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第二章 エウクラトア聖王国

9話 リュミエール邸

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 私に撫でて欲しい精霊達に囲まれながら、あっという間に馬車の近くまで着いた。

 先程の草原ではなく道のようなものがあった。ただし、舗装されている綺麗な道ではなく土が剥き出しの道。

 ただ、道幅はとても広い。そこへポツンとこの自然の景色には似合わないような豪華な馬車が、二台置かれていた。

 そして待っていたのは真面目そうな執事の姿をした一人の男の人と御者であろう二人の男の人達だった。

 すると、執事の方が恭しく頭を下げて言う。御者であろう二人も執事に続いて頭を下げる。

「おかえりなさいませ」

「ああ、ただいま」

「ウォリー待たせたわね」

 そう言って最初に人化したのはイーセス。そして私達もイエルから降りる。私達がイエルから降りるとイエルも人化する。

 それから私達のことをイエルが執事に紹介する。

「ウォリー、こちらのお方が私達の尊い存在だ」

 執事は私の方を向き丁寧に挨拶をしてくれた。

「お初にお目にかかります……。 私はリュミエール公爵家の執事をさせて頂いておりますウォリー・レイリスと申します」

「はじめて……。 アマネです、どうぞよろしくお願いします」

 なんか高貴な家の執事というだけで緊張してしまった……。だけどこの人達には私がどんな存在なのか知っても大丈夫なの?

 私はチラッとイーセスを見た。

 すると、私の視線に気づいたイーセスは私の視線の意味を察してくれた。

「アマネ様、この者達は大丈夫ですわ。 人間ですが私達の正体も知っています」

 ということはイエルやイーセスが大精霊だということを知っているということね。

「アマネ様の正体についても知っています。 これはアリーシア様にも許可を取り、制約魔法でアマネ様の正体を他人に話すことはできません」

「そっか……」

 なら安心なのかな?

 私がどこか不安な気持ちもイーセスは察していた。

「アマネ様が疑う気持ちも分かりますわ。 ここでは簡単にしかお話できません……。 ですからリュミエール邸へ急ぎましょう。 詳しくはそちらで……」

 そうだよね。ここは外だし、誰が聞いているのか分からない。

「分かった」

 とりあえず私達は急いでイエルとイーセスの屋敷、リュミエール邸へと向かった。




 リュミエール邸へと向かう馬車は二台。一台には女性陣がもう一台には男性陣が乗った。

 イエルだけが駄々を捏ねていたけど、イーセスが凍える視線をイエルに向けたことで一瞬で黙った。

 急いでリュミエール邸へと向かった為、景色を楽しみながら向かうことはできなかった……。というか中が見えないようにカーテンを閉めていた。

 一応安全の為に見えないようにしていますとイーセスは言っていた。せっかく人の住んでいる町に来れたのだから少し見たい気持ちもあったから残念だ……。

 『また今度街を案内致しますわ!』と言われてしまえば文句は言えない。イーセスが街を案内してくれる時を楽しみに待つとしよう!

 そんなこんなであっという間にリュミエール邸へと着いた。今は門を抜けて屋敷へと向かう道を馬車が走っている。とんでもなく広いね~、土地が。

 そういうば、リュミエール邸へと着いたということはここはもうエウクラトア聖王国。あれ?検問とか無かったけど……?

「あれ? イーセス、私すんなりこの国に入れたけど検問とか大丈夫だったの?」

 国に入国する時に身分とか必要とかとか言ってなかったけ?

「ああそれはですね、元々深淵の森に面しているあの場所はリュミエール領でございます。 だから深淵の森から出てこられたアマネ様は身分を明かさなくてももう既に入国している状態でした。 そして、街へと入る検問では私達、公爵家の馬車に乗っていることで免除ですわ」

 それに、まさか深淵の森から人が来ることなんて余程のことが無い限りそこからは入国しないので管理なんてしません。と笑ってイーセスは言っていた。

 まあ、私達は特別っていうか、イレギュラーというか……。

「そうだったんだ。 なら身分が必要になる時はこの領地から出る時かな?」

「そうですわ。 特に首都であるエウリディンに入る時には必要ですね」

 その時はアマネ様にピッタリな身分をご用意しておりますと輝かしい笑顔で言い切ったイーセスだった。

 丁度話が終わる頃馬車は屋敷の前に着いたようだった。

「着きましたね」

 イーセスがそう言うと馬車の扉が開く。まずイーセスがイエルにエスコートされて馬車をおり、私もイエルに手を出された。だから、その手を取り馬車から私も降りた。

 そして目に入ってきたのは……。

「「「「「ようこそお越しくださいました」」」」」

 何人いるか分からないけどズラリと並んだ使用人?達が私に向かって頭を下げている。

「っ……!」

 私は固まった。だってこんなこと一度も経験したことないから!

 どう反応していいか分からなくて固まっている私にイエルが微笑みながら言う。

「さあ、アマネ様。 私の両親と子供達が首を長くして待っております」

 イエルはそう言うと歩き始める。私はハッとしやっと体が動いた。

 使用人達が頭を下げている先には明らかに高貴な存在です!というような四人が待っている。

 私はこの中を歩いていく気まずさを感じながら四人の元へと向かった……。


 
 


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