65 / 82
第二章 エウクラトア聖王国
42話 アドリアノちゃん
しおりを挟むニッコリと笑うレイナードに少し私は怯みながら負けじと笑いながら言う。
「レイナード様ならエスコートされたい女性は沢山いるのではありませんか?」
「私が帰国していることなど他の方はご存知ありませんよ」
確かにそうだった……。
うっ……これはレイナードのエスコートは避けられないね。イケメンにエスコートされるとお約束の嫉妬とかありそうで怖いけど、諦めて受け入れるしかないか……。
それに今から探すにも、もう時間が無いし……。
すると、レイナードは更に推してくる。
「私にアマネ様をエスコートする名誉をお与え下さいませんか……?」
そんな艶っぽい表情で言わないで……!!イケメン耐性はないのよ!!
そんな気持ちを押し殺して優雅に微笑みながら私は答えた。
「私でよければ……」
私がそう答えるとレイナードは満面の笑みを見せる。
「ありがとうございます、アマネ様」
そう言って私の右手にチュッと口付けを軽くする。
わあー!わあー!わあー!
私の心の中は大パニックです……。
そんな私のことなどつゆ知らず、周りは微笑ましそうに見ていた。
「あら~。 レイナードもあんな顔をするのね」
「ああ、初めて見たぞ」
「初々しくて若い頃を思い出すわ~」
「そうだな……。 だけど、なんか複雑な気持ちでもあるぞ……」
それぞれが勝手になんか言っているが絶賛大パニック中の私はそれどころでは無かった……。
それから、まだ教皇側に狙われているかもしれないということでレイナードもアドリアノちゃんも引き続きリュミエール邸にいることになった。
そのうちアドリアノちゃんの両親もイエルやイーセスを訪ねることでカモフラージュをしてアドリアノちゃんに会いに来させるとクロスウェル公爵とマーエルとで話し合っていた。
そもそも、アドリアノちゃんが教会に攫われたのは本当一瞬の出来事だったらしい……。その日は運悪くクロスウェル公爵、夫人、そしてアドリアノちゃんのお父さんは不在だったらしい。それから、アドリアノちゃんのお母さんは最近体調を崩してしまい寝込みがちな様子だった。信頼できる乳母は生まれたばかりであるアドリアノちゃんの弟に付きっきり。アドリアノちゃんは必然的に侍女達と一緒にいることになっていた。
もちろん、ほとんどの者たちがクロスウェル公爵と夫人が選んだ信頼できる者。しかし、長年クロスウェル公爵家に仕えてきた数人が歳を理由に引退することになった。そして、新たに人手を雇うことになる。
その新たな使用人に間者はいたのだと言う。一瞬の隙を狙ってアドリアノちゃんはあっという間に攫われてしまったのだと言う……。
アドリアノちゃんを攫った者はすぐにクロスウェル公爵に捕らえられた。それでアドリアノちゃんを攫ったのは教皇派の教会の者達と判明した。
判明してすぐに教会へと殴り込みに行きたかったらしいけど、公爵令嬢としていくら教会に攫われたとしても傷がついてしまう。
どうにか穏便に周りが分からぬように連れ戻せないか……と思っていた時、マーエルから連絡があったということ。
「本当、リュミエール公爵家の皆様にはなんとお礼を言ったらよいのか……!」
「こうして、息子と孫が無事でいることが何よりの奇跡ですわ! 本当に、ありがとうございますわ」
「私からも改めて助けていただきありがとうございます……」
クロスウェル公爵家の面々に言われこちらはニッコリと笑った。
「いえいえ、我々はキーラン大司教と話をしていただけですよ」
「そうですわ。 わたくし達はただお話していただけですわ」
「そうですわね、お義父様、お義母様」
そうあの時私達はバージルとお話ししていただけ。あくまで私達は何もしていないスタンスを貫き通します!
そんな私達の意図に気づいているクロスウェル公爵家もニッコリ笑い始める。
「ハッハッハッ! そうでしたか!」
「ええ、その時にアドリアノちゃんを連れたレイナード君に会ってね……」
「ええ、一緒にお出かけしていたところをリュミエール邸にご招待しましたの」
マーエルとナレスがレイナードとアドリアノちゃんのアリバイを作り始めた。
「それで、クロスウェル公爵家で一人でいるよりはこのリュミエール邸にお世話になった方がいいと考えましてね」
レイナードも乗ってきた!
「それに思いのほかアマネ様に懐いたアドリアノがアマネ様から離れないのね」
クロスウェル夫人も乗った!
