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第一章 はじまり
21話 お供兼護衛です⑤
しおりを挟む先程のプロメテウスが連れてきたライオンさんのように立派な狼。
きっと私が背中に乗っても大丈夫そうなくらいに大きい。
狼さんは艶やかな真っ黒い毛に綺麗な緑色の目をしている。なんともカッコいい狼さんだ。
狼さんはシルフィーネの隣に並ぶと行儀良くお座りをし挨拶をしてくれた。
「アマネ様、はじめまして……。 わたくしは風の大精霊。シルフィーネ様よりアマネ様の護衛を募っていると耳にし、僭越ながらわたくし立候補させていただきました。 アマネ様のお役に立てるように頑張ります故、わたくしをお側においてくださいまし……」
とても丁寧な挨拶で驚いた。シルフィーネが連れてくる精霊だからもっと軽い感じの精霊を連れてくるのかなって勝手に予想していた……。
だって風の精霊ってイメージ的に自由な感じがあるからね~。
それに狼さんカッコいいから男の子かなって思っていたけど話し方で女の子だって気づいた。カッコいいじゃなくてクールビューティーな方だった。
「はじめまして! 丁寧なご挨拶ありがとう! 私の側にいたいと思ってくれて嬉しいよ!」
私に嬉しいと言われて狼さんも嬉しくなったのか尻尾がふりふり振っている。
可愛い……。もう、私の周りに可愛いが溢れてる……!
それぞれ精霊王達は私の琴線に触れる子達を連れてきたようだ。
幸せを感じているとシルフィーネが話す。
「アマネ様、この子気に入った? この子風の大精霊のリーダー。 強くて賢いよ、絶対に力になるよ!」
シルフィーネもこの狼さんのことを信頼しているようだ。精霊王であるシルフィーネが信頼している子だもの私と一緒に来るのは異論はない。だけど、ひとつだけ気になることが……。
「大精霊のリーダーが私と一緒に来て大丈夫なの?」
大精霊のリーダーってことは実質ナンバー2じゃないの?一緒に来ても大丈夫なのかと思った。
「それは大丈夫ですわ! わたくしの息子にリーダーの座は譲りましたから」
狼さんはニッコリ笑って大丈夫だと言った。
それにしても……。狼さんはお母さんだったのか!息子さんがいるだなんてびっくりだ!
だけど、次のリーダーがいるなら安心。
「それなら大丈夫だね! じゃあこれからよろしくね!」
「はいっ! こちらこそよろしくお願いいたしますわ」
狼さんは嬉しそうに笑った。それと尻尾を高速で振っていた。
「良かったねー!!」
「シルフィーネ様もありがとうございました」
「いいってことよ! 私は元々あなたを選ぶつもりだったからね~」
シルフィーネと狼さんは笑い合っていた。
だけど、私にはこれから決めねばならぬことがある!
「さて、みんなの名前を決めないとね!!」
名付けのタイミングでいつも次の精霊王が来たから一気に名前を考えなくてはいけなくなった。
私の側にいるお猿さんもライオンさんもトラの赤ちゃんもやっと名付け!と言わんばかりにキラキラの嬉しい期待のこもったオーラを出している。
狼さんももちろんキラキラの期待している目で見てくる。
「やっと名付けですね」
アリーシアも私と同じことを思っていた。
まずは一番最初に来てくれたお猿さんから考えることにする。だから一度お猿さんを肩から下ろす。小さいお猿さんが私の隣にちょこんと座っているのが可愛い。
えっと……それで何がいいかな?エメみたいに宝石に例えるとか?
クリクリした青い瞳。普通に考えるならアクアマリンだよね……。アクアだと普通?ならマリン?
……マリン、可愛いかも!お猿さん女の子だしいいかも!!
「よし! 決めた! あなたの名前はマリンよ!」
私はお猿さんを見ながら言った。
お猿さんは私が名づけると見る見るうちに嬉しさを溢れさせる。それと同時にエメの時と同様にキラキラとお猿さんが輝きはじめた。
「!!」
輝き出したお猿さんに驚く。
なんで私が名付けると光り輝くの?この光は大丈夫なの!?と焦る。
その疑問を解消してくれたのがアリーシアだった。
「アマネ様、大丈夫ですよ。 この光は名付けられたことによって格が上がったことの証拠。 なんの問題もありません」
アリーシアはそう言ってニコッと私に笑いかけた。
その言葉を聞いて安心する。
名前が決まることによって格が上がるか~。レベルアップした的なことだね!とりあえずこの光が何も問題ないのなら安心だわ。
そして、お猿さん改め、マリンの光は徐々に落ち着いていった。光が落ち着いた後、マリンはキラキラしたお目目で私に言う。
「アマネ様! 素敵なお名前ありがとうございます!!」
そう言ってマリンはぺこりと頭を下げた。
「気に入ってもらって良かった! さて、次は……」
順番から言うと次は、ライオンさんだね!
ライオンさんの方に視線を向けると、行儀正しくお座りをしている。だけど、その目は期待に満ちている。
カッコいいライオンさんだか、その期待を込めたキラキラの瞳はすごく可愛らしい……。
その様子に私はクスッとひとつ笑みを浮かべ、それから考えた。
宝石関連で名付けを統一するとなると、ライオンさんは赤い目だからルビーかな?だけど、ルビーってそのままつけるのもなんかピンとこない……。
ルビー……、ルビー……、ルビー……。赤……、赤……、赤……。
あっ!そうだ!!
「決めた! あなたの名前はルフス!」
私はライオンさんにそう言った。
すると、ライオンさんもマリン同様に光輝き出した。
光り輝き出しても、もう私は驚かない。
私はライオンさん改め、ルフスの光が落ち着くのを待った。
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