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第一章 はじまり
18話 お供兼護衛です②
しおりを挟むぺこりと頭を下げてこれからよろしくお願いしますと可愛いお猿さんに言われたらそれはもうごく自然に撫でてしまうのは当たり前。
「可愛い~~~!!」
「はわっ! ア、アマネ様~」
慌てているけど、どこか嬉しいそうなお猿さん。そんな姿も可愛い過ぎる!!
ネレウスもアリーシアもエメも微笑ましそうに見ている。
「良かったですね」
「アマネ様のいいお供となるでしょうね」
「可愛くて癒されます~」
エメの言う通り可愛くて癒される~。本当このお猿さん癒し。
「よし! 私のお供になってくれるんだから名前が必要だよね!!」
「そうですね、名がないと少々不便ですしね」
そうと決まれば名前を考えなくては……。えっと、どんな名前がいいかな……?
うーんとお猿さんの名前を考えはじめた途端、来客が来た。
「おや、次の精霊王が来たみたいだよ」
アリーシアがそう言ってまた扉の方へと向かった。
「せっかくアマネ様がその子の名を考える最中だったのに……。 誰ですか? 邪魔をしたのは……」
チッと舌打ちでもしそうなネレウス。本当時々穏やかじゃなくなるのやめて欲しい……。イケオジのイメージが……。
ただ、お猿さんもちょっと残念そうにしている。ネレウスみたいに正直には言えないのだろう。あまり我儘を言えないタイプかな?
そんなことを思っているとアリーシアと共に来たのはプロメテウスだった。
「アマネ様! 昨日ぶりだな!!」
「こんにちは、プロメテウス」
「おう!」
なんとも元気なプロメテウス。そんなプロメテウスは私の隣のネレウスを見ると眉間に皺を寄せる。
「がー、まーた、二番目かよ!! 今日は一番に来たと思ったのに!!」
悔しそうである……。
対してネレウスは得意げな表情だ。
「ふふ、いつも二番手なプロメテウス君」
「おい……、喧嘩売ってんのか?」
どうして毎回そうなる?
「はっ! あなた如きに私は負けませんよ!」
もう睨み合っててバチバチ。あれ?昨日喧嘩はしないって約束しなかった?
「ゴホンっ!!」
「「!!」」
アリーシアがわざとらしく咳をした。その音で二人の精霊王はハッとなる。
アリーシアはとてもいい笑顔だった。だけど、その笑みがとても黒く見えるのは私だけだろうか……?
「お二人とも分かっていますよね? 仲良くですよ……? 出来ないなら……」
「あーと、俺たち仲良いよな!! ほらあれだ! これは、そう! 戯れあいだ!」
「そうですとも! 私達はとても仲が良いですよ……!!」
慌てる二人の精霊王。慌てるくらいなら最初からするなよとも思った。
そんなやり取りがあった後、プロメテウスは改めて話を進める。
「アマネ様の護衛候補、連れてきたぞ!! おい! 入って来い!」
そうプロメテウスが言うと扉から入って来たのは立派な、それはそれは立派なライオンが入ってきた。
金色の毛の立て髪をなびかせながら堂々としている。そして赤い目が特徴的でその目は力強くも理性を感じる瞳だ。
ライオンさんはプロメテウスの隣に並ぶと行儀良くお座りした。結構大きいライオンさんだ。私のイメージのライオンよりも確実に大きいと思う……。私がその背中に乗ってもびくともしなさそう。
ライオンさんをじっと見つめているとぺこりと頭をさげた。そして、プロメテウスが紹介してくれる。
「コイツは火の大精霊だ。 アマネ様の側にいる奴だ、強くなくちゃ意味がねぇと思って力比べをしたんだ! その中で皆を倒し一番強い奴を連れてきたぞ! 護衛には最適の奴だ」
そう言ってプロメテウスはニカっと笑った。続いて隣のライオンさんが挨拶をしてくれた。
「はじめまして、アマネ様。 我は火の大精霊。 この度プロメテウス様よりアマネ様の護衛にとお話をいただきました。 アマネ様の側で活躍できることを我は嬉しく思います。 どうぞ我の力を自由に使ってください」
そして恭しくまたライオンさんは頭をさげた。
なんとも丁寧なライオンさんだ!プロメテウスとは違うね!と思った。ただこのライオンさんも名前が無いようだ……。
「ご丁寧な挨拶ありがとう! 火の大精霊さんは自分の意思で私の護衛になりたいのね?」
「はい! それはもちろん自分の意思です! アマネ様の護衛になりたくて必死に勝ち取りました!」
そうだ、力比べをしたってプロメテウスが言ってたな……。なんか軽い感じで力比べって言っていたけど精霊たちの力比べって規模が凄そうだけど大丈夫かな?世界……。
まあ、アリーシアがニコニコしているから世界に影響の無い程度の力比べかな?と自分で納得する。
それよりもみんなに勝つくらいに頑張って来てくれたからね、私がどうこう言える訳じゃないよ。
「頑張ってくれてありがとう。 これからよろしくね!」
「はい! よろしくお願いします」
嬉しそうに返事をするライオンさん。こんなに立派で見た目は厳つくてカッコいい部類なんだけど、不意に可愛いと思ってしまった。
だから、ちょいちょいと手招きをして近くに寄ってもらう。
ただ膝の上のお猿さんがビクッとして私の肩に登ってきたのはライオンさんが怖いからだろうか?お猿さんのふわふわの毛が頬にあたる。
だけど、これから一緒にいるなら慣れてもらわなくてはならないなと思った。
ライオンさんはお猿さんには気にせず私の目の前までやってきた。
「あなたにも名前を考えないとね~」
そう言って私はライオンさんの立て髪を撫でた。こんなこと前世の世界だったら絶対にできないことだね。ライオンの立て髪を撫でるなんてこと……。
だけどこのライオンさんは知性があるし、なによりライオンではなくて精霊だもんね。怖くは無い。
それにライオンさんも私の手にスリスリと頭を寄せてくる。
……はい、すごく可愛いです!!
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