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トランキル帝国編

カーバンクル

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ラリマーの言葉に、脳内辞書は今日も絶好調で私に教えてくれる。
魔物の中でも厄介な魔物。
小さく可愛い見た目とは裏腹にすばしっこく、額の宝石から生み出される鏡には攻撃をその人物に跳ね返す特性を持つ。さらに、宝石から繰り出される衝撃波は並みの人間ならば吹き飛ばされてしまうほど強力なのだという。
ただ、このカーバンクル。
宝石さえどうにかしてしまえば倒すのは案外簡単である。何せ、本体はナイフで傷をほんの少しつけるだけで気絶してしまう程痛みに弱い。
ちなみに一番簡単な倒し方は、毒餌を食べさせること。
ただ、カーバンクルは敵意や殺意といった感情も敏感に感じとるので注意が必要なようだ。
とりあえず、この少年のように闇雲に戦いを挑んで勝てる相手ではない。
治療を終え、横たわっている少年を見てラリマーに頼んで蔓で檻を作ってもらう。
さっきのように、走って去られて同じことを繰り返すわけには行かない。
少年、兎のくせに猪突猛進っぽいしね。
カーバンクルを倒したい理由を知れれば、私も何か役に立てるかもしれないし!
主に、武器とか防具とかで。


少年が起きたのは治療してから数分後のことだった。

ガゴッ
「っ!!」

先ほどと同じように距離を取ろうとして、蔓の檻に気づかず頭を思いっきりぶつけていた。
かなり痛そうな音がしていたけど・・・大丈夫かな?
檻に近づき、少年の様子を伺う。
相当痛かったのだろう。涙目でコチラを睨みながら口をへの字にして、後頭部を押さえている。

「お前・・・!」
「大丈夫?」
「なぜ、閉じ込める!出せ!!」
「出したらまた、あの魔物に向かっていくんでしょ?」
「当然だ!あれは、俺が倒す!!」
「なんの対策もせずに?」
「勇敢なものはどんな強敵にも決して背を向けて諦めないっ!」

ああ。あまりの無謀さに、ムカムカしてきた。
リクロスが以前私を叱った理由がわかったかも。

「君、バカでしょ!勇敢と無謀を履き違えるのも大概にしなさい!」
「なっ!」
「君は、2回も私たちに助けられてる。もし、私たちが見つけていなかったら、君が追っていた魔物じゃない、林にいる魔物にたべられてたかもしれないんだよ?」
「それは感謝する!だが・・・」
「1回目もあんな風に正面から向かっていったんでしょ!同じことを繰り返したのに、また挑むなんて、無謀すぎるよ」
「な、ならどうしたらいいんだっ!!」

地面を叩いて悔しそうに歯を噛み締め、自身の弱さを憎むような眼で私を見つめる彼。
私は、深呼吸して心を落ち着かせると優しく声をかけた。

「まずはどうして、あの魔物を狙っているのか教えてくれない?」
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