8 / 21
彼女へのディスタンス
しおりを挟む
君はいつもくよくよと思い悩む。
君は俺が吐く言葉にびくびくと怯えて、「私を責めないで」と云う。俺の素直な感情、正直な気持ちが君を泣かせる。
君は云う。
「私の気持ちは、あなたには絶対分からない」
そう云いながら、君が内心期待していることを俺は知っている。私を慰めて、優しくして、私を追いつめないで――と。
君は夢を語る。薄氷の上を歩くような望み薄の夢を語る。君は焦っている。時間が無いと嘆く。年を取りすぎたと嘆く。
仕事帰りでくたびれた顔の俺は、自由になる僅かな時間を君に捧げている自分の馬鹿げた振る舞いが無性に可笑しくなる。俺は君に気づかれないようにして笑う。
俺はもう、夢の国に住む彼女との距離を縮めようとは思わない。
君は俺が吐く言葉にびくびくと怯えて、「私を責めないで」と云う。俺の素直な感情、正直な気持ちが君を泣かせる。
君は云う。
「私の気持ちは、あなたには絶対分からない」
そう云いながら、君が内心期待していることを俺は知っている。私を慰めて、優しくして、私を追いつめないで――と。
君は夢を語る。薄氷の上を歩くような望み薄の夢を語る。君は焦っている。時間が無いと嘆く。年を取りすぎたと嘆く。
仕事帰りでくたびれた顔の俺は、自由になる僅かな時間を君に捧げている自分の馬鹿げた振る舞いが無性に可笑しくなる。俺は君に気づかれないようにして笑う。
俺はもう、夢の国に住む彼女との距離を縮めようとは思わない。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
バンドRINGERを巡る話①警鐘を鳴らす声
江戸川ばた散歩
ライト文芸
「クロール」「わらう雨」と同じ世界の話。 とある朝、バンド「RINGER」のリーダーでギタリストのケンショーはヴォーカルの「Kちゃん」に逃げられる。 凹んでいた彼の前に高校生バンドのヴォーカル、カナイ君が現れる。 元々ケンショーのファンだった彼。バンドに新たな風は吹くか? と…
ミヤコワスレを君に
五十鈴りく
ライト文芸
のどかな田舎町に東京から転校生がやって来た。垢抜けた美少女ではあるけれど、彼女は少しもクラスに馴染もうとはしなくて……。そんな彼女と教室の外で関わることになった僕。東京を忘れられない彼女と、地元の良さを知ってもらいたい僕とのあれこれ。
※小説家になろう様にて重複投稿させて頂いております。
可不可 §ボーダーライン・シンドローム§ サイコサスペンス
竹比古
ライト文芸
先生、ぼくたちは幸福だったのに、異常だったのですか?
周りの身勝手な人たちは、不幸そうなのに正常だったのですか?
世の人々から、可ではなく、不可というレッテルを貼られ、まるで鴉(カフカ)を見るように厭な顔をされる精神病患者たち。
USA帰りの青年精神科医と、その秘書が、総合病院の一角たる精神科病棟で、或いは行く先々で、ボーダーラインの向こう側にいる人々と出会う。
可ではなく、不可をつけられた人たちとどう向き合い、接するのか。
何か事情がありそうな少年秘書と、青年精神科医の一話読みきりシリーズ。
大雑把な春名と、小舅のような仁の前に現れる、今日の患者は……。
※以前、他サイトで掲載していたものです。
※一部、性描写(必要描写です)があります。苦手な方はお気を付けください。
※表紙画:フリーイラストの加工です。
相馬さんは今日も竹刀を振る
compo
ライト文芸
大学に進学したばかりの僕の所に、祖父から手紙が来た。
1人の少女の世話をして欲しい。
彼女を迎える為に、とある建物をあげる。
何がなんだかわからないまま、両親に連れられて行った先で、僕の静かな生活がどこかに行ってしまうのでした。
【完結】前略、閻魔さま~六道さんで逢いましょう~
渡邊 香梨
ライト文芸
第6回ほっこり・じんわり大賞奨励賞受賞しました!
応援ありがとうございました……!
深町(ふかまち)菜穂子(なおこ)は大学三年生。東京の大学に通っていたところに「祖母危篤」の連絡が届くも、京都に向かう新幹線の中で最後の瞬間に間に合わなかったことを知らされる。
祖父・毅市(きいち)と結婚するまでは、小学校の先生だったと言う祖母・志緒(しお)。
祖母の旧姓は高辻(たかつじ)。
葬儀にはそんな「高辻先生」を慕っていたと言う教え子も何人か来ていた。
そんな志緒の初盆。
旧暦七月、今で言う八月に行われる先祖供養の行事・盂蘭盆会(うらぼんえ)。
亡くなった人の御魂(みたま)を迎えるための風習である「六道(ろくどう)まいり」のために菜穂子も帰省をすることになった。
宗派を超えた京都の古式ゆかしい習慣。
祖母の御魂(みたま)も冥土から一時こちら側に戻って来ると信じられているからだ。
水塔婆に戒名を書いて貰って供養をする傍ら、祖先を迎えるための鐘を撞いた、その日の夜。菜穂子は不思議な現象に遭遇した。
「高辻先生の教え子・八瀬(やせ)彰(あきら)」を名乗る青年に、「高辻先生にどうしても、死後裁判を待つ子供たちの先生になって貰いたい。生前の夫である毅市さん、つまり君のおじいさんを説得して貰えないだろうか」と、どう考えても夢の中の出来事、荒唐無稽と思える懇願を受けたのだ。
元々は親が決めた許婚同士だった祖父と祖母。終戦と共に結婚はしたものの、内心では教師を続けたかった祖母は、彰の話に前向きなのだと言う。だが、祖母を閻魔庁、つまり死後裁判の場で成仏を拒んでずっと待っていた祖父がそれに反対、早々に極楽浄土に向かうことを主張しているのだと。
にわかには信じられない話だった。
更に生者である菜穂子が祖父と祖母の話し合いに参加出来るのは、お盆の前の「迎え鐘」で御魂(みたま)を迎えてから「京都五山送り火」で再び御魂(みたま)を送り出すまでの十日間だけだとも聞かされる。
祖父母に再び会えた喜びもつかの間。菜穂子はどちらの肩を持つべきなのか悩むことになるのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
イラストは無料イラスト「Illust AC」から、お絵描き太郎様の「お盆休暇中の女性」をお借りしています。
ラブ・ソングをあなたに
天川 哲
ライト文芸
人生なんて、何もうまくいかない
どん底に底なんてない、そう思っていた
──君に出会うまでは……
リストラ、離婚、借金まみれの中年親父と、歌うたいの少女が織り成す、アンバランスなメロディーライン
「きっと上手くなんていかないかもしれない。でも、前を向くしかないじゃない」
これは、あなたに
ラブ・ソングが届くまでの物語
お隣の犯罪
原口源太郎
ライト文芸
マンションの隣の部屋から言い争うような声が聞こえてきた。お隣は仲のいい夫婦のようだったが・・・ やがて言い争いはドスンドスンという音に代わり、すぐに静かになった。お隣で一体何があったのだろう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる