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第3章 軍人編
第58話 新生第6騎士団 ~天使軍団と悪魔軍団~
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悪魔を使役できるようになったからには、土木工事ばかりではもったいない。
ここは第6騎士団を拡充できないだろうか?
近衛騎士団長のコンラディン・フォン・チェルハに相談してみよう。
「団長。実はひょんな伝手がありまして。第6騎士団を増員できないかと考えているのですが…」
「各騎士団の定員が500となっているのは予算の都合だ。予算は増やせないぞ」
「承知しております」
「まさか団員に支給する手当を減らすとは言うまいな?」
「もちろんです。実は裏技がありまして…」
相手は悪魔だから当然に手当てなど払わないし、それで彼らが困ることもない。
「そんな裏技があれば俺も教えてもらいたいものだ」
「そこは私にしか使えない方法ですので、ご勘弁ください」
「まあいい。予算増なしに増員ができるというのならば、私としては異存がない。
で、何人増やすのだ?」
「まだ確定はしていませんが、数百人規模です」
「数百人!? 本当か?」
「それができるのです」
「とにかく私の一存では了承できない。軍務卿の了承をもらってくれ」
「承知いたしました」
◆
軍務卿のハーラルト・フォン・バーナーの部屋を訪ねる。
「軍務卿。この度は第6騎士団の増員を考えているのですが…」
「予算は出せないぞ」
「それは承知しております」
「予算なしでどうやって増員しようというのだ?」
「そこは私にしかできない裏技がありまして…」
「自腹を切るということか?」
「似たようなものです」
「予算がかからないのはよしとしても、騎士団のバランスが崩れるのは困る」
「わかりました」
「どうするというのだ?」
「騎士団がダメなら食客に回すだけです」
食客はホルシュタインの領軍に500ほど回したからアウクスブルクにいるのは500人程度である。しかし、その数の私兵を持っているというのは軍としては脅威だ。
現時点で食客を騎士団に取り込むという軍務卿らの企ては破綻しているのである。
しかし、それが更に増えるとなるとどうだろう?
軍務卿の顔色が変わった。
「待て! わかった。予算がかからぬということならば認めよう」
「ありがとうございます」
「それでいかほど増えるのだ?」
「まだ確定はしていませんが、数百人規模です」
「数百人だと!?」
「まずいですか? では食客に…」
「わかった。好きにしろ!」
「恐れ入ります」
◆
フリードリヒは早速悪魔たちを召喚した。
ベルゼブブ、ベリアル、アスモデウスの3人だ。
ベルゼブブが話を切り出した。
「主殿。何用だ?」
「土木工事ばかりではつまらないと思ってな。君たちの軍団の一部を第6騎士団に編入したい」
「それは土木工事よりもよほど面白そうだ。
それで何人ほど必要なのだ?」
「3人それぞれ100人ずつだ」
「100人? 5万でも10万でもいいのだぞ」
「それはいざという時のためにとっておいてもらいたい。今必要なのは各100人だ。
そのかわり精鋭を選んでくれよ」
「「「承知した」」」
◆
悪魔の方はなんとかなったが、これは想定どおりだ。
問題はあちらの方だが…
フリードリヒはミカエルの部屋を訪ねる。
普段は「ミヒャエル」とドイツ式の発音で読んでいる。
「ミヒャエル。実はお願いがあるんだ」
「願いとは何だ? 其方の願いならなんでもかなえよう」
ミカエルは愛妾として事をすませてから、フリードリヒにメロメロになっていた。あの居丈高だったミカエルはがとたんに女らしくなってフリードリヒに甘えてくる。
──最高位の天使をこんなにしてしまって人としてどうかとは思うが、それはそれとして…
「第6騎士団に天使の軍団を加えたいのだ」
「なんだそんなことか。わらわが命じれば造作もないことよ。
それでいかほど必要なのだ? 5万か? 10万か?」
──悪魔といい、天使といいスケールがでかいな…
「当面は100でいい。そのかわり精鋭を選んでくれ」
「あいわかった。そのかわり…………な」
ミカエルはフリードリヒにしなだれかかるとキスをしてきた。
そのままベッドへ倒れ込む。
──天使相手にこれでいいのか? いつかヤハウェの天罰が下りそうな気がする…
◆
これとは別に朗報が一つあった。
長年開発してきた鉄砲が完成したのである。
開発に着手したのが11歳の時だから5年もかかったことになる。
実は簡単なものであれば、はるか前に出来上がっていたのだが、そこは開発を始めたら凝り性のフィリーネとフリードリヒである。
