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第二章 エウクラトア聖王国

21話 小鳥

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「!?!?!?」

 静かに目を開けた小鳥は驚きのあまり羽を広げて固まってしまった。

 ああ、やっぱりドアップでシストとマリンが見ていたらそりゃあ驚くよね……。

 予想通りの展開に苦笑いする私。

 だから、シストとマリンを強制的に小鳥と距離を取らせる。

「ごめんね……。 驚いたでしょう?」

「えっ……、は、はい!」

 いまだ混乱中の小鳥。

「気分はどう? どこか具合が悪いところとか無い?」

「えーっと……。 大丈夫です、苦しくもないし……。 えっ? 苦しくない!?」

 小鳥は私に答えたけど、苦しくないことに自分でも驚いている。

 そっか……。弱っている時は苦しかったのか……と思うと心が痛む。

 そして、小鳥は自分の体を確認するようにすると、私の存在というか正体に気づいた。

「あっ、あっ、あっ、あの! 使徒様!」

 私の正体に気づいた瞬間に緊張する小鳥。やっぱり精霊は使徒の力を感じるのかな?だけど、私にそんなに緊張することないよと思った。

「そんな緊張しなくても大丈夫だよ。 それに使徒様じゃなくてアマネでいいよ」

 小鳥はあたふたしながらも嬉しそうに私の名前を呼んで言う。

「ア、ア、アマネ様! ありがとうございます! きっと僕を助けてくれたのはアマネ様ですよね?」

「そうだよー! アマネさまがたすけたんだよー!」

 私の代わりにシストが答えた。何故かシストがえっへん!と胸を張っているが……。

 シストの言葉を聞き、さらに私に感謝する小鳥。

「本当にありがとうございます、アマネ様。 僕はあのまま死んじゃうのかと思っていました……」

「一体何があったの?」

 一番聞きたかったこと。

「それは……。 僕の力をあの子にあげていたんです……」

「それは……」

 やはり、アリーシアの言っていた通りなのだろうか……?

「お願いです、アマネ様!! あの子を助けてください!!」

 あの子を助けてくださいって……一体どういうこと??

「詳しく説明してくれる?」

 私がそう言うと小鳥はポツリポツリと話してくれた。

 小鳥はある人間の子に生まれた時からずっと一緒いたそうだ。小鳥にとってはその子の魂がとても輝いていてそれでいて心地良かった。

 その子の名前はレイナードと言うらしい。

「はじめてレイナードに会った時のことは今だに覚えています! とても輝いて見える、綺麗な魂をしていました! 引き寄せられるように僕はレイナードの側にいることが当たり前になっていきました……」

 それからレイナードの成長を見続け、共に成長していったと。

「それから、レイナードが大きく成長してからレイナードは僕に名前を付けてくれたんです!」

「あら、あなた名前持ちなのね! なんていうの?」

「僕の名前はキーラです!!」

「キーラ、いい名前ね」

 胸を張って自分の名前を言う小鳥、改めキーラ。ちっちゃい小鳥が胸を張る姿は大変可愛らしい。

「レイナードは僕が側にいたから、周りからは精霊使いって呼ばれていました。 僕の他にも仲間の精霊がいて火の上級精霊に風の中級精霊がレイナードの側にいます」

「へぇ~、そんなにいるんだ」

 精霊が三人も側にいるだなんて相当精霊に好かれているね、レイナードという子は。

「レイナードは僕達にとても優しいのです!! だから最初は魂に惹かれて側にいたけど、今はレイナード自身が好きだから側にいるんです!」

 キーラが純粋な感じでレイナードは優しいと言っているからきっと本当だろうと思う。

 キーラのお気に入りの人間が良い心の持ち主そうで良かった……。

「今レイナードはどこにいるの?」

「レイナードは今、教会に捕らわれています……」

「っ!!」

 教会に捕らわれている?一体なんで精霊使いであるレイナードを教会が捕えているのか……?

「どういうこと……?」

「レイナードは僕達がいるからそんじゃそこらの人達よりは強いです。 だけど、教会に行った時不思議な力で拘束されちゃいました。 それからはレイナードの力を取られちゃうし、生命力まで奪われそうになったの……」

 キーラの話だけ聞くと教会はもう真っ黒だ。なんかヤバめの儀式的なことを仕出かしている予感しかしない……。

「それにしても、なんでレイナードの力を教会が欲したのだろう……?」

「きっと精霊使いの力を奪っているのだと思うの……。 レイナードの他にも捕らわれている人がいるんです」

 他にもいるのか……。これは私だけではなくみんなで話し合った方がいいかもしれない……。

「キーラ、この話みんなにも話していい? ここの家の主人である、闇の大精霊と光の大精霊達に……」

「使徒様だけではなく大精霊様方もいたのですか!? も、もちろんです!!」

 キーラは驚きながらみんなに話すことを許してくれた。

 キーラが許可してくれたから私は呼び鈴を鳴らした。すると、すぐにナディアが来てくれる。

「お呼びでしょうか? アマネ様……」

「マーエル達に今から話せるか聞いてくれる? 小鳥が起きたから話したいことがあると……」

「かしこまりました」

 ナディアはそう言って一礼すると部屋を出て行った。

 そして、私はキーラに一つだけ聞いた。

「そういえばキーラ、この屋敷が大精霊の屋敷だからここへ来たの?」

 私の問いかけにキーラはきょとんとした顔で言った。

「アマネ様の、使徒様のお力を感じたので感じるままに飛んできたんですよ?」

 そんな何を言っているの?とでも言いたそうな顔で見ないでキーラ。

 それにしても私の力ってそんなに溢れているのかな……??


 
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