上 下
22 / 82
第一章 はじまり

21話 お供兼護衛です⑤

しおりを挟む

 先程のプロメテウスが連れてきたライオンさんのように立派な狼。

 きっと私が背中に乗っても大丈夫そうなくらいに大きい。

 狼さんは艶やかな真っ黒い毛に綺麗な緑色の目をしている。なんともカッコいい狼さんだ。

 狼さんはシルフィーネの隣に並ぶと行儀良くお座りをし挨拶をしてくれた。

「アマネ様、はじめまして……。 わたくしは風の大精霊。シルフィーネ様よりアマネ様の護衛を募っていると耳にし、僭越ながらわたくし立候補させていただきました。 アマネ様のお役に立てるように頑張ります故、わたくしをお側においてくださいまし……」

 とても丁寧な挨拶で驚いた。シルフィーネが連れてくる精霊だからもっと軽い感じの精霊を連れてくるのかなって勝手に予想していた……。

 だって風の精霊ってイメージ的に自由な感じがあるからね~。

 それに狼さんカッコいいから男の子かなって思っていたけど話し方で女の子だって気づいた。カッコいいじゃなくてクールビューティーな方だった。

「はじめまして! 丁寧なご挨拶ありがとう! 私の側にいたいと思ってくれて嬉しいよ!」

 私に嬉しいと言われて狼さんも嬉しくなったのか尻尾がふりふり振っている。

 可愛い……。もう、私の周りに可愛いが溢れてる……!

 それぞれ精霊王達は私の琴線に触れる子達を連れてきたようだ。

 幸せを感じているとシルフィーネが話す。

「アマネ様、この子気に入った? この子風の大精霊のリーダー。 強くて賢いよ、絶対に力になるよ!」

 シルフィーネもこの狼さんのことを信頼しているようだ。精霊王であるシルフィーネが信頼している子だもの私と一緒に来るのは異論はない。だけど、ひとつだけ気になることが……。

「大精霊のリーダーが私と一緒に来て大丈夫なの?」

 大精霊のリーダーってことは実質ナンバー2じゃないの?一緒に来ても大丈夫なのかと思った。

「それは大丈夫ですわ! わたくしの息子にリーダーの座は譲りましたから」

 狼さんはニッコリ笑って大丈夫だと言った。

 それにしても……。狼さんはお母さんだったのか!息子さんがいるだなんてびっくりだ!

 だけど、次のリーダーがいるなら安心。

「それなら大丈夫だね! じゃあこれからよろしくね!」

「はいっ! こちらこそよろしくお願いいたしますわ」

 狼さんは嬉しそうに笑った。それと尻尾を高速で振っていた。

「良かったねー!!」

「シルフィーネ様もありがとうございました」

「いいってことよ! 私は元々あなたを選ぶつもりだったからね~」

 シルフィーネと狼さんは笑い合っていた。

 だけど、私にはこれから決めねばならぬことがある!

「さて、みんなの名前を決めないとね!!」

 名付けのタイミングでいつも次の精霊王が来たから一気に名前を考えなくてはいけなくなった。

 私の側にいるお猿さんもライオンさんもトラの赤ちゃんもやっと名付け!と言わんばかりにキラキラの嬉しい期待のこもったオーラを出している。

 狼さんももちろんキラキラの期待している目で見てくる。

「やっと名付けですね」

 アリーシアも私と同じことを思っていた。

 まずは一番最初に来てくれたお猿さんから考えることにする。だから一度お猿さんを肩から下ろす。小さいお猿さんが私の隣にちょこんと座っているのが可愛い。

 えっと……それで何がいいかな?エメみたいに宝石に例えるとか?

 クリクリした青い瞳。普通に考えるならアクアマリンだよね……。アクアだと普通?ならマリン?

 ……マリン、可愛いかも!お猿さん女の子だしいいかも!!

「よし! 決めた! あなたの名前はマリンよ!」

 私はお猿さんを見ながら言った。

 お猿さんは私が名づけると見る見るうちに嬉しさを溢れさせる。それと同時にエメの時と同様にキラキラとお猿さんが輝きはじめた。

「!!」

 輝き出したお猿さんに驚く。

 なんで私が名付けると光り輝くの?この光は大丈夫なの!?と焦る。

 その疑問を解消してくれたのがアリーシアだった。

「アマネ様、大丈夫ですよ。 この光は名付けられたことによって格が上がったことの証拠。 なんの問題もありません」

 アリーシアはそう言ってニコッと私に笑いかけた。

 その言葉を聞いて安心する。

 名前が決まることによって格が上がるか~。レベルアップした的なことだね!とりあえずこの光が何も問題ないのなら安心だわ。

 そして、お猿さん改め、マリンの光は徐々に落ち着いていった。光が落ち着いた後、マリンはキラキラしたお目目で私に言う。

「アマネ様! 素敵なお名前ありがとうございます!!」

 そう言ってマリンはぺこりと頭を下げた。

「気に入ってもらって良かった! さて、次は……」

 順番から言うと次は、ライオンさんだね!

