上 下
1 / 12

1話

しおりを挟む

 今日は王室主催のパーティー。このパーティーで王太子殿下であるロベルト・ブランシェットの婚約者が正式に決まる。

 わたくしはあまり公の場にきたくは無い……。だけど、王家主催のパーティーには必ず参加しなくてはいけない。ほら、また私のことを話している声がする……。

「見てよ」

「よく、あんな容姿で来られますわね」

「わたくしだったら、とても来れませんわ」

「鏡を見たこと無いんじゃないかしら?」

「いやだわ~」

 そう言ってクスクス笑う声がする。

 心の中で溜息をつく。またか……、そんな気持ちだ。

 わたくしはアーリア・デラクール。このブランシェット王国のデラクール公爵家の長女として産まれた。この国の貴族は一夫多妻でお父様には2人の妻がいる。1人はわたくしのお母様であるアリーシャ第一夫人。もう1人はカリスタ第二夫人。お父様とお母様、第二夫人はとても容姿が良い。そんな人達の子供はさぞかし美しいだろうと皆そう思っていた……。

 だけど、わたくしは醜かった……。お父様とお母様とは似ても似つかない容姿。美しい美貌の両親。対して私は目が細くかろうじて瞳の色が分かるくらい。鼻はぺちゃあっとしていて、太っている。そして極め付けは顔の半分にある痣。この痣が酷く醜い……。

 楽しみにしていた待望の第一子が美しく無いことにお父様はがっかりした。お母様の不貞も疑われたが、お父様はお母様の予定はしっかりと把握していた。そして、わたくしの髪色と瞳がお父様と同じネイビーの髪に金色の瞳だったことがお父様の子である証拠だった。

 だけど、お母様はわたくしのことを愛してくれた。こんな見た目でもわたくしのことを大切にしてくれた。しかし、お父様はわたくしの後にすぐ第二夫人が産んだ妹のカミーラのことを可愛がった。

 カミーラはわたくしと違い、両親と同じく美しく産まれた。第二夫人と同じ薄紫色の髪にお父様と同じ金色の瞳。スタイルは抜群に良く、美しい。

 お父様が、可愛がるのは当然のことだった……。

 わたくしもお父様に見て欲しかった。だけど、現実は残酷だった……。

「私は、お前のことなど見たくない。何故お前のような醜い子が私の子なのか……。アリーシャは美しいのに……。これからは私の前に現れるな!」

 そう言われた時わたくしは酷く傷ついた……。わたくしだって好きでこの姿で産まれたわけじゃない!そんな気持ちだった……。

 だけど、お母様はわたくしに言った。

「アーリア、あなたはお世辞にも美しいとは言えないわ。だけど、その心までは醜くならないようにね。お母様は貴方の優しい気持ち、努力をして何かを学ぶ姿勢がとても美しいと思うわ。そのことを忘れずにね」

 だから、わたくしはお母様の言葉を胸に必死に勉強や、マナーを頑張った。それとこの容姿を少しでもマシにしようと流行りのドレスもいいけど自分に合ったドレスを研究したり、メイクも少しでも目が大きくなるメイク、痣をなるべく目立たない様メイクをし、体型は少しでも痩せる様に運動もした。




 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい

矢口愛留
恋愛
【全11話】 学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。 しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。 クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。 スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。 ※一話あたり短めです。 ※ベリーズカフェにも投稿しております。

ふしだらな悪役令嬢として公開処刑される直前に聖女覚醒、婚約破棄の破棄?ご冗談でしょ(笑)

