上 下
38 / 82
第二章 エウクラトア聖王国

15話 エウクラトア聖王国について③

しおりを挟む

「そういう意味でいうと、教皇だけではなくアーデン公爵家もバルフォア公爵家も役目を忘れていますわね~」

 うふふとナレスは笑いながら言っているけど、その笑みはなんとなく恐ろしい。

 ナレスの言葉にギエルが無邪気そうな顔で毒を吐く。

「本当だよ! 自分達が権力を握りたいからって教皇に擦り寄ったりしてさ! お前達の先祖はそんな子孫にがっかりしてるよ! きっと!」

 ……子供の姿で言うの怖いからやめて欲しいな。精霊だから歳で言ったらきっと結構生きているんだろうけどさ、慣れないよ……。

 こればっかりはこちらが慣れないといけないなって思ったところで、話は戻り公爵家の役目とは?と疑問に思う。

「その公爵家の役目って?」

「初代教皇を決めた時に公爵家は協力するだけではなく、時には教皇を諌める役目も初代教皇から与えられたのです」

 初代教皇は一番高い地位にいることで自分が過ちを犯してしまった時の事を考えて公爵家にその諌める役目を与えた。

 そして、これからの教皇になる者達にも傲慢にならない様にと願いを込めて……。

「全くしてないね、その役目」

 初代教皇が可哀想だよ……。あと、初代公爵達ね。子孫が傲慢になってるわ、役目を忘れているわで可哀想……。

「だから、クロスウェル家だけが役目を果たしているということなんです」

 そうなるとクロスウェル公爵家の人に会ってみたいような気もするよ!

 機会があればぜひ会ってみようと思う。

「あとは枢機卿の四人ですが、簡単にいうとこの四人は教皇のイエスマンです」

「枢機卿は建国から在ったの?」

「いいえ、枢機卿ができたのは建国から百年が経った頃でしょうか……。 その時は教会が大きくなり過ぎたので教会の中でも階級を決めたのがはじまりです。そして、教会が権力を持ち始めたのは教皇が愚かになり始めた時代からですね。 それまでは教会はありましたけど純粋なウーラノス様を祀る宗教でした。 しかし、今は教皇の好き勝手できるような腐敗した教会の上層部しかおりません」

 顔を顰めていうイエル。

「まあ、教会が全面的に教皇のバックについたことで公爵家も口を大きくして諌めることが出来なくなった一つの原因ですわね……」

 ちょっと疲れたように話すイーセス。

「やっぱり、宗教を味方につけると力は大きくなるね……」

 宗教は民衆も信仰しているからそれなりに大きい力を持っているからね。下手なことをしたらそれこそ命取りになるだろうな……。

 ざっとだけど、力関係は分かった。後は神の使徒について各々のがどう行動してくるかによって変わってくるだろうと思う。

「とりあえず、権力がある者達は分かったよ。 後は神の使徒についてどう行動してくるか、だね」

 私がそういうとロリーナが反応する。

「お話の途中申し訳ございません……。 そのことについてご報告がございます」

「ああ、先程言っていたことだね。 今話に入ってきたということは偽物の使徒について何か行動があったのかい?」

 マーエルのその問いにロリーナは肯定する。

「はい……。 まさに、あちら側が動いたとの報告が」

「そうか……。 それじゃあここで話せ」

 マーエルはロリーナの答えを聞き、少し険しい顔をしながら言った。

「かしこまりました。 首都に潜入している部下から神の使徒の歓迎パーティーで重大発表をするとの情報が入りました。 つきましては城へ潜入している者に確認いたしましたところ、皇子の婚約者を変えるとのことです……」

