88 / 215
第4章 国主編
第71話 領主なき国(1) ~フリスラント~
しおりを挟む
ホラント伯ウィレム・フォン・ホラントは何度目かのフリスラントの制圧に乗り出していた。
農民軍を前に騎士たちに攻撃を命令する。
「突撃せよ!」
命令とともにランスを構えた騎士たちが突撃していく。
しかし、ランスはもともと騎士同士の決闘用に発達したものである。一発目の攻撃をかわされ乱戦になってしまうと、ただ長くて取り回しが面倒な武器に早変わりしてしまう。
対する農民兵は屈強な男たちで、各々がバトルアックスで武装している。
土地は海沿いの泥濘で馬のスピードも出ない。
第一撃を避けられ、混戦になると騎士たちは農民兵のバトルアックスに次々と打ち取られていった。
──くそっ。なんということだ!
「退けっ! 退却だ!」
ホラント伯は攻撃を断念して退却を命じた。
農民兵たちは勢いに乗って勝ちどきを上げている。
ホラント伯は退却しながらその声を虚しく聞いていた。
◆
フリスラントはホラント伯国からアイセル湖を挟んで東に広がる海岸沿いの低地にある。
フリスラントにはゲルマン人の一部族フリース人が住んでおり、フリスク語という独自の言語を使っていた。
フリスラントの住人は潮の干満への対策としてテルプと呼ばれる人工の盛り土の上に家屋を建てて住んでいた。
12世紀頃から海岸線に沿った堤防の建設が進められ、13世紀初め頃にはフリスラント全体が堤防で囲まれるようになった。
形式上、ホラント伯とユトレヒト司教の共同統治領とされるが、12世紀以降100年近く実効支配に至らず、実質的に領主が存在しない状態が続いていた。
歴代のホラント伯はしばしばフリスラントの制圧を試みたが、完全にこの地を支配下に置くことはできずにいた。
フリスラントは時に「領主なきフリスラント」と言われ、封建制や領主制が定着せず、住民はいずれも自由身分の農民であり、当時の西ヨーロッパでは例外的な地域となっていた。
領主の不在が続いたことから、最も遅れた地域の一つである。
◆
ホラント伯は軍務担当の臣下を呼ぶと当たり散らしていた。
「これでもう何度目だ! いったいどうすればいいというのだ!」
「我々の自力で無理ならばロートリンゲン大公を頼ってみてはどうです? せっかく縁戚になったのですから」
「それもそうだな。この際、利用できるものはとことん利用しようではないか」
だが、フリスラントはユトレヒト司教との共同統治領である。ユトレヒト司教の意見も聞かねばならない。
使者を送ってみたところ、ユトレヒト司教はこう言った。
「確かに。ロートリンゲンの暗黒騎士団は聖なる軍隊と聞く。この際、十字軍に準じ、聖なる軍隊をもって蛮族を教化するのがよろしかろう」
フリース人は、これまでの度重なる勧誘にも動じず、キリスト教を頑なに拒んでいるのだった。
◆
フリードリヒはホラント伯とユトレヒト司教の連名の書簡を受け取った。
それにはフリスラント討伐に力を貸して欲しいと書いてあった。
フリードリヒは、フリスラントは領主を持たない独立不羈の土地柄であることくらいは知っていた。
が、それを好ましく思うことはあっても、武力を持って無理やりに従わせることには抵抗を覚えた。
とはいえ、このままの状況が続けば、フリスラントは発展する他の地域から置き去りにされた未開の地になってしまう。
フリードリヒは思案する…
そうだ。このような土地柄の場所こそ自らに統治を任せ、間接統治すればいいのではないか?
