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第二章 エウクラトア聖王国

42話 アドリアノちゃん

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 ニッコリと笑うレイナードに少し私は怯みながら負けじと笑いながら言う。

「レイナード様ならエスコートされたい女性は沢山いるのではありませんか?」

「私が帰国していることなど他の方はご存知ありませんよ」

 確かにそうだった……。

 うっ……これはレイナードのエスコートは避けられないね。イケメンにエスコートされるとお約束の嫉妬とかありそうで怖いけど、諦めて受け入れるしかないか……。

 それに今から探すにも、もう時間が無いし……。

 すると、レイナードは更に推してくる。

「私にアマネ様をエスコートする名誉をお与え下さいませんか……?」

 そんな艶っぽい表情で言わないで……!!イケメン耐性はないのよ!!

 そんな気持ちを押し殺して優雅に微笑みながら私は答えた。

「私でよければ……」

 私がそう答えるとレイナードは満面の笑みを見せる。

「ありがとうございます、アマネ様」

 そう言って私の右手にチュッと口付けを軽くする。

 わあー!わあー!わあー!

 私の心の中は大パニックです……。

 そんな私のことなどつゆ知らず、周りは微笑ましそうに見ていた。

「あら~。 レイナードもあんな顔をするのね」

「ああ、初めて見たぞ」

「初々しくて若い頃を思い出すわ~」

「そうだな……。 だけど、なんか複雑な気持ちでもあるぞ……」

 それぞれが勝手になんか言っているが絶賛大パニック中の私はそれどころでは無かった……。



 それから、まだ教皇側に狙われているかもしれないということでレイナードもアドリアノちゃんも引き続きリュミエール邸にいることになった。

 そのうちアドリアノちゃんの両親もイエルやイーセスを訪ねることでカモフラージュをしてアドリアノちゃんに会いに来させるとクロスウェル公爵とマーエルとで話し合っていた。

 そもそも、アドリアノちゃんが教会に攫われたのは本当一瞬の出来事だったらしい……。その日は運悪くクロスウェル公爵、夫人、そしてアドリアノちゃんのお父さんは不在だったらしい。それから、アドリアノちゃんのお母さんは最近体調を崩してしまい寝込みがちな様子だった。信頼できる乳母は生まれたばかりであるアドリアノちゃんの弟に付きっきり。アドリアノちゃんは必然的に侍女達と一緒にいることになっていた。

 もちろん、ほとんどの者たちがクロスウェル公爵と夫人が選んだ信頼できる者。しかし、長年クロスウェル公爵家に仕えてきた数人が歳を理由に引退することになった。そして、新たに人手を雇うことになる。

 その新たな使用人に間者はいたのだと言う。一瞬の隙を狙ってアドリアノちゃんはあっという間に攫われてしまったのだと言う……。

 アドリアノちゃんを攫った者はすぐにクロスウェル公爵に捕らえられた。それでアドリアノちゃんを攫ったのは教皇派の教会の者達と判明した。

 判明してすぐに教会へと殴り込みに行きたかったらしいけど、公爵令嬢としていくら教会に攫われたとしても傷がついてしまう。

 どうにか穏便に周りが分からぬように連れ戻せないか……と思っていた時、マーエルから連絡があったということ。

「本当、リュミエール公爵家の皆様にはなんとお礼を言ったらよいのか……!」

「こうして、息子と孫が無事でいることが何よりの奇跡ですわ! 本当に、ありがとうございますわ」

「私からも改めて助けていただきありがとうございます……」

 クロスウェル公爵家の面々に言われこちらはニッコリと笑った。

「いえいえ、我々はキーラン大司教と話をしていただけですよ」

「そうですわ。 わたくし達はただお話していただけですわ」

「そうですわね、お義父様、お義母様」

 そうあの時私達はバージルとお話ししていただけ。あくまで私達は何もしていないスタンスを貫き通します!

 そんな私達の意図に気づいているクロスウェル公爵家もニッコリ笑い始める。

「ハッハッハッ! そうでしたか!」

「ええ、その時にアドリアノちゃんを連れたレイナード君に会ってね……」

「ええ、一緒にお出かけしていたところをリュミエール邸にご招待しましたの」

 マーエルとナレスがレイナードとアドリアノちゃんのアリバイを作り始めた。

「それで、クロスウェル公爵家で一人でいるよりはこのリュミエール邸にお世話になった方がいいと考えましてね」

 レイナードも乗ってきた!

「それに思いのほかアマネ様に懐いたアドリアノがアマネ様から離れないのね」

 クロスウェル夫人も乗った!

「だけど、幼いアドリアノちゃんを一人きりでお預かりするのも可哀想なので叔父であるレイナード様にもこちらに滞在してもらっているのですわ」

 こうして、あっという間にレイナードとアドリアノちゃんのアリバイか成立した。

 これで、アドリアノちゃんが攫われた事実は闇に葬り傷などない。教皇派の者達を罰することが出来なくなってしまうがここはアドリアノちゃんの公爵令嬢しての名誉が優先された感じ。

 クロスウェル公爵達は笑っているけどきっと悔しいに違いない。だけど、孫の未来の為にグッと堪えたのであろうと思う。

 だけど、大丈夫……。悪いことをした奴らにはちゃんとお仕置きするからね……!!


 


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