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婚前旅行編
ふたりきりのロマンティックディナー
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静かな波が打ち寄せる中、エスコートされてゆったりと歩んでいく。
辿り着いたテーブルにはキャンドルの灯火と共に、ディナー用のテーブルセッティングがコーディネートされていた。瑛司に椅子を引いてもらい、着席する。
ふたりきりのロマンティックなディナーを迎えた。初めの料理はなんといっても、テーブルから見渡せる大海原と、その海に沈もうとしている夕陽だ。
うっとりとして夕陽が水平線に沈もうとしている雄大な景色を眺めていると……ふと、足に温かなものがくっつけられていることに気づく。
「ん?」
テーブルの下を覗き込んだ私は目を瞬かせた。
いつのまにか瑛司の長い足が、私の足に絡められている。テーブルは狭いわけではないのに。
私の疑問を察知したかのように、瑛司は悠々と言い放つ。
「これなら両手で食事をしても安心だからな」
「……そうだね」
満足げな瑛司に微苦笑を返す。
まるで私の体温がないと、彼は呼吸すらできないとでも言いたげなほどだ。瑛司の執着愛には白旗を上げてしまう。
そのとき、銀盆を掲げた島のスタッフが音もなく小道を歩いてきた。
私と瑛司の前に置かれたフルートグラスに、シャンパンのボトルから黄金色の液体が注がれる。
瑛司がフルートグラスを掲げたので、私もそれに倣う。
「ふたりの初夜に、乾杯」
「しょ……初夜って……!」
小さな音を立てて、フルートグラスの縁が重ね合わされた。
その刹那、ふたりのグラスに映り込んだ夕日の最後の一欠片が海に溶け落ちる。
平然としている瑛司は優雅な仕草でシャンパンをひとくち含む。
「テタンジェの洗練された味わいは幅広い料理に合うが、今夜のディナーは魚介類をメインにしたのでワインとのマリアージュを楽しもう」
いかにもお金持ちらしい、こだわりのある台詞をなんとなく理解した私は、金の蔓模様が描かれた繊細なフルートグラスを、純白のテーブルクロスの上に置いた。
ふたりきりだけれど、小声で瑛司に問いかける。
「ちょっと瑛司、なんて恥ずかしいこと言うの。私たち、初夜じゃないよ」
婚前旅行ではあるけれど、とうに同棲して、婚約しているのだ。
まるで今夜がふたりが結ばれる初めての夜と、特別な扱いにされたようで、私の頬が朱に染まる。
「俺たちにとっては初めての旅行だから初夜と称してみたのだが、訂正しよう。正確には、九十九夜だ」
「……えっ、そうなの? もしかして、数えてるの?」
「当然だ。俺の病を治すという流れからのセックスを一夜目とカウントして、今夜が九十九夜目だ」
「……すごいね」
瑛司の明晰な頭脳がこんなところにも生かされているんだなぁ……と、私は妙に感心してしまう。何回セックスしたかなんて、覚えていられない。瑛司が明確に数えていることに呆れる一方で、とても嬉しくて。
今夜からは私も、何回目なのかメモ帳に付けておこう……
大粒の星空の下で、仄かな明かりと共にロマンティックディナーに舌鼓を打つ。
冷たい前菜は真鯛のサラダ仕立て。温かい前菜は、カキとムール貝のナージュ仕立て。どちらも新鮮な魚介の出汁が生かされた料理だ。まるで庭園を思わせるような芸術的な盛り付けも美しい。
渡り蟹の濃厚なポタージュの次は、魚料理のブレゼ、トマトフォンデュと共に。地元産の白身魚が白ワインで調理され、魚介の旨味が存分に引き出されている。
そのあとは、肉料理の仔牛フィレ肉のポワレ、マデラ酒のソースを添えて。
どの料理も、特別なロマンティックディナーを彩る最高の品だ。
私は輝く星空を眺めたり、打ち寄せる波の囁きを聞いたり、そして豪勢なディナーを堪能したりと、感嘆の連続である。
やがて濃厚なチーズに赤ワインというマリアージュを楽しんでいるとき、ふいに瑛司は真摯な双眸で私を見つめた。
「だが俺は、九十九夜だろうが千夜だろうが、初夜と変わらない想いでおまえを抱きたい。俺にとって、おまえとのセックスはいつでも新鮮な気持ちで挑んでいる」
私はワイングラスを手にしたまま、目を見開く。
まるで、九十九夜目のプロポーズみたい。
瑛司は初夜からずっとこの先も、千夜を超えても、私を好きでいてくれるんだ……
そのことが、じんわりと心に染みた。まるで温かい水に満たされるように、体の深いところまで浸透する。
「瑛司ったら、もう……恥ずかしいこと言うんだから……」
九十九夜目も、そして千夜目も、私は瑛司に抱かれながら眩い朝陽を見ることができるだろう。
私も、瑛司のことが大好きだから。
デザートを食べてディナーを締め括る頃には、私はまるで魔法にでもかかったように、瑛司から目を離せなくなってしまったのだった。