統治に慣れていない農民でも、手助けをする人間がいれば可能なのではないだろうか。
そのためにはロートリンゲンも統治に一枚噛む必要がある。
フリードリヒは、とりあえず間接統治のことは伏せておき、ロートリンゲンも共同統治に参加させるのであれば力を貸す旨の返書を返した。
◆
軍務担当の臣下がホラント伯に報告する。
「ホラント伯。ロートリンゲン大公からの返書が来ました。共同統治に参加させるのであれば力を貸すとのことです」
「う~む。さすがに無報酬で力を貸せというのは無理であったか。しかし、あの小僧も領土的野心はないと思っていたが意外だな。何を考えている?」
「ちょっと読めませぬな。
返書にはホラント伯・ユトレヒト司教と三者で話し合いをしたいとも書いてあります。話だけでも聞いてみはいかがですか?」
「行きがかり上やむを得ないだろう。話し合いを受けよう」
◆
数週間後。ホラント伯の城で三者の話し合いが行われた。
ホラント伯が口火を切る。
「大公閣下。わざわざご足労いただき大変恐縮です」
「いや。ロートリンゲンもヘルダーラント候領がフリスラントと接しているからな。他人ごとではないのだ」
「ところでお話とは何ですかな? 私は暗黒騎士団の力をもってすれば一ひねりと考えたのですが…」
「それはもちろん可能ではあるが、武力をもって無理やりに従わせるのはああいう土地柄にはなじまないと私は考えるのだ。
あの土地がノルマン人、すなわちヴァイキングに占領されていたときもフランク王国はノルマン人に爵位を授け、侯国を建てていたではないか。
その前例も踏まえ、農民たちのリーダーに爵位を授けたうえで自らを治めさせ、臣従させるのだ。いわゆる間接統治というやつだな」
「その場合、キリスト教の布教の方はどうなるのですかな?」
ユトレヒト司教が質問した。
「宗教というものはそもそも武力をもって強制するようなものではないと私は思う。
教会を建てることを認めさせるから、まずは慈善事業などを通じてキリスト教のメリットを徐々に浸透させていくのが適当だろう」
「なるほど。それも一理ありますな」
一方で、ホラント伯は納得がいかない顔をしている。今まで直接統治しか頭になかったから、切り替えができないのであろう。
「ホラント伯は納得がいかないようだな。
だが、直接統治をする場合、あのような土地柄の場合は軍も駐留させる必要もあるし、統治のための文官も多数派遣する必要がある。それを維持するとなると相当な金と労力がかかるぞ。
おそらく統治が軌道にのるまでの初期段階は税をとっても赤字だろうな。それでもホラント伯は直接統治にこだわるのか?」
赤字と聞いてホラント伯の顔色が変わった。
おそらく新しい土地を手に入れればその分税金で儲かると単純に考えていたのであろう。
それは民が素直に従うような土地柄の場合に限られることがわかっていない。往々にしてそのようなことは少ないのだ。
ホラント伯は必死に損得勘定をしている様子だったが、ようやく結論が出たようだ。
「わかりました。大公閣下のお考えに従いましょう。
それでやつらの説得は誰がするのです?」
「それは私が行こう」
「閣下が自ら!? それは危険ですぞ」
「こう見えて私は強いぞ。それにちゃんと護衛も連れていく」
「閣下がそこまでおっしゃるならお任せします。
ユトレヒト司教もよろしいな?」
「もちろんでございます」
◆
数日後。フリードリヒは、冒険者の恰好をしてフリスラントを訪れていた。
冒険者らしく、連れはかつてのパーティーメンバーである。
この面子で行動するのは何年ぶりであろうか。なんだか懐かしい。
ヴェロニアが言った。
「旦那とこうやって一緒に行動するのも久しぶりだな。けど、黒の森と違って強え魔獣がいないのはつまらねえなあ」
「ああ。そうだな」
さて、これからどうやって族長に面会するかが問題だ。
よそ者がただ会わせろといっても無理だろう。
──ここはちょっとやらせで行くか…
ちょうど折よくフリードリヒたちの前を身なりの良い少女が何人かの従者を連れて歩いている。おそらく身分の高い者だろう。
悪いがちょっと利用させてもらおう。
フリードリヒはアラクネを召喚した。
アラクネは少女に蜘蛛の糸を巻き付けるとそのまま逃走していく。従者が慌てて追いかけるが、八本の足に打ちのめされ気を失ってしまった。
フリードリヒはベアトリスにヒールの魔法で従者の傷を治療させると、頬を叩いて目を覚まさせた。
「あの蜘蛛の化け物にさらわれた少女は誰だ?」
「族長の娘のリア様です。あなたは?」
──これはラッキーだったな…
「通りすがりの冒険者だ」
「手練れの冒険者様とお見受けいたします。お願いです。お嬢様を助けていただけませんか。報酬ははずみますので」
「これも何かの縁だろう。わかった。引き受けよう」
「ありがとうございます」
フリードリヒはアラクネのもとに向かった。
