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8 大どんでん返し!!
しおりを挟む店員が来ると
「和風ハンバーグとドリンクバー。セットでお願いします」
と弥生。
安上がりな女である。
「私はビーフシチューとエスカルゴ。あとは赤ワイングラスで」
と葵(ひとみ)。
どこまでもセレブな女である。
注文を終えた弥生が
「飲み物取ってくるわね」
席を立つ。すると
「えっ?自分で取りに行くの?」
葵(ひとみ)が驚くので弥生はそれに驚いた。
どうやら葵はドリンクバーのシステムを知らないらしい。
「今どき珍しいわね」
葵(ひとみ)に言ってウーロン茶を取りに行き席に戻ると葵(ひとみ)がうつ向きながら徐に話出した。
「弥生…私…三浦先輩と別れた…」
「えっ?!どういう事?」
飲みかけのウーロン茶を少し吐き出しそうになりながら弥生が言った。
「実はさぁ、音信不通なのよ。電話もラインも繋がらない」
「何それ?事件じゃない?!」
弥生が声を荒げて言う。
「私もおかしいと思って探偵雇ったんだ。そしたら結婚詐欺師だったの」
「詐欺師?葵(ひとみ)、あんなに楽しそうだったじゃないの?」
「そうなの。デートの前には必ず美容院とエステ行ってオシャレもし放題。高級レストランにも海外にも何度も連れてってくれたし、私の夢だった世界一周旅行も約束してたからすっかり信用しきってたんだ」
葵は興奮気味に一気に吐き出した。
「それでどうして葵(ひとみ)が騙されてるって気付いたの?」
「う…ん…。一緒に住もうって話になってね…麻布にお家買おうって…。頭金300万出しちゃった」
「えっ?!300万?!」
「うん。それからバックレよ。連絡取れなくなって警察行ったの。そしたら前科があって社長ってのも全部嘘で、何もかも幻~って事よ」
葵(ひとみ)はケロっと言った。
「男運悪すぎだわ」
弥生が言うと
「弥生!結婚するって言ったじゃない!私と先輩。インチキ占い師」
思い余った葵(ひとみ)が冗談混じりに笑いながら言った。
「う…うん…水晶からのお告げを伝えたのよ…」
ともじもじ言う弥生に
「まっ、いーや。あんな男!こっちから捨ててやる!弥生に話して何だかスッキリしたよ。次の探すよっ!次っ!」
流石、恋愛スナイパーである。
「葵(ひとみ)?お詫びと言っては何なんだけど、『雅』に行かない?」
弥生は何とも申し訳ない気持ちと葵(ひとみ)を慰める気持ちが入り交じってそう言ってみた。
「行く!行く!」
詐欺被害者とは思えない程ポジティブな女である。
「じゃあ、和茂さんも誘ってもいい?」
弥生が恐る恐る言ってみると
「あっ、いいね。丁度会いたかったし」
葵(ひとみ)が言ったので弥生は少しホッとして自分の腕時計をチラッと見た。
「今6時半よ。ここからお店まで少し時間かかるけど大丈夫?」
「うん。全然大丈夫」
葵(ひとみ)は、そう言うとワインを呑み干した。
「ちょっと待ってて、和茂さんに連絡してくるから」
弥生が席を立ち店の入口付近まで行き電話をして戻ってくる。
「オッケーだって。7時半に現地集合です」
葵(ひとみ)に告げて二人で席を立ちお会計を済ませると店を出た。
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