「だけど、幼いアドリアノちゃんを一人きりでお預かりするのも可哀想なので叔父であるレイナード様にもこちらに滞在してもらっているのですわ」
こうして、あっという間にレイナードとアドリアノちゃんのアリバイか成立した。
これで、アドリアノちゃんが攫われた事実は闇に葬り傷などない。教皇派の者達を罰することが出来なくなってしまうがここはアドリアノちゃんの公爵令嬢しての名誉が優先された感じ。
クロスウェル公爵達は笑っているけどきっと悔しいに違いない。だけど、孫の未来の為にグッと堪えたのであろうと思う。
だけど、大丈夫……。悪いことをした奴らにはちゃんとお仕置きするからね……!!
20
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説
チート幼女とSSSランク冒険者
紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】
三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が
過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。
神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。
目を開けると日本人の男女の顔があった。
転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・
他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・
転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。
そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語
※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。
妖精王オベロンの異世界生活
悠十
ファンタジー
ある日、サラリーマンの佐々木良太は車に轢かれそうになっていたお婆さんを庇って死んでしまった。
それは、良太が勤める会社が世界初の仮想空間による体感型ゲームを世界に発表し、良太がGMキャラの一人に、所謂『中の人』選ばれた、そんな希望に満ち溢れた、ある日の事だった。
お婆さんを助けた事に後悔はないが、未練があった良太の魂を拾い上げたのは、良太が助けたお婆さんだった。
彼女は、異世界の女神様だったのだ。
女神様は良太に提案する。
「私の管理する世界に転生しませんか?」
そして、良太は女神様の管理する世界に『妖精王オベロン』として転生する事になった。
そこから始まる、妖精王オベロンの異世界生活。
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
【完結】男爵令嬢は冒険者生活を満喫する
影清
ファンタジー
英雄の両親を持つ男爵令嬢のサラは、十歳の頃から冒険者として活動している。優秀な両親、優秀な兄に恥じない娘であろうと努力するサラの前に、たくさんのメイドや護衛に囲まれた侯爵令嬢が現れた。「卒業イベントまでに、立派な冒険者になっておきたいの」。一人でも生きていけるようにだとか、追放なんてごめんだわなど、意味の分からぬことを言う令嬢と関わりたくないサラだが、同じ学園に入学することになって――。
※残酷な描写は予告なく出てきます。
※小説家になろう、アルファポリス、カクヨムに掲載中です。
※106話完結。
あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。
▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ......
どうしようΣ( ̄□ ̄;)
とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!!
R指定は念のためです。
マイペースに更新していきます。
残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)
SHO
ファンタジー
15歳になり、女神からの神託の儀で魔法使い(ウィザード)のジョブを授かった少年ショーンは、幼馴染で剣闘士(ソードファイター)のジョブを授かったデライラと共に、冒険者になるべく街に出た。
しかし、着々と実績を上げていくデライラとは正反対に、ショーンはまともに魔法を発動する事すら出来ない。
相棒のデライラからは愛想を尽かされ、他の冒険者たちからも孤立していくショーンのたった一つの心の拠り所は、森で助けた黒ウサギのノワールだった。
そんなある日、ショーンに悲劇が襲い掛かる。しかしその悲劇が、彼の人生を一変させた。
無双あり、ザマァあり、復讐あり、もふもふありの大冒険、いざ開幕!
悪役令嬢は最強を志す! 〜前世の記憶を思い出したので、とりあえず最強目指して冒険者になろうと思います!〜
フウ
ファンタジー
ソフィア・ルスキューレ公爵令嬢5歳。 先日、第一王子セドリックの婚約者として初めての顔合わせでセドリックの顔を見た瞬間、前世の記憶を思い出しました。
どうやら私は恋愛要素に本格的な……というより鬼畜すぎる難易度の戦闘要素もプラスしたRPGな乙女ゲームの悪役令嬢らしい。
「断罪? 婚約破棄? 国外追放? そして冤罪で殺される? 上等じゃない!」
超絶高スペックな悪役令嬢を舐めるなよっ! 殺される運命というのであれば、最強になってその運命をねじ伏せてやるわ!!
「というわけでお父様! 私、手始めにまず冒険者になります!!」
これは、前世の記憶を思い出したちょっとずれていてポンコツな天然お転婆令嬢が家族の力、自身の力を用いて最強を目指して運命をねじ伏せる物語!!
※ この小説は「小説家になろう」 「カクヨム」でも公開しております。
上記サイトでは先行投稿しております。
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる