた。そういえば、毎回くれる贈り物は前世の少女好きだったものから徐々に今の私が好むものへと変わっていたことに。
自覚すると、胸が高鳴るのを感じた。
本当に、いまの自分を見てくれているのだと。
「今日はもう、仕事は終わったのかい?」
「ええ。今日はもう終わりよ」
「なら、夕食を一緒にとらないか?」
「いいわ」
「やった!」
来た時に仕事をしているジェンヌを見ると手伝いに入り、何かが足らなければすぐに持ってきてくれる。
いつしか二ルガルはジェンヌにとって身近な人へと変わり、季節が変わる頃には二ルガルへの不信感はなくなっていた。そして今では夕食を共にし、一夜を過ごす仲へと変わっていった。
二ルガルの馬車で街へと向かう。
商人の見習いから始めた彼だったが、ジェンヌに会いに来た段階で既に一目置かれる商人へと成長を遂げていた。
ジェンヌがそれならより良い妻を選ぶべきだと告げると、二ルガルは悲しげに言った。
「君に苦労をかけたくなくて頑張ったんだ。君がいないなら、こんなの、何の意味もない」
そう言われてからは彼女はそのことを追求するのをやめた。
「着いたよ」
「ここ?」
着いた場所は小さなレストランだ。
豪華な服装でなくても入れるが、小洒落た料理をそれなりの値段で出すので村で言った子は自慢げに語っていた。
店内の装飾も派手すぎず、地味すぎず、程よい雰囲気を醸し出していた。
久々に食べる料理人のコース料理はジェンヌ好みの味付けがされておりとても美味しい。
フォークとナイフが止まらず食べるジェンヌを二ルガルは優しく見つめていた。
コース料理も食べ終え、ほぅと一息ついた時だった。
二ルガルが少し緊張した様な声でジェンヌに話しかけた。
「ジェンヌ」
「なあに?」
「ずっと、君を見ていて、やっぱり心惹かれるのは君しかいなかった。必ず幸せにすると約束する。私と暖かい家庭を作ってくれないか?」
そういって差し出されたのは赤いルビーのブレスレットだった。
この村周辺では、求愛に赤いブレスレットを。
結婚すればお揃いのネックレスをするのが慣しだった。
ブレスレットを見つめ、ジェンヌはそっと受け取った。
「はい。私も、今の貴方が好きよ」
「ジェンヌ!」
嬉しそうに笑う二ルガルの姿に、ジェンヌは今世こそ、幸せになれると確信した。
ジェンヌが二ルガルの求愛を受けた次の日。
二ルガルはジェンヌの両親に挨拶へ向かった。
ジェンヌの母親はすぐに認めたが、父親は悔し泣きしながら二ルガルと共に酒を飲み交わした。
そして、数ヶ月後。
「ジェンヌ!」
白い服を着た二ルガルが同じく美しいドレス姿のジェンヌを抱きしめた。
「ああ、会場でみた時は天使が舞い込んだのかと思ったよ。いつもの君も魅力的だけど、今日の君は一段と綺麗だ!」
「ふふ、ありがとう」
求愛のブレスレットと、結婚のネックレスを身につけて、二ルガルとジェンヌは2人の新居に入った。
「ジェンヌ。ジェンヌ。本当に、今日から君は僕のお嫁さんなんだね!」
「ええ、二ルガル・・・いえ、旦那様」
「ああ、愛してる」
「んん」
照れて上目遣いで自身を呼ぶジェンヌに、二ルガルは抑えきれず唇を奪う。
何度も、何度も蝕む様に口づけを交わし、トロンとなったジェンヌを見て嬉しそうに笑う。
「もう2度と、君のこの手を離したりしない。今世も、来世も、ずっと、君と共に」
「ええ、旦那様。離さないで。でもね、今更告白されても困ります!だって、これ以上愛せない程、私も貴方を愛しているんですもの」
2人は抱きしめ合いながら、幸せそうに微笑んだ。
...and they lived happily ever after
ある時は花を、ある時は本を、ある時は果物を、様々なものを手土産に持ってきては共に過ごす時間を増やしていく。
そんなある日のこと。仕事も片付き時間があいたジェンヌは二ルガルが持ってきた本を開く事にした。
平民にとって本は高価な趣向品。
前世では大好きだった本も、今のジェンヌには手が届かず、こうして読むのは久しぶりだった。
二ルガルが持ってきた本は、冒険もので主人公が沢山の苦難を乗り越えて仲間と共に笑い合うというもの。
はらり、はらりとページをめくる。その時、突然影ができ、話しかけてきた。
「何を読んでいるの?」
「二ルガル。後ろには立たないで頂戴。これは、貴方がくれた本よ」
「気に入った?」
「ええ、とても面白いわ・・・でも」
前世での少女が好んでいたのは恋愛ものだった。
二ルガルもそれはよく知っているはず・・・。
