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伯爵家の花嫁 2

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「不満なんてありません……。僕は、ずっと、若さまの花嫁になりたかったんです」
「そうだろう。もう一生離さないぞ」

 嬉しそうに表情を綻ばせた晃久に抱き直された体は、快感を誘うように背をなぞられる。
 媚薬の残滓が残された体は、ぴくりと跳ねた。

「あ……っ」
「薬を使われたな。感じるのか?」
「大丈夫です。体に害はないそうなので……んんっ」

 背筋を撫で下ろされて、明確な快感を得た体は晃久の腕の中で身じろぐ。それはまるで誘うような仕草で、仰け反った顎に晃久は口づけを落とした。

「鎮めてやる」

 抱きしめた体をゆっくりと倒され、わずかに身を覆っていたシャツを脱がされる。一糸纏わぬ姿で横たわる澪を眇めた双眸で見下ろしながら、晃久は自らも衣服を脱ぎ捨てた。
 薄らと筋肉を纏った逞しい雄の肉体を目の当たりにして、澪はごくりと息を呑む。これほど美麗な肉体に今まで抱かれていたのかと思うと、今さらながら興奮した。
 ベッドに乗り上げた晃久は澪の体を抱きしめる。裸の胸が合わされて、彼の熱い体温を感じた。

「あ……晃久さま」

 逞しい背に腕を回して、愛しい男をしっかりと抱き留める。
 晃久の雄々しい体と香りに包まれていると、心から安心できた。

「澪と想いが通じ合って初めての夜だ。大切に抱く」

 もう何度も体を重ねたというのに、晃久は今宵が特別な閨だと言ってくれる。
 強引に抱かれても粗野を感じたことなんて一度もないけれど、大切にしたいという彼の想いが心に染み入った。

「はい……。抱いてください。僕の、旦那さま」
「澪……俺の澪」

 深い口づけが交わされる。陶然として晃久の熱い舌を受け入れた。
 丁寧に口腔内をまさぐられ、互いの舌を絡め合う。そうするともう、ずくりと腰奥が疼いた。

「んっ……ん、ふ……」

 延々と舌を啜り、唾液を交換する。脳が痺れるほどの心地良さが体中に広がっていく。
 やがて唇が離れると、互いの唇を銀糸がつないだ。
 晃久は惜しむように澪の濡れた唇を、ちゅと吸い上げる。
 頬やこめかみ、瞼にも接吻の雨が降る。くすぐったさに身を捩れば、耳朶を舐め上げられた。

「あ……くすぐったい」

 ねっとりと舐られて、軽く歯を立て甘噛みされる。
 彼に触れられたところすべてから甘い快楽が滲み出して、愉悦の波を広げた。

「あ……あ……晃久さま」
「……どうした」

 首筋を唇が這い下りて、鎖骨の窪みを舌でなぞられる。甘い愛撫にもどかしささえ覚えて、澪の体はせがむように胸の突起が張り詰め、花芯は頭を擡げた。
 体の変化を察した晃久は喉奥で笑う。

「もう欲しくてたまらないか?」
「んん……そんなことありません。今夜は晃久さまと一緒に高まりたいんです」
「俺も、もう高まっているぞ。ほら」

 ぐい、と腿に押しつけられた晃久の雄芯は熱く昂ぶり、天を突いていた。
 澪は、ごくりと喉を鳴らす。
 晃久が、ほしい。
 自分が幾度もそうされたように、彼にも同じ悦楽を味わってほしかった。

「晃久さまのを……僕にください」

 手を伸ばして、熱い楔にそっと触れる。
 火傷しそうに熱くなっている男根は、どくりと脈打った。

「澪……」
「お願いです。舐めさせて、しゃぶらせてください」

 息を呑んだ晃久は、澪の腰を掴む。

「上に乗れ。こちらに尻をむけるんだ」

 仰向けになった晃久の体に跨がり、彼の顔に尻をむける。そうすると天を突く雄芯が眼前を占めた。
 そっと熱い杭に手を添えて、舌先を這わせる。根元から舐め上げて先端に到達すると、切っ先からゆっくりと口腔に含んでいく。
 熱くて、硬いのに柔らかい。雄芯は澪の口に馴染むように頬裏を優しく擦り上げた。
 僕は今、晃久さまの体の中心を食んでいるんだ。
 それは特別なことで、まるで好きな人のもっとも大事なところを食べているような錯覚を引き起こす。
 澪は夢中で楔を舐めしゃぶった。
 晃久の雄芯はとても大きくてすべてを頬張ることはできないが、懸命に喉奥まで呑み込み、頬を窄めて出し挿れする。

「んっ……んく……晃久さまの、美味しい……」
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