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トランキル帝国編

プロローグ

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フリューゲル王国の隣に位置するトランキル帝国は多種の獣人族が集まり出来上がった国である。
この国には5年に1度、獣人達の心が滾る式典があった。それは、帝王を決める闘技大会。
その闘技大会の王者にこそ、全ての獣人族が頭を垂れるに相応しい人物だと考えられているのだ。
現在の帝王は獅子族の覇者であった。
齢50にして、既に3度の優勝を果たしている。
次の覇権を巡り、獣人族達は様々な予想を立てた。
獅子族は今の帝王の他にその息子も優勝候補として名乗りを挙げているだとか、
狼族の若者は、冒険者としても有名なので今年はもしかしたらとか、
熊族は族内で荒れているので今年は出ないかもしれないだとか、
帝国中が盛り上がりを見せる中、浮かない獣人族もいた。
今まで一度も帝王になったことのない兎族達。
兎族は聴覚に優れ、脚力も強い。
しかし、彼らの種は小柄で獲物を狩る力が弱く常に敗退していたのだ。
自身の強みを生かせず、帝王になることができずにいることが兎族達は悔しかった。
そんなある日、彼らは隣国の鍛治職人の話を耳にした。
この国の誰よりも優れた武器を持てたならば、
この国のどの強者よりも優れた防具を持てたならば、
もしかしたら、悲願の帝王が誕生するかもしれないと。
兎族の闘技大会の候補者は、藁にもすがる想いで旅に出た。
その噂の鍛治職人に出会うために・・・。


蝋燭の火が灯る洞窟内で、カンカンと高い音が辺りに鳴り響く。
光る石を叩いているのはまだ幼さが残る少女だった。
先の鋭いピックハンマーで狙いを定め、何度も何度も叩くと岩はまるで砂の様に砕け散り、金属の原石がポロリと落ちた。
それを拾うと少女は、次の目標である光る石を見つけると、またピックハンマーを振るった。
いくつかの金属の原石を取り終えると少女は奥へと進む。
どこまでも終わりのない洞窟は金属や宝石など様々な素材が取れ、決して尽きることのない。
また1つ壊れた場所からこぼれ落ちたそれを拾って少女は微笑んだ。
「新しい素材だ」
深い青が滲んだそれを嬉しそうに抱え、少女は元来た道を戻る。
手に入れた素材を早く使いたくてたまらないとばかりに駆け足で。
洞窟の外に出るとそこは様々な武器や防具、調理器具が並べられた店の中であった。
けれども少女は気にした様子もなく、外へ繋がる扉を開ける。
扉にかかった看板をひっくり返すと少女は早速店内の炉に火を点した。
ーー彼女こそ、噂の鍛冶職人。

鍛冶屋【Casualidad】ーー【Open】
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