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王の寵愛 1
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「なんだと? まことか」
驚きの声を上げたラシードは眉を跳ね上げる。セナも目を見開いて、ふたりを見上げた。
口淫の最中は感じてしまい、下腹の様子をつぶさに観察していたわけではなかったので、淫紋が動いていたとは全く知らなかった。
「ただし、一ミリ程度ですが」
「……見間違いではないのか?」
「いえ。私の目に狂いはございません。セナ様が快感を強く感じられたとき、わずかに淫紋は動きました」
ファルゼフは強い光を宿した双眸で、ラシードを見返した。彼には絶対の自信があるようだが、たとえ事実だとしても、一ミリ程度では誤差のようなものだ。
セナは、がっかりとして肩を落とす。
ファルゼフの双眸を厳しい目で見据えたラシードは、重々しく言い含めた。
「虚言ではないようだな。よかろう。私が指名した宰相の言葉を信じよう」
「恐縮にございます」
「ひとつ言っておくことがある。私の許可なくセナに触れるな。ファルゼフが王家の血を引いていることは無論承知している。そなたにも思うところはあるだろう。だが、行動を起こす前に私の承諾を取れ。今回のことは、淫紋を動かした功績を讃えて不問にする」
ファルゼフは己の野心のためにセナを強引に抱こうとしたのだ。
もしセナを孕ませて子が産まれれば、ファルゼフは揺るぎない地位を得られるかもしれない。将来の国王の父となれば、没落した家も再興できるだろう。
ラシードの言葉で、セナは薄らとそのことを理解した。
そういった野心についてセナは是非を唱えられないけれど、ラシードとしては、許可さえ取れば容認しても良いというような見解だった。
ファルゼフは床に平伏して王への忠誠を示した。
「ありがたき幸せ。今後は陛下の承諾を必ず得ます。わたくしの地位も命も、もとより陛下の掌中にございます」
「わかっていればよい」
ラシードは軽く手を振る。立ち上がったファルゼフは部下を伴い、部屋を退出した。
扉が閉められて、執務室には静寂が満ちる。
部屋にはラシードとセナのふたりきりになった。
ラシードの纏うカンドゥーラの衣擦れの音が響き、セナはびくりと肩を跳ねさせる。
ふいに、温かくて大きな掌が頬を包んだ。
その熱と感触に、驚いたセナは顔を上げる。
「あ……」
「なんという顔をしているのだ、セナ」
心配げな表情を浮かべるラシードに間近から覗き込まれる。
自分はどんな顔をしているというのだろう。顔が赤くなっている自覚はあるのだけれど。
ふと目線を落とせば、ラシードは長椅子に座るセナの足元に跪いていた。
たとえ室内に誰もいなくとも、王が跪いたりしてはいけないのに。
「いけません、ラシードさま。王が膝を折ったりしては……あっ……」
慌てて立ち上がろうとしたセナは均衡を崩してしまう。倒れそうになった拍子に、ラシードの力強い腕に包まれた。
「んっ……」
ぎゅっと抱き竦められて、濃密な雄の香りに包まれた。
セナの体の芯が、きゅうと甘く引き絞られる。
ひくりと戦慄いた蕾の奥から淫液が滴り、腿を伝い落ちていく。
「あ……兄さま、兄さま……」
腕を回してラシードの逞しい背に縋りつく。
今は離れたくない。ぎゅっと抱いていてほしい。
ゆっくりとセナの体は押し倒されて、長椅子に横たえられた。
ラシードは大きな掌で、セナの額に落ちかかる髪を掻き上げる。
「熱はないようだが……まさか、発情しているのか?」
「んん……ごめんなさい、兄さま。僕……感じて……」
体が熱くてたまらない。息が浅く忙しい。体の奥からは淫液が止めどなく溢れてきていた。
淫紋が、熱い。
もしかして、発情期が訪れてしまったのだろうか。
「謝ることはない。かなり辛そうだな。今、医師を呼ばせよう」
身を起こしたラシードの熱が離れていってしまう。
咄嗟にセナは、腕に縋りついた。
「お願い、兄さま、離れないで。僕を、抱いてください。兄さまの……今すぐにほしい……」
「セナ……」
ラシードが今すぐ欲しい。逞しい雄芯で、ぐずぐずに蕩けた花筒を貫いてほしい。
もうそれしか考えられない。
濡れた瞳で見上げれば、ラシードの精悍な顔が傾き、柔らかい唇を吸い上げられた。
夢中で雄々しい唇を吸い返すと、ぬるりと厚い舌に歯列を割られる。
「んっ……んん……ふ……」
濡れた舌を絡めて、擦り合わせる。それだけでもう、ずくりと体の芯が疼いた。
