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彼女へのディスタンス

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 君はいつもくよくよと思い悩む。
 君は俺が吐く言葉にびくびくと怯えて、「私を責めないで」と云う。俺の素直な感情、正直な気持ちが君を泣かせる。
 君は云う。
「私の気持ちは、あなたには絶対分からない」
 そう云いながら、君が内心期待していることを俺は知っている。私を慰めて、優しくして、私を追いつめないで――と。
 君は夢を語る。薄氷の上を歩くような望み薄の夢を語る。君は焦っている。時間が無いと嘆く。年を取りすぎたと嘆く。
 仕事帰りでくたびれた顔の俺は、自由になる僅かな時間を君に捧げている自分の馬鹿げた振る舞いが無性に可笑しくなる。俺は君に気づかれないようにして笑う。

 俺はもう、夢の国に住む彼女との距離を縮めようとは思わない。
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