淫神の孕み贄

沖田弥子

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受胎の儀 1

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男根の形を模した金の棒は、本物のそれよりは細身だが、隆々と天を突いている。

「贄さま。おみ足をお開きください」

セナは羞恥を押し殺して、立ったまま肩幅ほど足を開く。屈んだ召使いが、ゆっくりと秘所に黄金の棒を挿入していく。

「ん……んぅ……」

細身とはいえ、硬い無機質の棒に隘路を押し開かれて、違和感を散らすのに苦慮する。根元まで押し込まれると、挿入を留めておくための金具が付けられた。
三つの神具は鎖により、すべてがつながれている。快楽とは個々のものではなく、連鎖によって引き出されるものであると考えられているからだ。
神具を装着したセナの体は黄金の鎖に彩られて光り輝いた。鎖が避けられている淫紋は真紅の血のごとく浮かび上がり、禍々しいほどの存在感を示している。

「お支度が調いました」

召使いが待機していた神官に告げる。
司祭服を身に纏う神官は音もなく歩み、神殿にセナを導いた。
深夜の神殿は物音ひとつしない。そこかしこに掲げられた燭台の灯が、イルハームの神像を闇の中に浮かび上がらせていた。

「神の像より、東から回り三周してください。どうかイルハーム神のご加護がありますように」

両手を掲げながら低頭した神官は傍らに控える。セナは神の像を翡翠色の眸で見上げた。
神の右手に刻まれた淫紋。セナの下腹と同じ紋様。これが今宵も躍るのだろうか。
イルハームに心の中で祈りを捧げてから、神殿内をひとり静かに歩む。神像と祭壇の置かれた広間は四角形だが、端を歩けば相当な距離があった。
歩くたびに黄金の鎖はしゃらりと鳴り、胸を飾る三日月の装飾が乳首に擦れてしまう。花芯に嵌められたリングも同様に、つながれた鎖が動くたびに刺激を与える。それらが得も言われぬ快感を呼び覚ましてしまい、セナは浅い息を継いだ。花筒に押し込まれた金の棒は足を繰り出すたびに硬く冷たく身を責め苛んだ。
一周しただけで息が上がってしまう。けれど休むことは許されない。額からじわりと汗が滲む。

「もう……いやだ……」

つい零れてしまった呟きに、慌てて首を振る。大事な儀式の最中なのに、罰当たりなことを考えてはいけない。これはイルハーム神の与えてくれた神具なのだから。
セナの体の奥深くから、淫らな愛液が滲み出した。腹の底が、なんだか熱い。
歩きながらふと下腹を見遣ると、赤い淫紋の端がむずりと蠢き出していた。

「え……もう?」

体は既に快楽を感じ始めている。淫らな神具を装着した状態で歩けば、摩擦により愛撫を施されたような疼きを得てしまう。神殿内を三周するという儀式も、贄を快楽に浸して子を孕ませやすくするためなのだ。
受胎の儀は神の末裔の寝所に贄が赴いて、その身に精を受ける。それは新月から月が満ちて満月になり、また次の新月になるまで続けられる。つまりひと月ほど、毎晩ハリルとラシードの双方から子種を注がれるのだ。そうして受胎すれば儀式は成功する。
どうにか三周を終えたセナの顔は苦痛と快楽が入り交じり、足は震えていた。見届けた神官の案内により、アーチをくぐり神殿内の一室へ向かう。

「まずは、ハリルさまのお待ちになる寝所からでございます」

月の満ち欠けにより、始めに訪れる相手が決められるらしい。ラシードとハリルは神殿内部にある各々の受胎の室で、贄が訪れるのを待っている。
重厚な受胎の室の扉を前にして、セナは足を竦ませる。
ハリルは苦手だった。
食堂で床に這わせられたことや奴隷市場での一件にこだわっているわけではないが、気品溢れるラシードとは違い、どこか粗野で奔放な印象がある。ラシードがいるときは分を弁えていても、ふたりきりになったら何をされるか分からないという怯えが芽生えた。
奉納の儀で散々男たちに嬲られはしたが、あれで度胸などつくはずもない。分かったことは、男によって抱き方が異なるということくらいだ。話しかけながら優しく擦り上げる人もいれば、無言で乱暴に突いてくる者もいる。
騎士団長であるハリルは他の誰よりも体躯が良く、力も秀でていそうだ。乱暴そうな予想しかできなかった。壊されてしまうかもしれない。未だ触れられていないので恐怖心だけが膨れ上がる。
軋んだ音を立てて扉が開かれた。中は深淵の闇がぽっかりと口を開けている。

「どうぞ、贄さま」

足が、前へ進まない。神官はセナが入室するのを静かに待っている。
どうしても勇気が出ない。唇を戦慄かせるセナは呑み込まれそうな闇を前にして怯えた。
突如、闇の中から逞しい腕が伸びてきた。
華奢なセナの体を引き寄せて、瞬く間に深淵へ連れ去ってしまう。

「ああっ」

ばたんと音を立てて扉が閉まる。
暗闇の中でもがいたセナの体は、熱い腕にきつく抱き込まれた。闇雲に掻いた手が逞しい胸板に触れる。

「んっ、んう」

熱いもので唇が塞がれた。
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