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第二章 エウクラトア聖王国

17話 一ヶ月後

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 ――一ヶ月後。

 マーエル達とはじめて出会った時から一ヶ月が経った。最近はリュミエール領も神の使徒についての話題でいっぱいだった。

「どこもかしこも神の使徒の話題で持ちきりですわ! それにしても偽物のお披露目パーティーなど行きたくありませんわ!!」

 そう私の目の前で愚痴っているのはイーセス。

「本当だわ~。 どうして偽物の為に、聖都にわざわざ行かないといけないのかしら?」

 全く嫌になっちゃうわ~と言った感じでいうナレス。

「私はパーティーに遊びに行きたいです!」

 可愛らしく言うのはラネス。

「うん、今回ラネスはギエルとお留守番よ」

「え~~~!!」

 ぷぅっと頬を膨らませるラネス。

「ラネスはまだ子供だからパーティーには招待されていないのよ」

「つまんなーい!」

 そう言うラネスを微笑ましそうに見ている私達。今は女性陣だけでお茶をしながら話しているところ。女子会だね!

「ついにお披露目パーティーかぁ……」

「そうですわね。 明日から聖都へと向かいますわ。 その際にアマネ様はリュミエール公爵家の養女としてパーティーデビューをいたしますわ!」

「アマネ様がわたくしの娘になるなんて幸せ過ぎますわ!!」

 そう、聖都に行くにあたって私の身分は公爵令嬢になった。マーエルとナレスの娘になったのだ。イエルは兄だ。ちょっと私が貴族令嬢とか笑っちゃうんだけど!

 ちなみに、マーエルの生き別れた弟の子供が私ってことになっている。貴族の血が入ってないと絡んでくる奴らがいるらしいから、血筋はマーエル達と繋がっているよということにした方がいいらしい。

 それにしても貴族のマナーとか分からないよ!と、とても不安なんだが魔法でどうにかするから安心して欲しいとイーセスに言われた……。

 まあ、究極挨拶だけちゃんとしたら後は存在感を薄くさせる魔法でも使おうかなって思っている。

 それから、呼び方に慣れるように人がいる場ではマーエルをお義父様。ナレスをお義母様。イエルをお義兄様。イーセスをお義姉様って呼んでいる……。

 最初に呼んだ時の四人のテンションは爆上がりでちょっと怖かった……。

 ルフスとリドが収束してくれたから助かったけどね。

「それにしても、愚かな奴らですね……。 偽物のお披露目パーティーを一週間もするなんて」

 リドは綺麗な顔を顰めて言う。リドの肩に乗っているマリンも心なしが険しい表情をしている。

「本当許せませんわ! アマネ様を歓迎するパーティーなら一週間もする意味がありますけど! 訳の分からない女の為に一週間もだなんて……。 お金の無駄ですわ!」

 いや、私の場合であってもパーティーなんかしなくてもいいと思うよ、イーセス。

「えっと、最初は貴族達へのお披露目で、最終日に国民へお披露目するんだっけ?」

「そうですわ。 無駄なパーティーを沢山した後に国民へお披露目をし、パレードを予定しているとのことでございます」

「うわー……」

 これはいつどこで罰を与えるか難しいところだ。パレードまで予定しているとは……。いっそ派手にしちゃうことも視野に入れていた方がいいのだろうかとも思う。……いや、それは避けたいな。

「何はともあれまずは、当事者達を観察したいところだよね」

「わたくし達は聖都へ早めに行く予定なので、そのお時間もしっかりとございますからご安心ください」

「色々ロリーナ達を通して聞いたけど、実際見てみないとね」

 情報はロリーナ達が集めてくれているお陰で聖都の当事者達がどんな様子なのか大体は分かった。だけど、実際にどんなことをしているのか私が見なくてはいけないと思うの。

 ロリーナ達の情報を信頼していない訳では無いけど、自分の目で見ないと判断できないと思うから。

 だから、どんな様子なのか見れるように聖都へ向かうのを早めてくれたマーエル達。これで数日間は当事者達を観察できる。

「今は教皇達、ご機嫌らしいですわよ」

 イーセスが嫌そうに言う。

「だけど、そのご機嫌はもう少しで絶望に変わるのではないかしら~」

 対してナレスが楽しそうに言う。意外とナレスって光の大精霊なのに悪魔みたいな時があるよね……。

「偽物の使徒も城の中でやりたい放題らしいですよ」

「あちゃー、そうなるわな」

 だって自分は選ばれた存在だって言われたらきっと調子に乗るやつの方が多いに決まっている。

 ある意味予想通りってことだよね~。

「神の使徒を名乗り好き勝手するなど万死に値します……!」

 やばい、リドの忠誠心に火がついた!

「ですよね! 神の使徒とはウーラノス様がアマネ様だけに授けたものですわ! それを勝手に名乗るだけで万死ですわ!」

 あっ、イーセスにも火がついちゃった!

「二人とも落ち着きなさい」

 おっ!ナレスが止めた。

「だってナレスも許せないでしょ!!」

「ナレスも怒りが絶対あるはずです!」

 イーセスとリドがナレスに言った。ナレスはずっと笑顔のまま淡々と言う。

「もちろん、怒りが泉のように溢れてきますわ。 わたくしはパーティーでそれをチクチクと攻撃しますの。 楽しみでしょう?」

「ああ、そういえばそうね。 わたくしもパーティーが楽しみになってきましたわ!」

「……」

 ナレスが言いたいことはパーティーでチクチクと言葉で攻撃すると言うことだろう……。貴族らしく言葉でお仕置すると言った。それにのったイーセスも楽しみだって言っちゃうし……。

 ご愁傷様です。偽物さん……。

 それにしてもやっぱりナレスって光の大精霊なの?闇の大精霊じゃない?

 そんな二人とは対照的にリドだけ不満そう。リドはパーティーには参加しないもんね……。パーティーの時でも私の側にはいるけど、その時は何もできないから。

 そんなリドに私は言う。

「リドは私がお仕置きする時にお手伝いしてくれるよね? もちろんマリンも」

 私がリドとマリンに言うと二人は嬉しそうに返事をする。

「もちろんでございます、アマネ様!」

「もちろんです!!」

 張り切ったリドとマリンに、ちょっとだけヤバいと思ったのは秘密だ……。


 
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