青の雀
恋愛
病弱な公爵令嬢ビクトリアは、卒業式の日にロバート王太子殿下から婚約破棄されてしまう。病弱なためあまり学園に行っていなかったことを男と浮気していたせいだ。おまけに王太子の浮気相手の令嬢を虐めていたとさえも、と勝手に冤罪を吹っかけられ、断罪されてしまいます。 父のストロベリー公爵は、王家に冤罪だと掛け合うものの、公開処刑の日時が決まる。 断頭台に引きずり出されたビクトリアは、最後に神に祈りを捧げます。 ビクトリアの身体から突然、黄金色の光が放たれ、苛立っていた観衆は穏やかな気持ちに変わっていく。 慌てた王家は、処刑を取りやめにするが……という話にする予定です。 お気づきになられている方もいらっしゃるかと存じますが この小説は、同じ世界観で 1.みなしごだからと婚約破棄された聖女は実は女神の化身だった件について 2.婚約破棄された悪役令嬢は女神様!? 開国の祖を追放した国は滅びの道まっしぐら 3.転生者のヒロインを虐めた悪役令嬢は聖女様!? 国外追放の罪を許してやるからと言っても後の祭りです。 全部、話として続いています。ひとつずつ読んでいただいても、わかるようにはしています。 続編というのか?スピンオフというのかは、わかりません。 本来は、章として区切るべきだったとは、思います。 コンテンツを分けずに章として連載することにしました。

婚約破棄が国を亡ぼす~愚かな王太子たちはそれに気づかなかったようで~

みやび
恋愛
冤罪で婚約破棄などする国の先などたかが知れている。 全くの無実で婚約を破棄された公爵令嬢。 それをあざ笑う人々。 そんな国が亡びるまでほとんど時間は要らなかった。

最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。

ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。 ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も…… ※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。 また、一応転生者も出ます。

(本編完結)家族にも婚約者にも愛されなかった私は・・・・・・従姉妹がそんなに大事ですか?

青空一夏
恋愛
 私はラバジェ伯爵家のソフィ。婚約者はクランシー・ブリス侯爵子息だ。彼はとても優しい、優しすぎるかもしれないほどに。けれど、その優しさが向けられているのは私ではない。  私には従姉妹のココ・バークレー男爵令嬢がいるのだけれど、病弱な彼女を必ずクランシー様は夜会でエスコートする。それを私の家族も当然のように考えていた。私はパーティ会場で心ない噂話の餌食になる。それは愛し合う二人を私が邪魔しているというような話だったり、私に落ち度があってクランシー様から大事にされていないのではないか、という憶測だったり。だから私は・・・・・・  これは家族にも婚約者にも愛されなかった私が、自らの意思で成功を勝ち取る物語。  ※貴族のいる異世界。歴史的配慮はないですし、いろいろご都合主義です。  ※途中タグの追加や削除もありえます。  ※表紙は青空作成AIイラストです。

【完結】妹に全部奪われたので、公爵令息は私がもらってもいいですよね。

曽根原ツタ
恋愛
 ルサレテには完璧な妹ペトロニラがいた。彼女は勉強ができて刺繍も上手。美しくて、優しい、皆からの人気者だった。  ある日、ルサレテが公爵令息と話しただけで彼女の嫉妬を買い、階段から突き落とされる。咄嗟にペトロニラの腕を掴んだため、ふたり一緒に転落した。  その後ペトロニラは、階段から突き落とそうとしたのはルサレテだと嘘をつき、婚約者と家族を奪い、意地悪な姉に仕立てた。  ルサレテは、妹に全てを奪われたが、妹が慕う公爵令息を味方にすることを決意して……?  

冷遇された王妃は自由を望む

空橋彩
恋愛
父を亡くした幼き王子クランに頼まれて王妃として召し上げられたオーラリア。 流行病と戦い、王に、国民に尽くしてきた。 異世界から現れた聖女のおかげで流行病は終息に向かい、王宮に戻ってきてみれば、納得していない者たちから軽んじられ、冷遇された。 夫であるクランは表情があまり変わらず、女性に対してもあまり興味を示さなかった。厳しい所もあり、臣下からは『氷の貴公子』と呼ばれているほどに冷たいところがあった。 そんな彼が聖女を大切にしているようで、オーラリアの待遇がどんどん悪くなっていった。 自分の人生よりも、クランを優先していたオーラリアはある日気づいてしまった。 [もう、彼に私は必要ないんだ]と 数人の信頼できる仲間たちと協力しあい、『離婚』して、自分の人生を取り戻そうとするお話。 貴族設定、病気の治療設定など出てきますが全てフィクションです。私の世界ではこうなのだな、という方向でお楽しみいただけたらと思います。

処理中です...