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14.アズ・ポーン3
2-5
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「朝ごはん、まだですよね」
「うん」
「用意しますよ」
「ありがとー」
朝ごはんの後は、二人でソファーに座った。
僕の横にいる歌穂ちゃんが、僕に体を寄せてきた。うれしかった。
「キスしていい?」
「やっぱり、聞くんですね」
「礼儀としてね。いつでも受け入れてもらえるだろうとは、思ってないよ」
「そうなの……?」
「うん。そういう気分じゃない時は、断っていいからね」
「う、ん」
「今は? していい?」
「うん……」
歌穂ちゃんが、そっと目を閉じた。かわいかった。
何度もキスをした。
歌穂ちゃんの手が、僕の腕にかかる。
口を離して、首にもキスをした。
「さわのさん。だめ……」
声が濡れていた。ぞくっとした。
「ごめんね」
歌穂ちゃんの目をのぞきこんだ。問いかけるような目をしていた。
歌穂ちゃんは、あまり自分の気持ちを話してこない。だけど、顔つきや仕草から読みとれることなら、いっぱいある。
僕が望めば、許してくれるんだろう。たぶん。
わかっていて、それでも僕は、あえて見過ごすことを選び続けていた。
頭の片隅に、僕じゃないかもしれないという思いがある。
二十一の女の子に、三十の男はふさわしいんだろうか?
僕の腕で捕らえていた体を、解放してあげた。歌穂ちゃんが瞬きをする。
僕をじっと見ていた。
「どうしたの?」
「ちょっと、びっくりしました」
「山賀のこと?」
「はい。あたしを見て、山賀さんも、驚いてました」
「それは、歌穂ちゃんがかわいかったからだと思うよ」
「ちがいますよ。若かったからです」
「二十代半ばくらいに見える時もあるよ。ばっちりメイクすれば……。
今日は、ほら。すっぴんだし」
「ごめんなさい。早く、来たかったから」
「謝るようなことじゃないよ」
「鍵を開けて入っていったら、リビングのソファーに座ってらして。
なんて言ったのかな……。『歌穂さん?』って、聞かれたんだった。
『そうです』って言ったら、『沢野ー』って言って、頭を抱えてました」
「なに、それ。失礼なやつだなー」
「『十代じゃないよね?』って、聞かれました」
「なんて答えたの?」
「『二十一です』って。それでも、『えー』って、感じでした」
「僕が、歌穂ちゃんを騙してるみたいに見えるのかもね」
「はあ……。わかんない。騙されてるつもりはないです。
今日は、予定ありますか?」
「ない。したいこととか、行きたいところとか、ある?」
「ううん。……あっ、祐奈と西東さんのプレゼントを買いたいです」
「あー。二十日と二十二日だっけ」
「そうです。すごいですよね。二日ちがいとか。
二十日に、向こうに行くじゃないですか。今週末までには、用意したいです」
「わかった。今日は、それをやろうか」
「はい」
歌穂ちゃんがメイクをしてる間に、携帯を確認した。
山賀からLINEが来ていた。『大学生?』って。『うん』とだけ返しておいた。
歌穂ちゃんを車に乗せて、新宿の百貨店に行った。
礼慈と祐奈ちゃんのプレゼントは、歌穂ちゃんが選んだ。お金は僕持ち。
僕は図書カードにした。二人分をそれぞれ包装してもらった。
歌穂ちゃんが「食費を金券で補てんしようとするの、どうかと思いますよ……」と言ってきた。
「だめ?」
「二万円の図書カードを二人にべつべつで贈るなら、お金で渡した方がよくない?」
「うーん。それはそれで、受けとりづらいような……」
「あたしが、向こうに遊びに行ってるからですよね」
「僕も行ってるよ。歌穂ちゃんを迎えに行くついでに。
毎回、夕ごはんを食べさせてもらってるからね。さすがに、お返ししないと」
