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奴隷市場 2
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客は見るだけでなく、商品を味見できるのだ。
足を掲げて整列するオメガを下品な笑みで眺めた客が、早速腕を伸ばした。
「どれ。ひとりずつ試してやるかな」
つぷり、つぷりと、濡れた水音が耳に届く。セナは肩を震わせて、襲い来る恐怖に耐えた。
客は味見と称して、オメガに触れることができる。ただし指以外で触ることは許されない。
様々な客に代わる代わる下半身を弄られる行為は日没まで続けられ、終わる頃には花芯と後孔はすっかり腫れ上がり、拘束された両足は痺れてしまう。その間、食事はもちろん水を飲むことも許されず恥辱に耐えなければならないので、本当に辛い。
「アルファさまぁ、俺を買ってください。何でもします、あなた様の肉棒をしゃぶらせてください!」
セナの隣にいる同僚のオメガが甲高い声を上げ、腰を振って客を誘う。いつもセナに仕事を押しつけている彼は、店主の傍は居心地が良いのかと思ったが、客を誘うところを見るとそういうわけではないらしい。
少なくとも客が購入を決めた時点で、この地獄からは解放される。水を飲みたいがために熱心に客に愛想を振りまくオメガたちの声で広場は賑わった。食事も水も与えない奴隷商人の意図は市場を盛り上げることにあるようだ。
セナは誰にも買ってもらえないことは分かっているので、ひたすら黙って日没まで耐えるだけだ。
太陽はじりじりと照りつけ、次第に体力を奪っていく。まだ朝なのに、既に喉はひりついていた。
ひとりひとりの後孔に指を挿入していた客は、いやらしい笑いを浮かべて同僚の前にやってくる。
「おまえは儂の肉棒をしゃぶりたいのか?」
「はいっ。どうか俺にアルファ様のザーメンをぶちまけてください」
この場ではそういった行為は許可されないので、購入してほしいというアピールだが、むっとした客は唇をねじ曲げた。
「なんだ。おまえもアルファ狙いか。儂はベータだ」
「あっ、いえ、ベータ様でもいいです。とにかく買ってください」
「オメガのくせに馬鹿にしおって。お仕置きだ!」
後孔に指をねじ込んで、乱暴に掻き回す猥雑な音が広場に響き渡る。あひいい……という悲鳴とも嬌声ともつかない同僚の喘ぎに、居合わせた客たちは手を叩いて喜んでいた。
こんなことが平然と繰り返される奴隷市場は、どこか狂った世界なのではないか。
セナは絶望して唇を噛みしめる。
ぐったりした同僚からようやく指を引き抜いた客は、次にセナに狙いを定めた。
「さあて、次のお仕置きはおまえだ」
何もしていないが、客が楽しむ余興としていたぶられる。セナは身を固くして、ぎゅっと瞼を閉じた。
だが指を突き入れようとした客の動きが止まる。彼が見下ろしたセナの下腹部には、血のように紅い紋様が刻まれていた。
「入れ墨か……? 蛇のような形だ。気味が悪いな」
客は眉をひそめて身を引いた。
セナが誰にも買われない理由が、この紋様にある。
小指ほどの長さなのだが、くねる形は横たわる蛇を彷彿とさせるので、花筒に挿入すれば呪われるような気がするのだという。後孔の入り口だけを弄られることはあっても、奥深くまで指を挿れようという客はいなかった。もちろんセナを購入しようという客は皆無だ。
オメガは決して安価ではない。馬車一台分くらいの値段である。愛玩用でなく使役させる目的なら、できるだけ屈強なオメガを客は選んでいく。華奢で痩せ細っているセナは使役にも適さず、紋様の不気味さから愛玩用にもしづらいので、いつも売れ残っていた。
「買う気がないなら、さっさと退け」
聞き覚えのあるような声音に瞼を開く。割り込んできた新たな客はなんと、昨日食堂でセナを床に這わせた男だった。王族のアルファで騎士団長のハリルと聞いたが、そんなに高い身分の人が奴隷市場で自らオメガを購入するなんて意外に思えた。
お仕置きを楽しんでいたベータの男は舌打ちをして場を譲る。
今度はこの男に見世物としていたぶられるのだろうか。
だがハリルは、じっくりとセナの下腹部に注視した。
「不思議な紋様だな。見覚えがあるような気がするが……」
そっと指先で紋様に触れられると、焼けつくような疼きが走る。
「ひっ……、や、さわらないで……」
びくん、と腰を跳ねさせる。男の喉仏がごくりと上下した。
客に触るなだなんて、奴隷商人に鞭打たれてもおかしくない。けれどハリルは怒る様子もなく、紋様から手を放すと今度は後ろの蕾に触れてきた。
晒された蕾を撫で上げる指は乱暴ではないけれど、男の双眸はお仕置きや悪戯を仕掛けようという卑しさの色はなく、獲物を狩る猛禽類のごとく炯々と光っている。
怖い。
この男にだけは買われたくない。触られたくない。
「やっ、いや、ゆび、挿れないで……!」
セナは必死に首を振って無駄な抵抗を試みた。
