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第一章 はじまり

11話 私の尻尾

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「それにしてもこの尻尾……」

 美し過ぎる見た目は前向きに考えたが、どうしても尻尾のことは気になる。

 私は一本の尻尾を掴みながらアリーシアに問う。

「狐獣人だというとこは分かったけど、どうして九つも尻尾があるの? お陰で背後がすごい事になってるよ」

 とにかくモッフモフ。これどうなってどこから生えてるの?とか疑問に思う。

 尾骶骨辺りから生えているだろうとは予測できるが、今は確認できない。

 これではすっごく目立つのでは?この世界は狐獣人なら九つも尻尾があるのが普通なのか!?と頭の中で考える私。

「アマネ様、アマネ様が九尾の狐なのは力を上手く使いこなせる為と、神の使徒に相応しい姿だからです」

「力を上手く使いこなせる為?」

 私は神の使徒に相応しい姿はスルーする。

「ええ、アマネ様の尻尾の先がうっすらと色が違うのがお分かり頂けますか?」

 私はこくりと頷く。

「その九つの尻尾はそれぞれが違う力を宿しています。 慣れるまでの処置みたいな物でアマネ様が上手く力を使うようになればその尻尾はただの尻尾になりますがね」

 アリーシアは更に細かく説明してくれた。

 先程確認した尻尾の先の色。赤、青、緑、黄、金、銀、紫、白、黒。これには意味があった。

 赤は火属性、青は水属性、緑は風属性、黄色は地属性、白は光属性、黒は闇属性、紫は雷属性、銀は無属性、金は神聖力。

 尻尾にはこの力を上手く使いこなす媒体のような物らしい。例えるなら魔法の杖が尻尾なのだという。

 へぇーとは思ったけど、いやなんでそれが尻尾なん?という思いは捨て切れない。

「この尻尾が私の力の為ということは分かったけど、これじゃ目立つよね?」

 なんとなくこの世界には九尾の狐獣人は居なさそうだし、人が集まる場所に行けば目立つこと間違いなしである。

「それは大丈夫ですよ、アマネ様。 そのお姿は本来のお姿ですが、アマネ様には変身魔法がお使い頂けますのでね」

「……変身魔法?」

 変身魔法とはその名の通り変身する魔法。ただし、他の人になることは出来ない。自分の髪色や瞳の色、体型、老い若さなどが変身することが出来る。

「アマネ様は基本的にイメージさえ出来れば魔法を簡単にお使い出来ます」

「えっ? イメージするだけで私魔法使えるの?!」

 なんとも便利設定。

「ええ、それ程アマネ様は特別なのです。 さあ! イメージしてみてください、尻尾がひとつになるイメージを」

 アリーシアに言われるがままに私はイメージしてみる。

 背中のふわふわの9本の尻尾が1つのふわふわの尻尾になるイメージ。

 するとアマネの体が光を帯びその姿を変えた。そして一瞬のうちにイメージした通りの姿になった。

「成功ですね!」

 アリーシアは嬉しそうに言った。

「流石アマネ様ですね!!」

 エメにも褒められる。

 私は再び水鏡の方へと視線を向けて自分を確認する。モッフモフで背中が凄いことになっていた尻尾はふわふわの1本の尻尾だけとなっていた。その他は先程見た通りの見た目。イメージした尻尾だけが変化していた。尻尾の色は先の方も含め髪の色と同じ白銀になっている。

 私は、あまりに簡単に魔法を使えた為に驚いた。

 ……これって、いわゆるチートってやつ?

 私が水鏡の前から動かないでいるとアリーシアは近くに寄って来た。

「突然のことで驚いたでしょうが、これから出来ることを確認していきましょう。 いずれ慣れると思いますよ」

 とニッコリ笑うアリーシア。

 いずれ慣れると言うからにはまだまだ驚くことが沢山ありそうだと思う私だった。

「さて、慣れる為にも本来のお姿に戻りましょうか!」

「また、尻尾戻すの?」

 私は正直言って背中にわさわさといっぱい尻尾があるよりは一本で十分だと思う。

 そんな考えもお見通しと言わんばかりにアリーシアは私に言う。

「アマネ様、ここの聖域だけでも本来のお姿に戻っていただきたいのです。 もちろんアマネ様が本来のお姿に慣れていただく事が大切ですが同時に、アマネ様が本来のお姿だと僕達聖域に住む者達は大変心地が良いのです」

「私が本来の姿だと心地良い……?」

 私はアリーシアが言っていることがよく理解出来ずに首を傾げた。

「ええ、アマネ様が本来のお姿になられているさいに僅かながらアマネ様のお力が溢れています。アマネ様にとっては僅かなお力でお分かりになられないかも知れませんが、その溢れたお力がこの聖域にとっては必要なことなのです……」

 アリーシアが言うには、この聖域は元々ウーラノス様の力が少しばかり宿っている場所。そこにアリーシア、世界樹が根を張ったことでさらに安定した。しかし、世界樹の力は素晴らしいものだが世界樹にも栄養は必要。じゃ無ければ元気が無くなってしまう。

 今まではウーラノス自ら世界樹に力もとい栄養を与えていたが、これからは私の力で十分らしい。

 そしてこれは聖域と呼ばれる場所もしかり、その聖域で暮らす者たちにとっても大切な力、栄養らしい。だから、私が本来の姿の時、聖域、アリーシア、エメ達にとっては心地良い回復エリアになっているらしい。

 ……私は栄養剤か!!と密かに思った。

「僕たちにとってはアマネ様が本来のお姿だと大変心地が良いのは神聖なアマネ様の力を感じられるからです。 アマネ様が聖域内で本来のお姿でお過ごしになればなるほど僕たちの力が底上げされる、強くなるということです。 ですからこの聖域為と思い、アマネ様には本来のお姿で過ごして欲しいのです……!!」

 そこまでアリーシアに熱弁されては私はもう何も言えない。

 それに私も聖域の為と言われたら本来の姿に戻るしかなかった……。

 だから、私は再び九尾の狐の獣人を頭の中にイメージした。


 
 
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