5 / 14
5 本気?
しおりを挟む和茂と弥生のマンション。
午後6時。いつもの仕事は4時迄なので明らかに遅い帰宅だ。
「ただいま」
恐る恐るリビングに向かって言う弥生。
「お帰り。遅かったね。今日休みじゃなかったっけ?」
テレビを観ながら和茂が言ったので一瞬ギクッとした弥生だが
「うん…今こんな事態でしょ?人手が足りなくて臨時出勤だったのよ」
何とか繕った。
「飯、適当に食ったから」
赤い水を口にしながら言う和茂。
「そう。ごめんね」
洗面所に行き手洗いとうがいをする。
キッチンに行き冷蔵庫からウーロン茶のペットボトルを取り出しコップに注ぎ入れる。
それを持ってリビングに来て和茂の向かいに座る。
「お疲れ様」
和茂がワイングラスを弥生に向かって差し出して言うのでウーロン茶の入ったグラスと乾杯して
「お疲れ様です」
何とも複雑な心境である。浮気をヤメラレナイもどかしさ。
するとテレビを観ていたはずの和茂が弥生の顔を見て
「どうしたの?弥生ちゃん?また地球の反対側見てる」
茶化して言うので
「あ、あ、そ、そう?そんな事無いわよ」
弥生はハッと我に返って慌てて和茂の言葉を阻止した。
「ちょっと出掛けてくるわね」
弥生は急に思い立ったように言う。
「又出掛けるの?今帰ったばっかりなのに。つまんなぁーい」
和茂が甘える。
「ごめん。直ぐ戻るから」
弥生は家を出た。
「Bar 雅」の看板。
弥生がカランコロンという音と共に木製の重いドアを開けて中に入る。
「あら、弥生ちゃん久しぶりじゃないの。今日は一人?」
ママが不思議そうに言った。
「うん…」
カウンターのママの向かいの席に座る。
「いつものでいい?」
ママがウーロン茶の入ったグラスを弥生の前に置きなから
「どうかしたの?」
ママが聞く。
「大変な事になっちゃって」
弥生が話をし始めようとすると
「もう、うちの店も今、たいっへんよぉー。協力金貰えるからまだいいけどねぇ」
ママが自分の話をし始めたので弥生がママを気遣って
「ごめんね、ママ」
帰ろうとすると
「弥生ちゃん、ごめん。何か話?あったんじゃないの?」
ママが弥生を気遣うので弥生は帰るのを思い留まった。そしておもむろに
「あのね…実は…好きな人…好きな人ができちゃったの」
神妙な面持ちで言う弥生に対して
「あら、弥生ちゃん。今に始まった事じゃないじゃない」
笑いながら言うママ。
「うん…でも今回は本気になりそうで…」
弥生が言う。
「あら、じゃあ和茂ちゃん捨てちゃうの?」
和茂を哀れむようにママが言う。
「そこなのよね…」
ウーロン茶の入ったグラスを握りしめて思い詰めた様に言う弥生。
「悪い子ちゃんだ事」
ママが弥生を嗜める様に言う。
一通り悩みを聞いて貰ったが何の解決策も見付からないまま弥生は渋々家路に着いた。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
夫の不貞現場を目撃してしまいました
秋月乃衣
恋愛
伯爵夫人ミレーユは、夫との間に子供が授からないまま、閨を共にしなくなって一年。
何故か夫から閨を拒否されてしまっているが、理由が分からない。
そんな時に夜会中の庭園で、夫と未亡人のマデリーンが、情事に耽っている場面を目撃してしまう。
なろう様でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる