淫神の孕み贄

沖田弥子

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王の夜伽 4

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「やぁあ……、あ……っあ、ラシードさまぁ、ゆるして……」

もう、三本もの指に花筒は犯されている。経験したことのない快感を容赦なく与えられて、腰骨が軋むように甘く戦慄いた。感じすぎて苦しくて、わけがわからなくなる。
三本の指は執拗に感じるところを擦り上げていく。すっかり綻んだ花筒は、やわやわと指を包み込んだ。
ふいに、ラシードは指を引き抜く。
終わったのかな……?
眦を快楽の涙に濡らしたセナは、解放されて安堵の息を吐いた。
けれどラシードが前を寛げて硬くそそり立つ怒張を取り出すと、彼の意図を察して眸を見開く。

「あ、あの……ラシードさまの男根を、僕のお腹の中に、入れるのですか……?」

おずおずと訊ねると、ラシードは何か可笑しかったのか口元を緩ませた。うっとりとした笑みを浮かべてセナの太腿を撫で上げながら、後孔に先端をぴたりと宛がう。

「そうだ。私に抱かれて、その身に精を受け止めるのだ」

ラシードは明確な意思でセナを抱こうとしているのだ。孕むかもしれないこの身に、精を注ごうとしている。
ぐちゅ、と硬い切っ先が推し進められ、蕾を捲り上げようとする。

「んっ、んぅ……」

小さな蕾は、大きすぎる雄芯に苦慮して口をいっぱいに拡げた。

「あ……あ……」
「きついな……。息を詰めるな。深呼吸をしろ」

言われたとおりに深く息を吸い込んで吐き出す。すると力が抜けた瞬間に、ぐう、と押し込まれた先端が肉環をくぐり抜ける。硬い楔は誰も踏み込んだことのない狭い花筒をゆっくりと、圧倒的な質量をもって掻き分けていく。

「あ、あ、はいって……あぅ、い、いたい……ラシードさまぁ……」

長大な熱杭に犯されて、初めての侵入を許した花筒は軋んだ悲鳴を上げる。胃がせり上がるような圧迫感に呼吸は乱れ、細い腕は縋るものを求めて彷徨い、シーツを掻いた。

「私を、すべて受け入れろ、セナ」

額に汗が滲み、眦には涙が浮かぶ。苦しくて胸を喘がせているのに、身の内の熱は昂ぶっていく。

「あ……は……はぁ……っ、はっ……」

ずくり、ずくりと腰を推し進められ、熱杭は確実にセナの体を貫いていく。もうどれくらいラシードの男根を挿入されたのか分からない。
けれどラシードは決して強引に割り開くことはせず、セナの様子を見ながら徐々に腰を進めていった。
そのもどかしさが悦楽の地獄でもあり、優しい拘束でもあった。
やがて、ずんと腰奥に響く重い衝撃があり、セナは喉を仰け反らせる。

「入ったぞ。私の男根が、セナの体にすべて」
「あ……はぁ……ラシードさまが、僕の中に、ぜんぶ……」

王の体の、もっとも大事な部分が、自分の腹に収められている。
それは途方もないことだった。セナは今、この国の命運をすべて握っているかのような錯覚を覚えた。

「ラシードさま……僕の中は、心地良いですか? 痛くないですか?」

怖れではない。優越感でもない。ただ、腹に収められた王の男根を愛したい。
浅い息を継ぎながら訊ねるセナに、ラシードは驚いたように眸を見開く。

「余裕があるのだな。いや……そなたの体には余裕などないようだ。こんなにも花筒は引き絞られているのだから」

ずりゅ、と雄芯を引き抜けば、内壁は縋るように蠢く。また奥まで押し込まれて、軋む花筒は太い楔を抱き込む。
初めて割り開かれた体は悲鳴を上げていた。
けれどラシードを受け入れたいというセナの心は痛みを堪え、蕾と花筒は懸命に雄を銜え込もうとする。

「痛いか……?」
「あ、あ……でも僕は、ラシードさまに気持ち良くなっていただきたいんです。僕の中で、達してください。ラシードさまの精をください」
「セナ……私をそのように煽るとは……」

体を倒したラシードに両手を取られ、指を絡められる。まるで恋人同士が手をつなぐような仕草だ。セナがそっとラシードの手を握り返すと、唇を塞がれる。

「ん……」

優しい口づけに酔いしれる。雄々しい唇はしっとりとセナの紅い唇を覆い、柔らかく下唇を食む。
その間にも腰を遣うラシードは、初心な花筒を逞しい雄芯で擦り上げた。
ゆっくりと、撫でるように花筒は蹂躙されていく。
痺れるような快楽がじわりと腰奥に滲み、セナは口づけられたまま背筋を反らせた。

「んっ、あ、は、ぁん、ラシードさまぁ」

痛みだけではない。性交による快感が全身に浸透していく。
体が熱くてたまらない。花筒に押し込まれた雄芯は幾度も内壁を優しく、ときに強く擦り、硬い切っ先で奥を抉る。そのたびに身を焦がすような愉悦があとからあとから湧き起こった。

「セナ……そなたの中は素晴らしく心地良いぞ」

ずちゅ、ずちゅと結合部からいやらしい水音が響く。力強く穿たれながら唇を塞がれて、セナは懸命に舌を絡めて応えた。
上の口も下の口も熱く猛ったものに犯され、頭の芯から蕩けていく。

「んぅ、ふ、んふぅ、ぁ、んぁ、ん」

いつしかセナも男の腰遣いに合わせて、淫らに腰を揺らめかせていた。
ふたりの腹で擦られる花芯は、ぽたぽたと白蜜を零している。
腰奥から背筋を駆け上がってくる激しい疼きに、セナは体を震わせた。

「あっ、あっ、あ――……っ」

白蜜が弾けて、男を銜え込んだ花筒がきゅうと引き絞られる。低い呻き声を漏らしたラシードの楔は大きく膨れ上がり、奥深くで爆ぜた。
濃厚な白濁は、しっとりと塗り込められるように花筒を満たしていく。

「……あ、ぁん……」

頭の中は白く染め上げられ、体の奥は放たれた精で熱く濡れている。
極めた余韻に身を委ねていたセナは、自らの体の異変に気がついた。
なんだか、下腹が熱い。
まるで放たれた精が染みて、身の内を焦がしているようだ。火傷しそうなほどの熱を感じる。
下腹に目をむければ、小さな紋様を中心として光が放たれていた。

「えっ!?」

仄かな光はやがて紅い焔を纏い、白い肌に刻印を刻みつけていく。
まるで火で炙られているように見えるが、不思議なことに痛みはない。幼い頃からあった蛇のような紋様は新たな形に変化していった。
やがて炎のような息吹は収まり、紋様は肌に落ち着いた。
固唾を呑んで奇蹟を見守っていたラシードは満足げに微笑む。

「これこそ、イルハームの淫紋だ。そなたは正式に神の贄となった」

瞠目して紋様とラシードの顔を交互に見遣る。
新たに下腹に刻まれた紋様は、イルハーム神が手の甲に付けているものと全く同じ形状をしていた。
――僕が、神の贄。
生れたときから刻まれていたこの紋様は、イルハームの贄となるための刻印だったのだ。片鱗だったそれは、王であるラシードの精を受けて開花した。
血のように赤い淫紋を眼に映しながら、セナは己の運命に背を震わせることしかできなかった。
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