場所はわかっている。少し離れた場所にある廃墟だ。
「主様。これでよかったのかい?」
「ああ。十分だ。助かった。ありがとう」
「じゃあ。あたしはこれで…」
アラクネは少女に巻き付けた糸を解くと去っていった。
少女に外傷はない。ショックで気絶しているだけだ。
フリードリヒが少女を抱き起すと、かるく呻きながら目を覚ました。
「あれっ。私はいったい?」
「蜘蛛の化け物にさらわれたのだ。だが、安心しろ。化け物は追い払った」
「あ、ありがとうございます」
少女は若い男に抱きかかえられているのに気づき、恥じらいながら礼を言った。
少女はドイツ人とは少し違う北欧系の顔立ちをしている。歳はフリードリヒよりも一つ二つ下だろうか。なかなかの美人である。
「君の従者の者が待っている。行こう。」
フリードリヒは少女をお姫様抱っこして従者のもとに歩いていく。
「だ、だいじょうぶです。自分で歩けます」
少女は恥じらいながら必死に訴えている。
「万が一ということもある。しばらくは様子を見た方がいいだろう」
フリードリヒはそう言うと、そのままお姫様抱っこを続けた。
「こ、これはお嬢様。大丈夫でございますか?」
「外傷はないようだが、ショックを受けているようだ。少し様子を見た方がいいだろう」
フリードリヒが少女を下ろすと「大袈裟に言わないで。大丈夫だから」と言ってぴょんぴょんと跳ねて見せた。
──まだ子供っぽいところもあるのだな…
「とにかくお礼をさせていただきますので、族長の屋敷までおいでください」
「わかった」
農民軍を前に騎士たちに攻撃を命令する。
「突撃せよ!」
命令とともにランスを構えた騎士たちが突撃していく。
しかし、ランスはもともと騎士同士の決闘用に発達したものである。一発目の攻撃をかわされ乱戦になってしまうと、ただ長くて取り回しが面倒な武器に早変わりしてしまう。
対する農民兵は屈強な男たちで、各々がバトルアックスで武装している。
土地は海沿いの泥濘で馬のスピードも出ない。
第一撃を避けられ、混戦になると騎士たちは農民兵のバトルアックスに次々と打ち取られていった。
──くそっ。なんということだ!
「退けっ! 退却だ!」
ホラント伯は攻撃を断念して退却を命じた。
農民兵たちは勢いに乗って勝ちどきを上げている。
ホラント伯は退却しながらその声を虚しく聞いていた。
◆
フリスラントはホラント伯国からアイセル湖を挟んで東に広がる海岸沿いの低地にある。
フリスラントにはゲルマン人の一部族フリース人が住んでおり、フリスク語という独自の言語を使っていた。
フリスラントの住人は潮の干満への対策としてテルプと呼ばれる人工の盛り土の上に家屋を建てて住んでいた。
12世紀頃から海岸線に沿った堤防の建設が進められ、13世紀初め頃にはフリスラント全体が堤防で囲まれるようになった。
形式上、ホラント伯とユトレヒト司教の共同統治領とされるが、12世紀以降100年近く実効支配に至らず、実質的に領主が存在しない状態が続いていた。
歴代のホラント伯はしばしばフリスラントの制圧を試みたが、完全にこの地を支配下に置くことはできずにいた。
フリスラントは時に「領主なきフリスラント」と言われ、封建制や領主制が定着せず、住民はいずれも自由身分の農民であり、当時の西ヨーロッパでは例外的な地域となっていた。
領主の不在が続いたことから、最も遅れた地域の一つである。
◆
ホラント伯は軍務担当の臣下を呼ぶと当たり散らしていた。
「これでもう何度目だ! いったいどうすればいいというのだ!」
「我々の自力で無理ならばロートリンゲン大公を頼ってみてはどうです? せっかく縁戚になったのですから」
「それもそうだな。この際、利用できるものはとことん利用しようではないか」
だが、フリスラントはユトレヒト司教との共同統治領である。ユトレヒト司教の意見も聞かねばならない。
使者を送ってみたところ、ユトレヒト司教はこう言った。
「確かに。ロートリンゲンの暗黒騎士団は聖なる軍隊と聞く。この際、十字軍に準じ、聖なる軍隊をもって蛮族を教化するのがよろしかろう」
フリース人は、これまでの度重なる勧誘にも動じず、キリスト教を頑なに拒んでいるのだった。
◆
フリードリヒはホラント伯とユトレヒト司教の連名の書簡を受け取った。
それにはフリスラント討伐に力を貸して欲しいと書いてあった。
フリードリヒは、フリスラントは領主を持たない独立不羈の土地柄であることくらいは知っていた。
が、それを好ましく思うことはあっても、武力を持って無理やりに従わせることには抵抗を覚えた。
とはいえ、このままの状況が続けば、フリスラントは発展する他の地域から置き去りにされた未開の地になってしまう。
フリードリヒは思案する…
そうだ。このような土地柄の場所こそ自らに統治を任せ、間接統治すればいいのではないか?
