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神馬の儀 1
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ひたりと、冷たい石畳を素足で踏みしめる。
一糸纏わぬ裸体を曝したセナは、両脇にラシードとハリルという神の末裔を伴い、地下神殿に姿を現した。
今宵はいよいよ、神馬の儀が執り行われる。
ここに至るまで様々な苦難があったが、ようやく儀式を迎えることができて感無量だ。
すでに禊を済ませて体を清めたセナの心は、儀式へ臨む心構えができている。
白銀のシャルワニを纏うラシードは、白手袋を装着した掌でセナの手を取り、神殿の奥深くへ導いた。
「さあ、神の贄セナよ。快楽を司るイルハーム神に、その身を捧げるのだ」
初めて足を踏み入れた地下神殿は、荘厳さに満ちていた。
あまりの神聖な気配に息を呑む。
透かし彫りのトレーサリーが装飾された壁の向こう、大広間には華麗なモザイクタイルが敷きつめられている。その中央に鎮座している巨大な物には白布がかけられていた。
あれがイルハーム神の授けた神器なのだろう。神馬の儀のときにしか、神器は正体を現さないのだ。
神器を取り囲むようにして、広大な部屋の壁際には精緻な装飾が施された椅子がずらりと並べられている。重厚なその椅子にはいずれも、選ばれたアルファたちが座していた。
全裸の彼らは黙して、部屋の中央に据えられたまだ姿を見せない神器に目を向けている。
椅子にかけた百人のアルファたちが見守るなか、セナは高鳴る鼓動を感じつつ歩を進めた。
いったい、どのような神器なのだろう。
セナの背を遙かに超えた巨大な神器だ。こんなにも大きなものだとは思わなかった。
白布の前までやってきた三人は足を止める。
傍らには神官の役目を果たすファルゼフが待機していた。彼は厳かな礼を捧げる。
「それでは、神の贄さま。イルハーム神の授けた神器をお受け取りください」
ふわりと、かけられていた白布が取り払われた。
おお……と、アルファたちの間から抑えきれない感嘆の声が沸く。
セナは息を呑みながら、いにしえより王家に受け継がれた神器を見上げる。
眩い輝き、精巧な装飾。滑らかな肌は黄金で造られ、瞳は大粒の金剛石で彩られている。
それは巨大な神馬を模した黄金の像だった。
繊細な蹄や雄々しいたてがみは、今にも動き出しそうなほどの躍動感に満ちている。
ただ、生きている馬とは明らかに異なる造形があった。
黄金の神馬には、鞍にあたる場所に、突起が設けられているのだ。
その突起は雄々しく太く、先端の部分が亀頭を思わせる丸い造りで、幹は隆々と天を穿っている。
明らかに、男根を模したものだ。神馬に跨がろうとするならば、この突起を避けては乗れないだろう。
セナは、かぁっと頬を赤らめた。
「あ、あの……もしかしてここに……腰を落とすということでしょうか……?」
神の贄として神器を受け取るには、やはり黄金の神馬に騎乗しなければならない。
そうすると、ずぶりと男根を模したものに貫かれることになる。
神聖な神馬とはいえ、人間の男性以外のものを胎内に挿入するのは初めての試みだ。
「そうだ。この男根はイルハームの象徴である。古代より黄金の神馬が神の男根を預かり、守っているのだ。イルハーム神の男根をその身に収めれば、至上の悦楽と神の加護が得られるであろう」
ラシードの言葉に頷きを返す。
黄金の男根は、イルハーム神自身なのだ。
おそらくこの神器すべてが純金で作成されているのであろう。とてつもない宝玉だ。神の男根を胎内に収めることができるのは、歴代の贄のみ。
ふたりに手を取られて用意された階段を上り、セナは神馬の前に辿り着く。
ここからは、部屋全体がよく見渡せた。
神馬の頭の先には、石壁がくり抜かれた台座にイルハーム神の像が佇んでいる。神の右手の甲には、セナの下腹にあるものと同じ、真紅の淫紋が刻まれていた。
見つめ合う神と神馬。そして神馬に跨がろうとする神の贄を守る百人のアルファたち。
神の末裔たちはセナを送り届けると、イルハーム神の像まで歩んでいった。神像の傍らに立った彼らは、こちらに顔を向ける。神の代行者として、神聖な儀式を監視するために。