当初は薬莢を使ったセミオートライフルを目指していたのだが、気がついてみたら自動小銃ができあがっていた。だいたい第2次大戦ごろに使われていたものである。
併せて、大砲の一種であるカノン砲と榴弾砲も開発した。
両者の違いはカノン砲が水平軌道を描くのに対し、榴弾砲は放物線に近い曲線を描くことにある。
前者は横から、後者は上からの砲撃に用いる。
この時代にこのような兵器を用いるなど反則も甚だしいが、できてしまったものは仕方がない。
自動小銃については、各員に配布し、訓練を施すが、大砲については専門の砲兵が必要である。
そこで砲兵の小隊も創設することにした。
砲兵小隊の隊長は、なんとヘルミーネの従者のジョシュアである。
ジョシュアは食客たちに混ざって剣術の訓練に励んでいたがなかなか目がでなかった。
だが、妙なことに砲術については天才的な才能を持っていたのである。人という者はいつ花が開くかわからないものだ。
また、フライブルグの魔術師学校も順調に人材を輩出していたので、この際、魔道部隊を増員して中隊にすることにした。
以上を踏まえ軍編成に取り組んだ結果は次のとおりである。
第6騎士団長:フリードリヒ・エルデ・フォン・ツェーリンゲン
第6騎士団副管:レギーナ・フォン・フライベルク
第6騎士団参謀:アビゴール
第1中隊:バイコーン騎兵・歩兵100:隊長:アダルベルト・フォン・ヴァイツェネガー
第2中隊:バイコーン騎兵・歩兵100:隊長:カロリーナ
第3中隊:バイコーン騎兵・歩兵100:隊長:ヴェロニア
第4中隊:ペガサス騎兵100:隊長:ネライダ
第5中隊:ダークナイト軍団100:隊長:オスクリタ
第6中隊:魔道部隊:魔導士100:隊長:フランメ
第7中隊:天使軍団:天使100:隊長:ミヒャエル
第8中隊:蠅騎士団:悪魔100:隊長ベルゼブブ
第9中隊:悪魔軍団:悪魔100:隊長:ベリアル
第10中隊:悪魔軍団:悪魔100:隊長:アスモデウス
砲兵小隊:砲兵隊:砲兵30:隊長:ジョシュア・サンチェス
結局、千人を少し超えてしまった。
増えたのは数百人といえば数百人だから、まあいいか。
◆
そういえば、鉄砲と大砲の使用については団長に報告しておいた方がいいな。
再び団長のコンラディン・フォン・チェルハを訪ねる。
「団長。一つ報告があります。」
「何だ?」
「第6騎士団の装備として鉄砲と大砲を正式に採用いたします」
「鉄砲など使い物にならないぞ」
この時代、鉄砲は開発されていたが、単発式の単筒で丸い鉛の玉を発射するものだった。物語に出てくる海賊が持っているあれである。
この鉄砲は命中精度が非常に低く、威嚇用くらいしか使い道がなかった。チェルハ団長はこれを想像したのだろうが、それはもっともなことだ。
「私が開発したものは優秀ですから」
「そうか…まあ好きにするがいいさ」
その後、フリードリヒが開発した鉄砲と対応は周辺国へ多大なる脅威を与えることになるのだが、それは後の話である。
ここは第6騎士団を拡充できないだろうか?
近衛騎士団長のコンラディン・フォン・チェルハに相談してみよう。
「団長。実はひょんな伝手がありまして。第6騎士団を増員できないかと考えているのですが…」
「各騎士団の定員が500となっているのは予算の都合だ。予算は増やせないぞ」
「承知しております」
「まさか団員に支給する手当を減らすとは言うまいな?」
「もちろんです。実は裏技がありまして…」
相手は悪魔だから当然に手当てなど払わないし、それで彼らが困ることもない。
「そんな裏技があれば俺も教えてもらいたいものだ」
「そこは私にしか使えない方法ですので、ご勘弁ください」
「まあいい。予算増なしに増員ができるというのならば、私としては異存がない。
で、何人増やすのだ?」
「まだ確定はしていませんが、数百人規模です」
「数百人!? 本当か?」
「それができるのです」
「とにかく私の一存では了承できない。軍務卿の了承をもらってくれ」
「承知いたしました」
◆
軍務卿のハーラルト・フォン・バーナーの部屋を訪ねる。
「軍務卿。この度は第6騎士団の増員を考えているのですが…」
「予算は出せないぞ」
「それは承知しております」
「予算なしでどうやって増員しようというのだ?」
「そこは私にしかできない裏技がありまして…」
「自腹を切るということか?」
「似たようなものです」
「予算がかからないのはよしとしても、騎士団のバランスが崩れるのは困る」
「わかりました」
「どうするというのだ?」
「騎士団がダメなら食客に回すだけです」
食客はホルシュタインの領軍に500ほど回したからアウクスブルクにいるのは500人程度である。しかし、その数の私兵を持っているというのは軍としては脅威だ。
現時点で食客を騎士団に取り込むという軍務卿らの企ては破綻しているのである。
しかし、それが更に増えるとなるとどうだろう?