「よかった。今の君ならこっちの方が好みだと思ったんだ」
「え?」
「この間言ってただろう?毎日同じことの繰り返しで刺激が欲しいって」
「お、覚えていたの?」
「勿論!君の事だもの」
ジェンヌははたと気がついた。そういえば、毎回くれる贈り物は前世の少女好きだったものから徐々に今の私が好むものへと変わっていたことに。
自覚すると、胸が高鳴るのを感じた。
本当に、いまの自分を見てくれているのだと。
「今日はもう、仕事は終わったのかい?」
「ええ。今日はもう終わりよ」
「なら、夕食を一緒にとらないか?」
「いいわ」
「やった!」
来た時に仕事をしているジェンヌを見ると手伝いに入り、何かが足らなければすぐに持ってきてくれる。
いつしか二ルガルはジェンヌにとって身近な人へと変わり、季節が変わる頃には二ルガルへの不信感はなくなっていた。そして今では夕食を共にし、一夜を過ごす仲へと変わっていった。
二ルガルの馬車で街へと向かう。
商人の見習いから始めた彼だったが、ジェンヌに会いに来た段階で既に一目置かれる商人へと成長を遂げていた。
ジェンヌがそれならより良い妻を選ぶべきだと告げると、二ルガルは悲しげに言った。
「君に苦労をかけたくなくて頑張ったんだ。君がいないなら、こんなの、何の意味もない」
そう言われてからは彼女はそのことを追求するのをやめた。
「着いたよ」
「ここ?」
着いた場所は小さなレストランだ。
豪華な服装でなくても入れるが、小洒落た料理をそれなりの値段で出すので村で言った子は自慢げに語っていた。
店内の装飾も派手すぎず、地味すぎず、程よい雰囲気を醸し出していた。
久々に食べる料理人のコース料理はジェンヌ好みの味付けがされておりとても美味しい。
フォークとナイフが止まらず食べるジェンヌを二ルガルは優しく見つめていた。
コース料理も食べ終え、ほぅと一息ついた時だった。
二ルガルが少し緊張した様な声でジェンヌに話しかけた。
「ジェンヌ」
「なあに?」
「ずっと、君を見ていて、やっぱり心惹かれるのは君しかいなかった。必ず幸せにすると約束する。私と暖かい家庭を作ってくれないか?」
そういって差し出されたのは赤いルビーのブレスレットだった。
この村周辺では、求愛に赤いブレスレットを。
結婚すればお揃いのネックレスをするのが慣しだった。
ブレスレットを見つめ、ジェンヌはそっと受け取った。
「はい。私も、今の貴方が好きよ」
「ジェンヌ!」
嬉しそうに笑う二ルガルの姿に、ジェンヌは今世こそ、幸せになれると確信した。
ジェンヌが二ルガルの求愛を受けた次の日。
二ルガルはジェンヌの両親に挨拶へ向かった。
ジェンヌの母親はすぐに認めたが、父親は悔し泣きしながら二ルガルと共に酒を飲み交わした。
そして、数ヶ月後。
「ジェンヌ!」
白い服を着た二ルガルが同じく美しいドレス姿のジェンヌを抱きしめた。
「ああ、会場でみた時は天使が舞い込んだのかと思ったよ。いつもの君も魅力的だけど、今日の君は一段と綺麗だ!」
「ふふ、ありがとう」
求愛のブレスレットと、結婚のネックレスを身につけて、二ルガルとジェンヌは2人の新居に入った。
「ジェンヌ。ジェンヌ。本当に、今日から君は僕のお嫁さんなんだね!」
「ええ、二ルガル・・・いえ、旦那様」
「ああ、愛してる」
「んん」
照れて上目遣いで自身を呼ぶジェンヌに、二ルガルは抑えきれず唇を奪う。
何度も、何度も蝕む様に口づけを交わし、トロンとなったジェンヌを見て嬉しそうに笑う。
「もう2度と、君のこの手を離したりしない。今世も、来世も、ずっと、君と共に」
「ええ、旦那様。離さないで。でもね、今更告白されても困ります!だって、これ以上愛せない程、私も貴方を愛しているんですもの」
2人は抱きしめ合いながら、幸せそうに微笑んだ。
...and they lived happily ever after
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最後まで読んでいただいてありがとうございます!
ジェンヌの言葉はタイトルにかけているのもありますが、最初の前世しか見ていない二ルガルに言った時は『否定』を。そして、最後の今を見てくれる彼に対しての『肯定』を表しました。
でも、わかりにくかったかもしれません・・・(⌒-⌒; )
二年後が‥‥‥熱い。
もっと読みたいですよ!
ありがとうございます(๑>◡<๑)
頑張りますね