ぐっと太い指が蕾に挿入される寸前、新たな人影に太陽が遮られる。
足を掲げて整列するオメガを下品な笑みで眺めた客が、早速腕を伸ばした。
「どれ。ひとりずつ試してやるかな」
つぷり、つぷりと、濡れた水音が耳に届く。セナは肩を震わせて、襲い来る恐怖に耐えた。
客は味見と称して、オメガに触れることができる。ただし指以外で触ることは許されない。
様々な客に代わる代わる下半身を弄られる行為は日没まで続けられ、終わる頃には花芯と後孔はすっかり腫れ上がり、拘束された両足は痺れてしまう。その間、食事はもちろん水を飲むことも許されず恥辱に耐えなければならないので、本当に辛い。
「アルファさまぁ、俺を買ってください。何でもします、あなた様の肉棒をしゃぶらせてください!」
セナの隣にいる同僚のオメガが甲高い声を上げ、腰を振って客を誘う。いつもセナに仕事を押しつけている彼は、店主の傍は居心地が良いのかと思ったが、客を誘うところを見るとそういうわけではないらしい。
少なくとも客が購入を決めた時点で、この地獄からは解放される。水を飲みたいがために熱心に客に愛想を振りまくオメガたちの声で広場は賑わった。食事も水も与えない奴隷商人の意図は市場を盛り上げることにあるようだ。
セナは誰にも買ってもらえないことは分かっているので、ひたすら黙って日没まで耐えるだけだ。
太陽はじりじりと照りつけ、次第に体力を奪っていく。まだ朝なのに、既に喉はひりついていた。
ひとりひとりの後孔に指を挿入していた客は、いやらしい笑いを浮かべて同僚の前にやってくる。
「おまえは儂の肉棒をしゃぶりたいのか?」
「はいっ。どうか俺にアルファ様のザーメンをぶちまけてください」
この場ではそういった行為は許可されないので、購入してほしいというアピールだが、むっとした客は唇をねじ曲げた。
「なんだ。おまえもアルファ狙いか。儂はベータだ」
「あっ、いえ、ベータ様でもいいです。とにかく買ってください」
「オメガのくせに馬鹿にしおって。お仕置きだ!」
後孔に指をねじ込んで、乱暴に掻き回す猥雑な音が広場に響き渡る。あひいい……という悲鳴とも嬌声ともつかない同僚の喘ぎに、居合わせた客たちは手を叩いて喜んでいた。
こんなことが平然と繰り返される奴隷市場は、どこか狂った世界なのではないか。
セナは絶望して唇を噛みしめる。
ぐったりした同僚からようやく指を引き抜いた客は、次にセナに狙いを定めた。
「さあて、次のお仕置きはおまえだ」
何もしていないが、客が楽しむ余興としていたぶられる。セナは身を固くして、ぎゅっと瞼を閉じた。
だが指を突き入れようとした客の動きが止まる。彼が見下ろしたセナの下腹部には、血のように紅い紋様が刻まれていた。
「入れ墨か……? 蛇のような形だ。気味が悪いな」
客は眉をひそめて身を引いた。
セナが誰にも買われない理由が、この紋様にある。
小指ほどの長さなのだが、くねる形は横たわる蛇を彷彿とさせるので、花筒に挿入すれば呪われるような気がするのだという。後孔の入り口だけを弄られることはあっても、奥深くまで指を挿れようという客はいなかった。もちろんセナを購入しようという客は皆無だ。
オメガは決して安価ではない。馬車一台分くらいの値段である。愛玩用でなく使役させる目的なら、できるだけ屈強なオメガを客は選んでいく。華奢で痩せ細っているセナは使役にも適さず、紋様の不気味さから愛玩用にもしづらいので、いつも売れ残っていた。
「買う気がないなら、さっさと退け」
聞き覚えのあるような声音に瞼を開く。割り込んできた新たな客はなんと、昨日食堂でセナを床に這わせた男だった。王族のアルファで騎士団長のハリルと聞いたが、そんなに高い身分の人が奴隷市場で自らオメガを購入するなんて意外に思えた。
お仕置きを楽しんでいたベータの男は舌打ちをして場を譲る。
今度はこの男に見世物としていたぶられるのだろうか。
だがハリルは、じっくりとセナの下腹部に注視した。
「不思議な紋様だな。見覚えがあるような気がするが……」
そっと指先で紋様に触れられると、焼けつくような疼きが走る。
「ひっ……、や、さわらないで……」
びくん、と腰を跳ねさせる。男の喉仏がごくりと上下した。
客に触るなだなんて、奴隷商人に鞭打たれてもおかしくない。けれどハリルは怒る様子もなく、紋様から手を放すと今度は後ろの蕾に触れてきた。
晒された蕾を撫で上げる指は乱暴ではないけれど、男の双眸はお仕置きや悪戯を仕掛けようという卑しさの色はなく、獲物を狩る猛禽類のごとく炯々と光っている。
怖い。
この男にだけは買われたくない。触られたくない。
「やっ、いや、ゆび、挿れないで……!」
セナは必死に首を振って無駄な抵抗を試みた。
ぐっと太い指が蕾に挿入される寸前、新たな人影に太陽が遮られる。
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