軍務卿の顔色が変わった。
「待て! わかった。予算がかからぬということならば認めよう」
「ありがとうございます」
「それでいかほど増えるのだ?」
「まだ確定はしていませんが、数百人規模です」
「数百人だと!?」
「まずいですか? では食客に…」
「わかった。好きにしろ!」
「恐れ入ります」
◆
フリードリヒは早速悪魔たちを召喚した。
ベルゼブブ、ベリアル、アスモデウスの3人だ。
ベルゼブブが話を切り出した。
「主殿。何用だ?」
「土木工事ばかりではつまらないと思ってな。君たちの軍団の一部を第6騎士団に編入したい」
「それは土木工事よりもよほど面白そうだ。
それで何人ほど必要なのだ?」
「3人それぞれ100人ずつだ」
「100人? 5万でも10万でもいいのだぞ」
「それはいざという時のためにとっておいてもらいたい。今必要なのは各100人だ。
そのかわり精鋭を選んでくれよ」
「「「承知した」」」
◆
悪魔の方はなんとかなったが、これは想定どおりだ。
問題はあちらの方だが…
フリードリヒはミカエルの部屋を訪ねる。
普段は「ミヒャエル」とドイツ式の発音で読んでいる。
「ミヒャエル。実はお願いがあるんだ」
「願いとは何だ? 其方の願いならなんでもかなえよう」
ミカエルは愛妾として事をすませてから、フリードリヒにメロメロになっていた。あの居丈高だったミカエルはがとたんに女らしくなってフリードリヒに甘えてくる。
──最高位の天使をこんなにしてしまって人としてどうかとは思うが、それはそれとして…
「第6騎士団に天使の軍団を加えたいのだ」
「なんだそんなことか。わらわが命じれば造作もないことよ。
それでいかほど必要なのだ? 5万か? 10万か?」
──悪魔といい、天使といいスケールがでかいな…
「当面は100でいい。そのかわり精鋭を選んでくれ」
「あいわかった。そのかわり…………な」
ミカエルはフリードリヒにしなだれかかるとキスをしてきた。
そのままベッドへ倒れ込む。
──天使相手にこれでいいのか? いつかヤハウェの天罰が下りそうな気がする…
◆
これとは別に朗報が一つあった。
長年開発してきた鉄砲が完成したのである。
開発に着手したのが11歳の時だから5年もかかったことになる。
実は簡単なものであれば、はるか前に出来上がっていたのだが、そこは開発を始めたら凝り性のフィリーネとフリードリヒである。
当初は薬莢を使ったセミオートライフルを目指していたのだが、気がついてみたら自動小銃ができあがっていた。だいたい第2次大戦ごろに使われていたものである。
併せて、大砲の一種であるカノン砲と榴弾砲も開発した。
両者の違いはカノン砲が水平軌道を描くのに対し、榴弾砲は放物線に近い曲線を描くことにある。
前者は横から、後者は上からの砲撃に用いる。
この時代にこのような兵器を用いるなど反則も甚だしいが、できてしまったものは仕方がない。
自動小銃については、各員に配布し、訓練を施すが、大砲については専門の砲兵が必要である。
そこで砲兵の小隊も創設することにした。
砲兵小隊の隊長は、なんとヘルミーネの従者のジョシュアである。
ジョシュアは食客たちに混ざって剣術の訓練に励んでいたがなかなか目がでなかった。
だが、妙なことに砲術については天才的な才能を持っていたのである。人という者はいつ花が開くかわからないものだ。
また、フライブルグの魔術師学校も順調に人材を輩出していたので、この際、魔道部隊を増員して中隊にすることにした。
以上を踏まえ軍編成に取り組んだ結果は次のとおりである。
第6騎士団長:フリードリヒ・エルデ・フォン・ツェーリンゲン
第6騎士団副管:レギーナ・フォン・フライベルク
第6騎士団参謀:アビゴール
第1中隊:バイコーン騎兵・歩兵100:隊長:アダルベルト・フォン・ヴァイツェネガー
第2中隊:バイコーン騎兵・歩兵100:隊長:カロリーナ
第3中隊:バイコーン騎兵・歩兵100:隊長:ヴェロニア
第4中隊:ペガサス騎兵100:隊長:ネライダ
第5中隊:ダークナイト軍団100:隊長:オスクリタ
第6中隊:魔道部隊:魔導士100:隊長:フランメ
第7中隊:天使軍団:天使100:隊長:ミヒャエル
第8中隊:蠅騎士団:悪魔100:隊長ベルゼブブ
第9中隊:悪魔軍団:悪魔100:隊長:ベリアル
第10中隊:悪魔軍団:悪魔100:隊長:アスモデウス
砲兵小隊:砲兵隊:砲兵30:隊長:ジョシュア・サンチェス
結局、千人を少し超えてしまった。
増えたのは数百人といえば数百人だから、まあいいか。
◆
そういえば、鉄砲と大砲の使用については団長に報告しておいた方がいいな。
再び団長のコンラディン・フォン・チェルハを訪ねる。
「団長。一つ報告があります。」
「何だ?」
「第6騎士団の装備として鉄砲と大砲を正式に採用いたします」
「鉄砲など使い物にならないぞ」
この時代、鉄砲は開発されていたが、単発式の単筒で丸い鉛の玉を発射するものだった。物語に出てくる海賊が持っているあれである。
この鉄砲は命中精度が非常に低く、威嚇用くらいしか使い道がなかった。チェルハ団長はこれを想像したのだろうが、それはもっともなことだ。
「私が開発したものは優秀ですから」
「そうか…まあ好きにするがいいさ」
その後、フリードリヒが開発した鉄砲と対応は周辺国へ多大なる脅威を与えることになるのだが、それは後の話である。
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