統治に慣れていない農民でも、手助けをする人間がいれば可能なのではないだろうか。
そのためにはロートリンゲンも統治に一枚噛む必要がある。
フリードリヒは、とりあえず間接統治のことは伏せておき、ロートリンゲンも共同統治に参加させるのであれば力を貸す旨の返書を返した。
◆
軍務担当の臣下がホラント伯に報告する。
「ホラント伯。ロートリンゲン大公からの返書が来ました。共同統治に参加させるのであれば力を貸すとのことです」
「う~む。さすがに無報酬で力を貸せというのは無理であったか。しかし、あの小僧も領土的野心はないと思っていたが意外だな。何を考えている?」
「ちょっと読めませぬな。
返書にはホラント伯・ユトレヒト司教と三者で話し合いをしたいとも書いてあります。話だけでも聞いてみはいかがですか?」
「行きがかり上やむを得ないだろう。話し合いを受けよう」
◆
数週間後。ホラント伯の城で三者の話し合いが行われた。
ホラント伯が口火を切る。
「大公閣下。わざわざご足労いただき大変恐縮です」
「いや。ロートリンゲンもヘルダーラント候領がフリスラントと接しているからな。他人ごとではないのだ」
「ところでお話とは何ですかな? 私は暗黒騎士団の力をもってすれば一ひねりと考えたのですが…」
「それはもちろん可能ではあるが、武力をもって無理やりに従わせるのはああいう土地柄にはなじまないと私は考えるのだ。
あの土地がノルマン人、すなわちヴァイキングに占領されていたときもフランク王国はノルマン人に爵位を授け、侯国を建てていたではないか。
その前例も踏まえ、農民たちのリーダーに爵位を授けたうえで自らを治めさせ、臣従させるのだ。いわゆる間接統治というやつだな」
「その場合、キリスト教の布教の方はどうなるのですかな?」
ユトレヒト司教が質問した。
「宗教というものはそもそも武力をもって強制するようなものではないと私は思う。
教会を建てることを認めさせるから、まずは慈善事業などを通じてキリスト教のメリットを徐々に浸透させていくのが適当だろう」
「なるほど。それも一理ありますな」
一方で、ホラント伯は納得がいかない顔をしている。今まで直接統治しか頭になかったから、切り替えができないのであろう。
「ホラント伯は納得がいかないようだな。
だが、直接統治をする場合、あのような土地柄の場合は軍も駐留させる必要もあるし、統治のための文官も多数派遣する必要がある。それを維持するとなると相当な金と労力がかかるぞ。
おそらく統治が軌道にのるまでの初期段階は税をとっても赤字だろうな。それでもホラント伯は直接統治にこだわるのか?」
赤字と聞いてホラント伯の顔色が変わった。
おそらく新しい土地を手に入れればその分税金で儲かると単純に考えていたのであろう。
それは民が素直に従うような土地柄の場合に限られることがわかっていない。往々にしてそのようなことは少ないのだ。
ホラント伯は必死に損得勘定をしている様子だったが、ようやく結論が出たようだ。
「わかりました。大公閣下のお考えに従いましょう。
それでやつらの説得は誰がするのです?」
「それは私が行こう」
「閣下が自ら!? それは危険ですぞ」
「こう見えて私は強いぞ。それにちゃんと護衛も連れていく」
「閣下がそこまでおっしゃるならお任せします。
ユトレヒト司教もよろしいな?」
「もちろんでございます」
◆
数日後。フリードリヒは、冒険者の恰好をしてフリスラントを訪れていた。
冒険者らしく、連れはかつてのパーティーメンバーである。
この面子で行動するのは何年ぶりであろうか。なんだか懐かしい。
ヴェロニアが言った。
「旦那とこうやって一緒に行動するのも久しぶりだな。けど、黒の森と違って強え魔獣がいないのはつまらねえなあ」
「ああ。そうだな」
さて、これからどうやって族長に面会するかが問題だ。
よそ者がただ会わせろといっても無理だろう。
──ここはちょっとやらせで行くか…
ちょうど折よくフリードリヒたちの前を身なりの良い少女が何人かの従者を連れて歩いている。おそらく身分の高い者だろう。
悪いがちょっと利用させてもらおう。
フリードリヒはアラクネを召喚した。
アラクネは少女に蜘蛛の糸を巻き付けるとそのまま逃走していく。従者が慌てて追いかけるが、八本の足に打ちのめされ気を失ってしまった。
フリードリヒはベアトリスにヒールの魔法で従者の傷を治療させると、頬を叩いて目を覚まさせた。