私たちは見つめ合いながら、南の島のロマンティックな夜を過ごした。
辿り着いたテーブルにはキャンドルの灯火と共に、ディナー用のテーブルセッティングがコーディネートされていた。瑛司に椅子を引いてもらい、着席する。
ふたりきりのロマンティックなディナーを迎えた。初めの料理はなんといっても、テーブルから見渡せる大海原と、その海に沈もうとしている夕陽だ。
うっとりとして夕陽が水平線に沈もうとしている雄大な景色を眺めていると……ふと、足に温かなものがくっつけられていることに気づく。
「ん?」
テーブルの下を覗き込んだ私は目を瞬かせた。
いつのまにか瑛司の長い足が、私の足に絡められている。テーブルは狭いわけではないのに。
私の疑問を察知したかのように、瑛司は悠々と言い放つ。
「これなら両手で食事をしても安心だからな」
「……そうだね」
満足げな瑛司に微苦笑を返す。
まるで私の体温がないと、彼は呼吸すらできないとでも言いたげなほどだ。瑛司の執着愛には白旗を上げてしまう。
そのとき、銀盆を掲げた島のスタッフが音もなく小道を歩いてきた。
私と瑛司の前に置かれたフルートグラスに、シャンパンのボトルから黄金色の液体が注がれる。
瑛司がフルートグラスを掲げたので、私もそれに倣う。
「ふたりの初夜に、乾杯」
「しょ……初夜って……!」
小さな音を立てて、フルートグラスの縁が重ね合わされた。
その刹那、ふたりのグラスに映り込んだ夕日の最後の一欠片が海に溶け落ちる。
平然としている瑛司は優雅な仕草でシャンパンをひとくち含む。
「テタンジェの洗練された味わいは幅広い料理に合うが、今夜のディナーは魚介類をメインにしたのでワインとのマリアージュを楽しもう」
いかにもお金持ちらしい、こだわりのある台詞をなんとなく理解した私は、金の蔓模様が描かれた繊細なフルートグラスを、純白のテーブルクロスの上に置いた。
ふたりきりだけれど、小声で瑛司に問いかける。
「ちょっと瑛司、なんて恥ずかしいこと言うの。私たち、初夜じゃないよ」
婚前旅行ではあるけれど、とうに同棲して、婚約しているのだ。
まるで今夜がふたりが結ばれる初めての夜と、特別な扱いにされたようで、私の頬が朱に染まる。
「俺たちにとっては初めての旅行だから初夜と称してみたのだが、訂正しよう。正確には、九十九夜だ」
「……えっ、そうなの? もしかして、数えてるの?」
「当然だ。俺の病を治すという流れからのセックスを一夜目とカウントして、今夜が九十九夜目だ」
「……すごいね」
瑛司の明晰な頭脳がこんなところにも生かされているんだなぁ……と、私は妙に感心してしまう。何回セックスしたかなんて、覚えていられない。瑛司が明確に数えていることに呆れる一方で、とても嬉しくて。
今夜からは私も、何回目なのかメモ帳に付けておこう……
大粒の星空の下で、仄かな明かりと共にロマンティックディナーに舌鼓を打つ。
冷たい前菜は真鯛のサラダ仕立て。温かい前菜は、カキとムール貝のナージュ仕立て。どちらも新鮮な魚介の出汁が生かされた料理だ。まるで庭園を思わせるような芸術的な盛り付けも美しい。
渡り蟹の濃厚なポタージュの次は、魚料理のブレゼ、トマトフォンデュと共に。地元産の白身魚が白ワインで調理され、魚介の旨味が存分に引き出されている。
そのあとは、肉料理の仔牛フィレ肉のポワレ、マデラ酒のソースを添えて。
どの料理も、特別なロマンティックディナーを彩る最高の品だ。
私は輝く星空を眺めたり、打ち寄せる波の囁きを聞いたり、そして豪勢なディナーを堪能したりと、感嘆の連続である。
やがて濃厚なチーズに赤ワインというマリアージュを楽しんでいるとき、ふいに瑛司は真摯な双眸で私を見つめた。
「だが俺は、九十九夜だろうが千夜だろうが、初夜と変わらない想いでおまえを抱きたい。俺にとって、おまえとのセックスはいつでも新鮮な気持ちで挑んでいる」
私はワイングラスを手にしたまま、目を見開く。
まるで、九十九夜目のプロポーズみたい。
瑛司は初夜からずっとこの先も、千夜を超えても、私を好きでいてくれるんだ……
そのことが、じんわりと心に染みた。まるで温かい水に満たされるように、体の深いところまで浸透する。
「瑛司ったら、もう……恥ずかしいこと言うんだから……」
九十九夜目も、そして千夜目も、私は瑛司に抱かれながら眩い朝陽を見ることができるだろう。
私も、瑛司のことが大好きだから。
デザートを食べてディナーを締め括る頃には、私はまるで魔法にでもかかったように、瑛司から目を離せなくなってしまったのだった。
私たちは見つめ合いながら、南の島のロマンティックな夜を過ごした。
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