 ライオンさんの方に視線を向けると、行儀正しくお座りをしている。だけど、その目は期待に満ちている。

 カッコいいライオンさんだか、その期待を込めたキラキラの瞳はすごく可愛らしい……。

 その様子に私はクスッとひとつ笑みを浮かべ、それから考えた。

 宝石関連で名付けを統一するとなると、ライオンさんは赤い目だからルビーかな?だけど、ルビーってそのままつけるのもなんかピンとこない……。

 ルビー……、ルビー……、ルビー……。赤……、赤……、赤……。

 あっ!そうだ!!

「決めた! あなたの名前はルフス!」

 私はライオンさんにそう言った。

 すると、ライオンさんもマリン同様に光輝き出した。

 光り輝き出しても、もう私は驚かない。

 私はライオンさん改め、ルフスの光が落ち着くのを待った。



 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神々の仲間入りしました。

ラキレスト
ファンタジー
 日本の一般家庭に生まれ平凡に暮らしていた神田えいみ。これからも普通に平凡に暮らしていくと思っていたが、突然巻き込まれたトラブルによって世界は一変する。そこから始まる物語。 「私の娘として生まれ変わりませんか?」 「………、はいぃ!?」 女神の娘になり、兄弟姉妹達、周りの神達に溺愛されながら一人前の神になるべく学び、成長していく。 (ご都合主義展開が多々あります……それでも良ければ読んで下さい) カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しています。

やり直し令嬢の備忘録

西藤島 みや
ファンタジー
レイノルズの悪魔、アイリス・マリアンナ・レイノルズは、皇太子クロードの婚約者レミを拐かし、暴漢に襲わせた罪で塔に幽閉され、呪詛を吐いて死んだ……しかし、その呪詛が余りに強かったのか、10年前へと再び蘇ってしまう。 これを好機に、今度こそレミを追い落とそうと誓うアイリスだが、前とはずいぶん違ってしまい…… 王道悪役令嬢もの、どこかで見たようなテンプレ展開です。ちょこちょこ過去アイリスの残酷描写があります。 また、外伝は、ざまあされたレミ嬢視点となりますので、お好みにならないかたは、ご注意のほど、お願いします。

スキル【アイテムコピー】を駆使して金貨のお風呂に入りたい

兎屋亀吉
ファンタジー
異世界転生にあたって、神様から提示されたスキルは4つ。1.【剣術】2.【火魔法】3.【アイテムボックス】4.【アイテムコピー】。これらのスキルの中から、選ぶことのできるスキルは一つだけ。さて、僕は何を選ぶべきか。タイトルで答え出てた。

病弱幼女は最強少女だった

如月花恋
ファンタジー
私は結菜(ゆいな) 一応…9歳なんだけど… 身長が全く伸びないっ!! 自分より年下の子に抜かされた!! ふぇぇん 私の身長伸びてよ~

私はただ自由に空を飛びたいだけなのに!

hennmiasako
ファンタジー
異世界の田舎の孤児院でごく普通の平民の孤児の女の子として生きていたルリエラは、5歳のときに木から落ちて頭を打ち前世の記憶を見てしまった。 ルリエラの前世の彼女は日本人で、病弱でベッドから降りて自由に動き回る事すら出来ず、ただ窓の向こうの空ばかりの見ていた。そんな彼女の願いは「自由に空を飛びたい」だった。でも、魔法も超能力も無い世界ではそんな願いは叶わず、彼女は事故で転落死した。 魔法も超能力も無い世界だけど、それに似た「理術」という不思議な能力が存在する世界。専門知識が必要だけど、前世の彼女の記憶を使って、独学で「理術」を使い、空を自由に飛ぶ夢を叶えようと人知れず努力することにしたルリエラ。 ただの個人的な趣味として空を自由に飛びたいだけなのに、なぜかいろいろと問題が発生して、なかなか自由に空を飛べない主人公が空を自由に飛ぶためにいろいろがんばるお話です。

異世界無知な私が転生~目指すはスローライフ~

丹葉 菟ニ
ファンタジー
倉山美穂 39歳10ヶ月 働けるうちにあったか猫をタップリ着込んで、働いて稼いで老後は ゆっくりスローライフだと夢見るおばさん。 いつもと変わらない日常、隣のブリっ子後輩を適当にあしらいながらも仕事しろと注意してたら突然地震! 悲鳴と逃げ惑う人達の中で咄嗟に 机の下で丸くなる。 対処としては間違って無かった筈なのにぜか飛ばされる感覚に襲われたら静かになってた。 ・・・顔は綺麗だけど。なんかやだ、面倒臭い奴 出てきた。 もう少しマシな奴いませんかね? あっ、出てきた。 男前ですね・・・落ち着いてください。 あっ、やっぱり神様なのね。 転生に当たって便利能力くれるならそれでお願いします。 ノベラを知らないおばさんが 異世界に行くお話です。 不定期更新 誤字脱字 理解不能 読みにくい 等あるかと思いますが、お付き合いして下さる方大歓迎です。

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

処理中です...