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翌朝
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翌日、ジェンヌが目を覚ますと前世で過ごした部屋にいた。
慌てて起き上がり、鏡を見て姿を確認する。
前世の少女ではない、今世の自分だと確認するとジェンヌはでは、何故?と疑問に思う。
そして、昨日の記憶が蘇る。
あの時、あの青年に渡された薬を飲んだ後のことが曖昧だった。
(彼がここに連れてきたの?なんのために?)
部屋にあるものは前世の記憶にあるものばかり。
しかし、よく見るとそれは全て真新しいものだった。
少女の部屋をわざわざ模して作ったのだとジェンヌは思った。
あのハンカチがあるということはこの世界が前世と繋がりがあるということ。
インシュタル王子によく似た彼がこの前世での少女の部屋にジェンヌを連れてきたということ。
それぐらいしかジェンヌにはわからなかった。
机の上に乗った使用人を呼ぶためのベルをあえて鳴らさず、ジェンヌは部屋の外へと出ようとした。
ーガチャガチャ
しかし、外から鍵がかかっているようだ。
窓もよく見ると枠がはめられており、外へは出られそうにない。
仕方なくジェンヌはベルを鳴らした。
しかし、誰もこない。
(普通、ベルを鳴らせば5分もしないうちに使用人が姿を現し誤用を聞きにくるのに)
前世の体験からジェンヌはふぅとため息をついた。
そして少女がよく腰掛けていたソファによく似たそこに腰を下ろす。
(ここでこうして物想いに耽るのが日課だったなぁ)
少女は父親である公爵からも母親である元皇女からも何かを貰ったことはなかった。
ただ王子の婚約者として必要な最低限のドレスと装飾品だけを与えられ、勉強の日々。
極たまに与えられる休憩の時間は何をすればいいのかもわからず、こうしてじっとしているしかなかった。
部屋に対して、思い入れのあるものも特にないはずだった。
ただ、たまに来る王子が来た時だけ、部屋が明るく見えていた様な気がする。
ジェンヌが前世の記憶を思い出していると、扉からノックの音がなった。
一気に我に帰り、扉へ顔を向けると入ってきたのは昨日の青年だった。
「おはよう、早起きだね」
「貴方は誰?どうして私をここに連れてきたの?」
「お腹が空いただろう?大好きだったフレンチトーストを作らせたよ。一緒に食べよう」
「ねぇ、私を家にかえして」
「ああ、その前に身支度をしないとダメだよね。ごめん、ごめん。レディーの身支度前に殿方が部屋に入ったらダメだって昔から言っていたものね」
「あ、ねぇ、待って!ねぇったら!!」
青年はまるで友人か恋人と話しているかの様にジェンヌに声をかける。
それなのにジェンヌの疑問や当たり前の要求には一切返事をしない。
その異常な状態にジェンヌは怖くなり、出ていこうとする青年の腕を掴んだ。
「大丈夫だよ。もう2度と離したりしないから」
青年はジェンヌの頬を優しく撫でると部屋から出ていき、代わりに3人の侍女が水の入った桶や、ドレスを持って入ってくる。
侍女達はジェンヌが声を何度もかけても何も言わずに彼女の身支度だけを手早くこなしていく。
そしてそれが終わるとそそくさと出て行ってしまった。
「どうして・・・?」
慌てて起き上がり、鏡を見て姿を確認する。
前世の少女ではない、今世の自分だと確認するとジェンヌはでは、何故?と疑問に思う。
そして、昨日の記憶が蘇る。
あの時、あの青年に渡された薬を飲んだ後のことが曖昧だった。
(彼がここに連れてきたの?なんのために?)
部屋にあるものは前世の記憶にあるものばかり。
しかし、よく見るとそれは全て真新しいものだった。
少女の部屋をわざわざ模して作ったのだとジェンヌは思った。
あのハンカチがあるということはこの世界が前世と繋がりがあるということ。
インシュタル王子によく似た彼がこの前世での少女の部屋にジェンヌを連れてきたということ。
それぐらいしかジェンヌにはわからなかった。
机の上に乗った使用人を呼ぶためのベルをあえて鳴らさず、ジェンヌは部屋の外へと出ようとした。
ーガチャガチャ
しかし、外から鍵がかかっているようだ。
窓もよく見ると枠がはめられており、外へは出られそうにない。
仕方なくジェンヌはベルを鳴らした。
しかし、誰もこない。
(普通、ベルを鳴らせば5分もしないうちに使用人が姿を現し誤用を聞きにくるのに)
前世の体験からジェンヌはふぅとため息をついた。
そして少女がよく腰掛けていたソファによく似たそこに腰を下ろす。
(ここでこうして物想いに耽るのが日課だったなぁ)
少女は父親である公爵からも母親である元皇女からも何かを貰ったことはなかった。
ただ王子の婚約者として必要な最低限のドレスと装飾品だけを与えられ、勉強の日々。
極たまに与えられる休憩の時間は何をすればいいのかもわからず、こうしてじっとしているしかなかった。
部屋に対して、思い入れのあるものも特にないはずだった。
ただ、たまに来る王子が来た時だけ、部屋が明るく見えていた様な気がする。
ジェンヌが前世の記憶を思い出していると、扉からノックの音がなった。
一気に我に帰り、扉へ顔を向けると入ってきたのは昨日の青年だった。
「おはよう、早起きだね」
「貴方は誰?どうして私をここに連れてきたの?」
「お腹が空いただろう?大好きだったフレンチトーストを作らせたよ。一緒に食べよう」
「ねぇ、私を家にかえして」
「ああ、その前に身支度をしないとダメだよね。ごめん、ごめん。レディーの身支度前に殿方が部屋に入ったらダメだって昔から言っていたものね」
「あ、ねぇ、待って!ねぇったら!!」
青年はまるで友人か恋人と話しているかの様にジェンヌに声をかける。
それなのにジェンヌの疑問や当たり前の要求には一切返事をしない。
その異常な状態にジェンヌは怖くなり、出ていこうとする青年の腕を掴んだ。
「大丈夫だよ。もう2度と離したりしないから」
青年はジェンヌの頬を優しく撫でると部屋から出ていき、代わりに3人の侍女が水の入った桶や、ドレスを持って入ってくる。
侍女達はジェンヌが声を何度もかけても何も言わずに彼女の身支度だけを手早くこなしていく。
そしてそれが終わるとそそくさと出て行ってしまった。
「どうして・・・?」
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