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婚前旅行編
純白の海外ウェディング
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ふいに耳元に囁かれた低い声音が、じわりと胸の奥底まで浸透していく。
九十九夜が経っても、やっぱり瑛司は私の初恋の人で、愛しい旦那様だ。
「私も……愛してるよ、瑛司」
私たちは互いの体温を自らの体に刻みつけながら、快楽の余韻に浸る。
瞼を開くと、瑛司の肩越しに濃紺の海と夜空が見えた。
満天の星空から、ひとつの流れ星が落ちて弧を描く。
瑛司と、ずっと一緒にいられますように……
私は胸の裡で、そっと願いを込めた。
スカイブルーの空とターコイズブルーの海。
地球にはこの二色しか存在しないのではと思えるほど、南の島は美しい青たちで彩られている。
けれど、今日は新たな色が誕生した。
純白のウェディングドレスに身を包んだ私は、島の岬に建てられたチャペルを見上げる。こぢんまりとした白亜のチャペルは、波間に浮かぶ聖なる神殿のよう。
「さあ、瑞希。行くぞ」
瑛司と繫いだ手と、もう片方の手には白薔薇のブーケを携えている。
私はひとつ頷くと、瑛司と共にチャペルへ向かった。
シャツとスラックスに、ベストを重ねた軽装は南国らしい新郎の衣装だ。体躯の良い瑛司によく似合っている。私のドレスはマーメイドラインで、細身だけれど膝下からは華やかなフリルが広がっている。まるで本物の人魚姫になったみたい。
もちろん、私のドレスは瑛司が着せてくれた。
世界は広いけれど、新郎に結婚式のドレスを着せてもらった花嫁は私くらいじゃないかな……
嬉しいような恥ずかしいような心地でチャペルへ入場すると、島のスタッフが拍手で出迎えてくれた。列に並んだ彼らの先には、大きな窓から覗く海と空、そして礼装を纏う牧師が笑顔で立っている。
「私たち、とうとう結婚しちゃうんだね……まだ心の準備ができてないよ」
この海外ウェディングは、突然の瑛司の提案だ。
当然のように私は何も聞かされておらず、今日になって純白のドレスを見せられてから結婚式を挙げることを知ったのだった。本当にこの俺様御曹司には困ってしまう。
祭壇の前に辿り着くと、瑛司はふいに私の胴を持ち上げた。
「きゃあ⁉」
まるで赤ちゃんを高い高いするような格好に、驚いた私は咄嗟に瑛司の肩に手をつく。
ブーケの白い花びらが、ふわりと舞い散った。
「結婚式は何度も行うぞ。もちろん日本でも、招待客を招いて盛大な披露宴をしよう。その他にも各地の海外ウェディングを網羅して、九十九回は結婚式を挙げる。おまえは俺とそのたびに、愛の誓いを交わすんだ」
瑛司とは九十九夜を過ごしたけれど、結婚式も九十九回挙げなければならないようだ。
そんな強引で執着愛の激しい瑛司に付き合ってあげられるのは、私くらいかもしれない。
「じゃあ、今日が記念すべき一回目の結婚式だね」
「そうだ。生涯をかけておまえを守ると、俺は誓う」
「私も。一生、俺様な瑛司についていくと誓います」
空と海を背景に、純白の衣装を纏った私たちは笑い合った。
その笑い声は弾けて、蒼穹の空へと舞い上がっていったのだった。
九十九夜が経っても、やっぱり瑛司は私の初恋の人で、愛しい旦那様だ。
「私も……愛してるよ、瑛司」
私たちは互いの体温を自らの体に刻みつけながら、快楽の余韻に浸る。
瞼を開くと、瑛司の肩越しに濃紺の海と夜空が見えた。
満天の星空から、ひとつの流れ星が落ちて弧を描く。
瑛司と、ずっと一緒にいられますように……
私は胸の裡で、そっと願いを込めた。
スカイブルーの空とターコイズブルーの海。
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「さあ、瑞希。行くぞ」
瑛司と繫いだ手と、もう片方の手には白薔薇のブーケを携えている。
私はひとつ頷くと、瑛司と共にチャペルへ向かった。
シャツとスラックスに、ベストを重ねた軽装は南国らしい新郎の衣装だ。体躯の良い瑛司によく似合っている。私のドレスはマーメイドラインで、細身だけれど膝下からは華やかなフリルが広がっている。まるで本物の人魚姫になったみたい。
もちろん、私のドレスは瑛司が着せてくれた。
世界は広いけれど、新郎に結婚式のドレスを着せてもらった花嫁は私くらいじゃないかな……
嬉しいような恥ずかしいような心地でチャペルへ入場すると、島のスタッフが拍手で出迎えてくれた。列に並んだ彼らの先には、大きな窓から覗く海と空、そして礼装を纏う牧師が笑顔で立っている。
「私たち、とうとう結婚しちゃうんだね……まだ心の準備ができてないよ」
この海外ウェディングは、突然の瑛司の提案だ。
当然のように私は何も聞かされておらず、今日になって純白のドレスを見せられてから結婚式を挙げることを知ったのだった。本当にこの俺様御曹司には困ってしまう。
祭壇の前に辿り着くと、瑛司はふいに私の胴を持ち上げた。
「きゃあ⁉」
まるで赤ちゃんを高い高いするような格好に、驚いた私は咄嗟に瑛司の肩に手をつく。
ブーケの白い花びらが、ふわりと舞い散った。
「結婚式は何度も行うぞ。もちろん日本でも、招待客を招いて盛大な披露宴をしよう。その他にも各地の海外ウェディングを網羅して、九十九回は結婚式を挙げる。おまえは俺とそのたびに、愛の誓いを交わすんだ」
瑛司とは九十九夜を過ごしたけれど、結婚式も九十九回挙げなければならないようだ。
そんな強引で執着愛の激しい瑛司に付き合ってあげられるのは、私くらいかもしれない。
「じゃあ、今日が記念すべき一回目の結婚式だね」
「そうだ。生涯をかけておまえを守ると、俺は誓う」
「私も。一生、俺様な瑛司についていくと誓います」
空と海を背景に、純白の衣装を纏った私たちは笑い合った。
その笑い声は弾けて、蒼穹の空へと舞い上がっていったのだった。
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コメントありがとうございます。
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ご愛読ありがとうございました。