ちゅ、ちゅく……と淫らな水音が密やかに響く。
驚きの声を上げたラシードは眉を跳ね上げる。セナも目を見開いて、ふたりを見上げた。
口淫の最中は感じてしまい、下腹の様子をつぶさに観察していたわけではなかったので、淫紋が動いていたとは全く知らなかった。
「ただし、一ミリ程度ですが」
「……見間違いではないのか?」
「いえ。私の目に狂いはございません。セナ様が快感を強く感じられたとき、わずかに淫紋は動きました」
ファルゼフは強い光を宿した双眸で、ラシードを見返した。彼には絶対の自信があるようだが、たとえ事実だとしても、一ミリ程度では誤差のようなものだ。
セナは、がっかりとして肩を落とす。
ファルゼフの双眸を厳しい目で見据えたラシードは、重々しく言い含めた。
「虚言ではないようだな。よかろう。私が指名した宰相の言葉を信じよう」
「恐縮にございます」
「ひとつ言っておくことがある。私の許可なくセナに触れるな。ファルゼフが王家の血を引いていることは無論承知している。そなたにも思うところはあるだろう。だが、行動を起こす前に私の承諾を取れ。今回のことは、淫紋を動かした功績を讃えて不問にする」
ファルゼフは己の野心のためにセナを強引に抱こうとしたのだ。
もしセナを孕ませて子が産まれれば、ファルゼフは揺るぎない地位を得られるかもしれない。将来の国王の父となれば、没落した家も再興できるだろう。
ラシードの言葉で、セナは薄らとそのことを理解した。
そういった野心についてセナは是非を唱えられないけれど、ラシードとしては、許可さえ取れば容認しても良いというような見解だった。
ファルゼフは床に平伏して王への忠誠を示した。
「ありがたき幸せ。今後は陛下の承諾を必ず得ます。わたくしの地位も命も、もとより陛下の掌中にございます」
「わかっていればよい」
ラシードは軽く手を振る。立ち上がったファルゼフは部下を伴い、部屋を退出した。
扉が閉められて、執務室には静寂が満ちる。
部屋にはラシードとセナのふたりきりになった。
ラシードの纏うカンドゥーラの衣擦れの音が響き、セナはびくりと肩を跳ねさせる。
ふいに、温かくて大きな掌が頬を包んだ。
その熱と感触に、驚いたセナは顔を上げる。
「あ……」
「なんという顔をしているのだ、セナ」
心配げな表情を浮かべるラシードに間近から覗き込まれる。
自分はどんな顔をしているというのだろう。顔が赤くなっている自覚はあるのだけれど。
ふと目線を落とせば、ラシードは長椅子に座るセナの足元に跪いていた。
たとえ室内に誰もいなくとも、王が跪いたりしてはいけないのに。
「いけません、ラシードさま。王が膝を折ったりしては……あっ……」
慌てて立ち上がろうとしたセナは均衡を崩してしまう。倒れそうになった拍子に、ラシードの力強い腕に包まれた。
「んっ……」
ぎゅっと抱き竦められて、濃密な雄の香りに包まれた。
セナの体の芯が、きゅうと甘く引き絞られる。
ひくりと戦慄いた蕾の奥から淫液が滴り、腿を伝い落ちていく。
「あ……兄さま、兄さま……」
腕を回してラシードの逞しい背に縋りつく。
今は離れたくない。ぎゅっと抱いていてほしい。
ゆっくりとセナの体は押し倒されて、長椅子に横たえられた。
ラシードは大きな掌で、セナの額に落ちかかる髪を掻き上げる。
「熱はないようだが……まさか、発情しているのか?」
「んん……ごめんなさい、兄さま。僕……感じて……」
体が熱くてたまらない。息が浅く忙しい。体の奥からは淫液が止めどなく溢れてきていた。
淫紋が、熱い。
もしかして、発情期が訪れてしまったのだろうか。
「謝ることはない。かなり辛そうだな。今、医師を呼ばせよう」
身を起こしたラシードの熱が離れていってしまう。
咄嗟にセナは、腕に縋りついた。
「お願い、兄さま、離れないで。僕を、抱いてください。兄さまの……今すぐにほしい……」
「セナ……」
ラシードが今すぐ欲しい。逞しい雄芯で、ぐずぐずに蕩けた花筒を貫いてほしい。
もうそれしか考えられない。
濡れた瞳で見上げれば、ラシードの精悍な顔が傾き、柔らかい唇を吸い上げられた。
夢中で雄々しい唇を吸い返すと、ぬるりと厚い舌に歯列を割られる。
「んっ……んん……ふ……」
濡れた舌を絡めて、擦り合わせる。それだけでもう、ずくりと体の芯が疼いた。
ちゅ、ちゅく……と淫らな水音が密やかに響く。
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