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第二章 エウクラトア聖王国
36話 私は選ばれし者
しおりを挟む――リンジー視点
「本日も大変お美しいですわ! 使徒様!」
「ええ、本当に! このお美しい光り輝く金色のお髪!」
「……」
私のことを褒め称えるのは私専属の侍女。一人だけ無口だけどね。
「そうかしら? でも~、あの方……、皇子様の元婚約者の……」
「アーデン公爵令嬢でございますか?」
「そう! その人の方が私より美しいわ……」
私は少し悲しそうな顔をする。すると、侍女達は慌てて私に言う。
「そんなことありませんわ!!」
「使徒様の方がよっぽどお美しいですわ!」
「それに、あのお方よりも皇子殿下に相応しいのは使徒様でございますわ!」
「そうでございます! 使徒様よりお美しい者などおりませんわ!!」
「……」
二人の侍女が代わる代わる言う。一人だけ黙々と私の準備をしている。
「そうかしら……」
「「そうでございますとも!!」」
私は力強く言う侍女達に満足する。
「二人にそう言ってもらって安心したわ」
私はニッコリと二人に笑う。それだけで御利益がありそうと二人ははしゃぐ。
私は心の中でふふっと笑っている。だってようやく私の願いが叶ったんですもの!
私はこの国の貴族として生まれた。貴族といっても末端の男爵家。とても、選ばれた貴族の一員では無かった。そんな中でも私には一つの武器があった。それは美貌。幼い頃からとても可愛らしい子供だった。
それは両親からの愛情も独り占めできるくらいに!私には兄弟がいる。兄、姉、私、弟の順番。だけど両親は四人の中でも人一倍私のことを可愛がってくれた。甘やかしてくれるお父様お母様に代わってお祖母様は厳しくて嫌いだったけど。だってお祖母様は私にだけ厳しいんだもん!他の兄弟達には優しいのに!!
だから、お祖母様が亡くなった時はホッとした。みんなは泣いていたけど私は笑いたくなった。
それからは私の思うがままに出来た。新しい物を買ってもらうのも私が一番。ドレスも新しいものを次々と買ってくれる両親。他の兄弟達に文句を言われようものなら私は両親に泣きつく。そして、怒られるのは私ではなく兄弟の方。次第に私と両親から距離を置く兄弟達。だけど、そんなことはちっとも気にしなかった。
私の世界は薔薇色だった。あの時までは……。
私がとあるお茶会に行った時それは起こった。
いつもと同じように私の友達のところへ挨拶に行く。
「ご機嫌よう」
私がそう声をかけるとお茶会の主催した子爵令嬢は怪訝な顔をした。そして、子爵令嬢と話をしていた数人の令嬢達もこちらを見た。
「ご機嫌よう、何故貴方がここへ?」
「何故ここへ?とはどういうこと? だって私がいなくては始まらないでしょう!」
そう可愛い私がいなくてはお茶会に華がない。だってみんな地味な人達ばかりですもの!!
私が自信満々にそう言うと、周りはクスクスと笑い始める。私はなんで笑っているのか分からない。
「ふふ、別に貴方がいなくてもお茶会は予定通りに始まりますわ」
子爵令嬢の一番近くにいた一人の令嬢が言う。続けて子爵令嬢が言う。
「それに貴方を招待した覚えはありませんわ。 お帰りになって」
出口はあちらよと言われる。
「はぁ? なんなのよ! 私がわざわざ来てやったのに!」
「なんですの? その口の利き方。 貴方のお姉様は大変素晴らしいお方なのに……」
可哀想な人といったような目で見られた。何故ここでお姉様が出てくるのかと頭にきた。
「あんたこそ何様よ!」
すると子爵令嬢が言う。
「この方はヘイデン伯爵家のご令嬢ミリセント様でございますわ! この中で一番位が高いですわ!」
「対して貴方は男爵家。 何様なのはどちらかしら?」
私の中で悔しさが募る。
悔しい!悔しい!悔しい!悔しい!!!!
だから、言った。
「今のうちだけだわ! そんなこと言えるのは! 私はこの国で一番高貴な女性になるのよ!!」
確かこの国には皇子様がいる。私なら絶対に選ばれるばす、妻にと……。
私が言ったことに今度は笑い始める周り。
「ふふっ、貴方何をおっしゃっているの?」
「はぁー可笑しい……。 そんなこと絶対に無理なのに」
「あの方ご存知ないようだから誰か教えてくださらない?」
なにをそんなに笑うのか……!私は初めて屈辱の感情に支配される。
「いいこと? よーくお聞き! 皇子殿下はすでにご婚約者がいらっしゃいますわ。 マルヴィナ・アーデン公爵令嬢、由緒正しき御家のご令嬢ですわ! それに皇子殿下と大変仲がよろしいご様子……。 貴方なんか選ばれる訳がありませんのに!!」
伯爵令嬢がそう言うとまた笑い始める周り。
その日は怒りに震えるまま帰るしかなかった。この日の出来事は決して忘れることが出来ずに私の中でずっと悔しさが消えることが無かった……。
それから時は経ち、私は選ばれた存在になった。突如私に溢れた光の魔力。それは私が神の使徒だから現れた魔力なのだと教皇様から言われた。私を教皇様の元へと連れて来てくれたバルフォア公爵様に感謝している。
それから、あの日私のことを侮辱したあの令嬢達にも不幸になってもらう。だって神の使徒である私をいくら使徒に選ばれる前とはいえ、侮辱したのだから当然でしょ?
全てバルフォア公爵様がそれぞれ不幸してくれると約束してくれた。
これで後はあの選ばれた皇子の元婚約者が不幸になれば私はもっと満たされるばす……。
もっと皇子との仲を見せつけてあげなきゃ!
――だって私は選ばれた者なのだから……。
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