「やはりそうきましたか……」

 ナレスは予想していた展開のようであまり驚いていない。

「なら、皇子の次の婚約者はおのずと予想できますわね」

 イーセスが言う通りにこの展開で婚約者の変更と言えば皇子の婚約者はきっとお披露目されるであろう神の使徒になるだろうと思う。

 だけど変更ということは皇子の元の婚約者は誰なのだろうと私は思った。

「今の皇子の婚約者は誰なの?」

 私の疑問に答えてくれたのはイエル。

「今現在ではアーデン公爵家のご令嬢マルヴィナ嬢が皇子の婚約者です」

 教皇側にいるアーデン公爵家。アーデン公爵には息子一人、娘一人いるらしい。その娘であるマルヴィナ嬢が今現在皇子の婚約者。

「結構婚約してから長いの?」

「皇子は現在18歳、マルヴィナ嬢はその一つ下の17歳。 婚約したのは皇子が8歳の時でございます」

「十年か……。 長いね。 その婚約者変更には納得しているのかな? 二人は……」

 十年も婚約していたならそれなりに好き同士でもなくとも情くらいはあると思うの。まあ、無いかもしれないけど……。

「なんとも言えませんわ。 そのことについては何かあるかしら、ロリーナ?」

 イーセスは二人の様子についてロリーナへと問う。

「今はまだ教皇や上層部だけのお話でございます。 アーデン公爵にもお二人にもまだお伝えしていないようでした」

「教皇と枢機卿あたりの暴走かな?」

 ギエルがそう推理する。ギエルは大人に混じって話をちゃんと理解している。対してラネスは話に飽きたのか私の側へといつの間にか来ていた。そして、シスト遊んでいる。

 うん、可愛らしい戯れ合いだ。今思ったけどラネスは大精霊だとしてもまだ子供なのかなって思った。

 可愛い二人に少し癒されたところで私は再び話へと集中する。

「教皇と枢機卿の暴走ならアーデン公爵はどうでるのかな?」

 アーデン公爵と娘の関係性が気になるところ。よく小説とかであるパターンは娘を政略の道具と考えている父親か、めっちゃ溺愛している父親のどちらかだ。

 アーデン公爵はどうなのだろう……??


 


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神々の仲間入りしました。

ラキレスト
ファンタジー
 日本の一般家庭に生まれ平凡に暮らしていた神田えいみ。これからも普通に平凡に暮らしていくと思っていたが、突然巻き込まれたトラブルによって世界は一変する。そこから始まる物語。 「私の娘として生まれ変わりませんか?」 「………、はいぃ!?」 女神の娘になり、兄弟姉妹達、周りの神達に溺愛されながら一人前の神になるべく学び、成長していく。 (ご都合主義展開が多々あります……それでも良ければ読んで下さい) カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しています。

スキル【アイテムコピー】を駆使して金貨のお風呂に入りたい

兎屋亀吉
ファンタジー
異世界転生にあたって、神様から提示されたスキルは4つ。1.【剣術】2.【火魔法】3.【アイテムボックス】4.【アイテムコピー】。これらのスキルの中から、選ぶことのできるスキルは一つだけ。さて、僕は何を選ぶべきか。タイトルで答え出てた。

異世界無知な私が転生~目指すはスローライフ~

丹葉 菟ニ
ファンタジー
倉山美穂 39歳10ヶ月 働けるうちにあったか猫をタップリ着込んで、働いて稼いで老後は ゆっくりスローライフだと夢見るおばさん。 いつもと変わらない日常、隣のブリっ子後輩を適当にあしらいながらも仕事しろと注意してたら突然地震! 悲鳴と逃げ惑う人達の中で咄嗟に 机の下で丸くなる。 対処としては間違って無かった筈なのにぜか飛ばされる感覚に襲われたら静かになってた。 ・・・顔は綺麗だけど。なんかやだ、面倒臭い奴 出てきた。 もう少しマシな奴いませんかね? あっ、出てきた。 男前ですね・・・落ち着いてください。 あっ、やっぱり神様なのね。 転生に当たって便利能力くれるならそれでお願いします。 ノベラを知らないおばさんが 異世界に行くお話です。 不定期更新 誤字脱字 理解不能 読みにくい 等あるかと思いますが、お付き合いして下さる方大歓迎です。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

私はただ自由に空を飛びたいだけなのに!

hennmiasako
ファンタジー
異世界の田舎の孤児院でごく普通の平民の孤児の女の子として生きていたルリエラは、5歳のときに木から落ちて頭を打ち前世の記憶を見てしまった。 ルリエラの前世の彼女は日本人で、病弱でベッドから降りて自由に動き回る事すら出来ず、ただ窓の向こうの空ばかりの見ていた。そんな彼女の願いは「自由に空を飛びたい」だった。でも、魔法も超能力も無い世界ではそんな願いは叶わず、彼女は事故で転落死した。 魔法も超能力も無い世界だけど、それに似た「理術」という不思議な能力が存在する世界。専門知識が必要だけど、前世の彼女の記憶を使って、独学で「理術」を使い、空を自由に飛ぶ夢を叶えようと人知れず努力することにしたルリエラ。 ただの個人的な趣味として空を自由に飛びたいだけなのに、なぜかいろいろと問題が発生して、なかなか自由に空を飛べない主人公が空を自由に飛ぶためにいろいろがんばるお話です。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

めんどくさがり屋の異世界転生〜自由に生きる〜

ゆずゆ
ファンタジー
※ 話の前半を間違えて消してしまいました 誠に申し訳ございません。 —————————————————   前世100歳にして幸せに生涯を遂げた女性がいた。 名前は山梨 花。 他人に話したことはなかったが、もし亡くなったら剣と魔法の世界に転生したいなと夢見ていた。もちろん前世の記憶持ちのままで。 動くがめんどくさい時は、魔法で移動したいなとか、 転移魔法とか使えたらもっと寝れるのに、 休みの前の日に時間止めたいなと考えていた。 それは物心ついた時から生涯を終えるまで。 このお話はめんどくさがり屋で夢見がちな女性が夢の異世界転生をして生きていくお話。 ————————————————— 最後まで読んでくださりありがとうございました!!  

処理中です...