ラシードは腕を高々と掲げる。
一糸纏わぬ裸体を曝したセナは、両脇にラシードとハリルという神の末裔を伴い、地下神殿に姿を現した。
今宵はいよいよ、神馬の儀が執り行われる。
ここに至るまで様々な苦難があったが、ようやく儀式を迎えることができて感無量だ。
すでに禊を済ませて体を清めたセナの心は、儀式へ臨む心構えができている。
白銀のシャルワニを纏うラシードは、白手袋を装着した掌でセナの手を取り、神殿の奥深くへ導いた。
「さあ、神の贄セナよ。快楽を司るイルハーム神に、その身を捧げるのだ」
初めて足を踏み入れた地下神殿は、荘厳さに満ちていた。
あまりの神聖な気配に息を呑む。
透かし彫りのトレーサリーが装飾された壁の向こう、大広間には華麗なモザイクタイルが敷きつめられている。その中央に鎮座している巨大な物には白布がかけられていた。
あれがイルハーム神の授けた神器なのだろう。神馬の儀のときにしか、神器は正体を現さないのだ。
神器を取り囲むようにして、広大な部屋の壁際には精緻な装飾が施された椅子がずらりと並べられている。重厚なその椅子にはいずれも、選ばれたアルファたちが座していた。
全裸の彼らは黙して、部屋の中央に据えられたまだ姿を見せない神器に目を向けている。
椅子にかけた百人のアルファたちが見守るなか、セナは高鳴る鼓動を感じつつ歩を進めた。
いったい、どのような神器なのだろう。
セナの背を遙かに超えた巨大な神器だ。こんなにも大きなものだとは思わなかった。
白布の前までやってきた三人は足を止める。
傍らには神官の役目を果たすファルゼフが待機していた。彼は厳かな礼を捧げる。
「それでは、神の贄さま。イルハーム神の授けた神器をお受け取りください」
ふわりと、かけられていた白布が取り払われた。
おお……と、アルファたちの間から抑えきれない感嘆の声が沸く。
セナは息を呑みながら、いにしえより王家に受け継がれた神器を見上げる。
眩い輝き、精巧な装飾。滑らかな肌は黄金で造られ、瞳は大粒の金剛石で彩られている。
それは巨大な神馬を模した黄金の像だった。
繊細な蹄や雄々しいたてがみは、今にも動き出しそうなほどの躍動感に満ちている。
ただ、生きている馬とは明らかに異なる造形があった。
黄金の神馬には、鞍にあたる場所に、突起が設けられているのだ。
その突起は雄々しく太く、先端の部分が亀頭を思わせる丸い造りで、幹は隆々と天を穿っている。
明らかに、男根を模したものだ。神馬に跨がろうとするならば、この突起を避けては乗れないだろう。
セナは、かぁっと頬を赤らめた。
「あ、あの……もしかしてここに……腰を落とすということでしょうか……?」
神の贄として神器を受け取るには、やはり黄金の神馬に騎乗しなければならない。
そうすると、ずぶりと男根を模したものに貫かれることになる。
神聖な神馬とはいえ、人間の男性以外のものを胎内に挿入するのは初めての試みだ。
「そうだ。この男根はイルハームの象徴である。古代より黄金の神馬が神の男根を預かり、守っているのだ。イルハーム神の男根をその身に収めれば、至上の悦楽と神の加護が得られるであろう」
ラシードの言葉に頷きを返す。
黄金の男根は、イルハーム神自身なのだ。
おそらくこの神器すべてが純金で作成されているのであろう。とてつもない宝玉だ。神の男根を胎内に収めることができるのは、歴代の贄のみ。
ふたりに手を取られて用意された階段を上り、セナは神馬の前に辿り着く。
ここからは、部屋全体がよく見渡せた。
神馬の頭の先には、石壁がくり抜かれた台座にイルハーム神の像が佇んでいる。神の右手の甲には、セナの下腹にあるものと同じ、真紅の淫紋が刻まれていた。
見つめ合う神と神馬。そして神馬に跨がろうとする神の贄を守る百人のアルファたち。
神の末裔たちはセナを送り届けると、イルハーム神の像まで歩んでいった。神像の傍らに立った彼らは、こちらに顔を向ける。神の代行者として、神聖な儀式を監視するために。
ラシードは腕を高々と掲げる。
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