「あの蜘蛛の化け物にさらわれた少女は誰だ?」
「族長の娘のリア様です。あなたは?」
──これはラッキーだったな…
「通りすがりの冒険者だ」
「手練れの冒険者様とお見受けいたします。お願いです。お嬢様を助けていただけませんか。報酬ははずみますので」
「これも何かの縁だろう。わかった。引き受けよう」
「ありがとうございます」
フリードリヒはアラクネのもとに向かった。
場所はわかっている。少し離れた場所にある廃墟だ。
「主様。これでよかったのかい?」
「ああ。十分だ。助かった。ありがとう」
「じゃあ。あたしはこれで…」
アラクネは少女に巻き付けた糸を解くと去っていった。
少女に外傷はない。ショックで気絶しているだけだ。
フリードリヒが少女を抱き起すと、かるく呻きながら目を覚ました。
「あれっ。私はいったい?」
「蜘蛛の化け物にさらわれたのだ。だが、安心しろ。化け物は追い払った」
「あ、ありがとうございます」
少女は若い男に抱きかかえられているのに気づき、恥じらいながら礼を言った。
少女はドイツ人とは少し違う北欧系の顔立ちをしている。歳はフリードリヒよりも一つ二つ下だろうか。なかなかの美人である。
「君の従者の者が待っている。行こう。」
フリードリヒは少女をお姫様抱っこして従者のもとに歩いていく。
「だ、だいじょうぶです。自分で歩けます」
少女は恥じらいながら必死に訴えている。
「万が一ということもある。しばらくは様子を見た方がいいだろう」
フリードリヒはそう言うと、そのままお姫様抱っこを続けた。
「こ、これはお嬢様。大丈夫でございますか?」
「外傷はないようだが、ショックを受けているようだ。少し様子を見た方がいいだろう」
フリードリヒが少女を下ろすと「大袈裟に言わないで。大丈夫だから」と言ってぴょんぴょんと跳ねて見せた。
──まだ子供っぽいところもあるのだな…
「とにかくお礼をさせていただきますので、族長の屋敷までおいでください」
「わかった」
0
お気に入りに追加
538
あなたにおすすめの小説
英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
拝啓神様。転生場所間違えたでしょ。転生したら木にめり込んで…てか半身が木になってるんですけど!?あでも意外とスペック高くて何とかなりそうです
熊ごろう
ファンタジー
俺はどうやら事故で死んで、神様の計らいで異世界へと転生したらしい。
そこまではわりと良くある?お話だと思う。
ただ俺が皆と違ったのは……森の中、木にめり込んだ状態で転生していたことだろうか。
しかも必死こいて引っこ抜いて見ればめり込んでいた部分が木の体となっていた。次、神様に出会うことがあったならば髪の毛むしってやろうと思う。
ずっとその場に居るわけにもいかず、森の中をあてもなく彷徨う俺であったが、やがて空腹と渇き、それにたまった疲労で意識を失ってしまい……と、そこでこの木の体が思わぬ力を発揮する。なんと地面から水分や養分を取れる上に生命力すら吸い取る事が出来たのだ。
生命力を吸った体は凄まじい力を発揮した。木を殴れば幹をえぐり取り、走れば凄まじい速度な上に疲れもほとんどない。
これはチートきたのでは!?と浮かれそうになる俺であったが……そこはぐっと押さえ気を引き締める。何せ比較対象が無いからね。
比較対象もそうだけど、とりあえず生活していくためには人里に出なければならないだろう。そう考えた俺はひとまず森を抜け出そうと再び歩を進めるが……。
P.S
最近、右半身にリンゴがなるようになりました。
やったね(´・ω・`)
火、木曜と土日更新でいきたいと思います。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~
SHIN
ファンタジー
それは、ある少年の物語。
ある日、前世の記憶を取り戻した少年が大切な人と再会したり周りのチートぷりに感嘆したりするけど、実は少年の方が凄かった話し。
『僕の兄上はチート過ぎて人なのに魔王です。』
『そういうお前は、愛され過ぎてチートだよな。』
そんな感じ。
『悪役令嬢はもらい受けます』の彼らが織り成すファンタジー作品です。良かったら見ていってね。
隔週日曜日に更新予定。
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる