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最期の願い

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とある王国の公爵家に赤子が生まれた。
銀色の髪に紫の瞳、隣国の王妃であった母によく似て赤子だというのに美しい顔立ちであった。
そして生後間もない赤子であるにも関わらず、その身分から王子の婚約者という立場へとなったのだった。

15年後、少女は美しくそして賢く成長した。
長い時をかけて交流を深めてきた王子との間も良好であった。
しかし、それは社交界でのデビューの時に起こった。
王子が伯爵令嬢に一目惚れしたのだ。
彼は言った。
「すまない。婚約を白紙にしてほしい」と。
少女は言った。
「もう決意されているのですね。ならばその気持ちを応援しますわ」と。
本人同士は納得しあっての婚約解消であったが、それを知った少女の父ー公爵は大激怒。
「何故、婚約を解消などと!何のために生まれたと思っている!!」
「ですが、お父様。あの方は他に好きな方が出来たのです。それは喜ばしいことではありませんか」
王子は伯爵令嬢にアプローチする前に少女との婚約を解消したいと言ったのだ。
自分に非があるからどんな無茶なことでもいうことを聞くと言って。
そんな誠実な方の願いを何故断れるでしょうかと少女は思う。
しかし、公爵は許さなかった。
自分の思惑がうまくいかなかったことに。目の前の少女が反抗することに。
「役立たずの娘など、もう必要ないっ!」
そう怒鳴ると、公爵は壁に飾ってあった剣を握ると少女の胸へと突き刺した。
ずるりと引き抜かれる剣の刃は赤く、少女の胸からは血が流れ落ちる。
力が入らず、自身の血で染まった絨毯の上で少女は自身の死を確信した。

(死ぬのね、私・・・。思えば、何の楽しみもない人生だった。王子。あの時の彼はキラキラした目をしていた。
ずっと、私と同じ様な目をしていたのに・・・。ふふ、もし、生まれ変われるのならば、私、平民に生まれたいな。
そうすれば、自由にいろんなことがきっと出来・・・る・・・・・)

物言わず、動かなくなった少女を公爵はただ見つめていた。
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