「そうですけど。祐奈は、あたしの部屋には、めったに来ないし……。
あたしだって、祐奈に、あたしが作ったごはんを食べてもらいたいです」
さびしそうに言った。
カフェでケーキを食べて、帰った。いい休日だった。
「うん」
「用意しますよ」
「ありがとー」
朝ごはんの後は、二人でソファーに座った。
僕の横にいる歌穂ちゃんが、僕に体を寄せてきた。うれしかった。
「キスしていい?」
「やっぱり、聞くんですね」
「礼儀としてね。いつでも受け入れてもらえるだろうとは、思ってないよ」
「そうなの……?」
「うん。そういう気分じゃない時は、断っていいからね」
「う、ん」
「今は? していい?」
「うん……」
歌穂ちゃんが、そっと目を閉じた。かわいかった。
何度もキスをした。
歌穂ちゃんの手が、僕の腕にかかる。
口を離して、首にもキスをした。
「さわのさん。だめ……」
声が濡れていた。ぞくっとした。
「ごめんね」
歌穂ちゃんの目をのぞきこんだ。問いかけるような目をしていた。
歌穂ちゃんは、あまり自分の気持ちを話してこない。だけど、顔つきや仕草から読みとれることなら、いっぱいある。
僕が望めば、許してくれるんだろう。たぶん。
わかっていて、それでも僕は、あえて見過ごすことを選び続けていた。
頭の片隅に、僕じゃないかもしれないという思いがある。
二十一の女の子に、三十の男はふさわしいんだろうか?
僕の腕で捕らえていた体を、解放してあげた。歌穂ちゃんが瞬きをする。
僕をじっと見ていた。
「どうしたの?」
「ちょっと、びっくりしました」
「山賀のこと?」
「はい。あたしを見て、山賀さんも、驚いてました」
「それは、歌穂ちゃんがかわいかったからだと思うよ」
「ちがいますよ。若かったからです」
「二十代半ばくらいに見える時もあるよ。ばっちりメイクすれば……。
今日は、ほら。すっぴんだし」
「ごめんなさい。早く、来たかったから」
「謝るようなことじゃないよ」
「鍵を開けて入っていったら、リビングのソファーに座ってらして。
なんて言ったのかな……。『歌穂さん?』って、聞かれたんだった。
『そうです』って言ったら、『沢野ー』って言って、頭を抱えてました」
「なに、それ。失礼なやつだなー」
「『十代じゃないよね?』って、聞かれました」
「なんて答えたの?」
「『二十一です』って。それでも、『えー』って、感じでした」
「僕が、歌穂ちゃんを騙してるみたいに見えるのかもね」
「はあ……。わかんない。騙されてるつもりはないです。
今日は、予定ありますか?」
「ない。したいこととか、行きたいところとか、ある?」
「ううん。……あっ、祐奈と西東さんのプレゼントを買いたいです」
「あー。二十日と二十二日だっけ」
「そうです。すごいですよね。二日ちがいとか。
二十日に、向こうに行くじゃないですか。今週末までには、用意したいです」
「わかった。今日は、それをやろうか」
「はい」
歌穂ちゃんがメイクをしてる間に、携帯を確認した。
山賀からLINEが来ていた。『大学生?』って。『うん』とだけ返しておいた。
歌穂ちゃんを車に乗せて、新宿の百貨店に行った。
礼慈と祐奈ちゃんのプレゼントは、歌穂ちゃんが選んだ。お金は僕持ち。
僕は図書カードにした。二人分をそれぞれ包装してもらった。
歌穂ちゃんが「食費を金券で補てんしようとするの、どうかと思いますよ……」と言ってきた。
「だめ?」
「二万円の図書カードを二人にべつべつで贈るなら、お金で渡した方がよくない?」
「うーん。それはそれで、受けとりづらいような……」
「あたしが、向こうに遊びに行ってるからですよね」
「僕も行ってるよ。歌穂ちゃんを迎えに行くついでに。
毎回、夕ごはんを食べさせてもらってるからね。さすがに、お返ししないと」
「そうですけど。祐奈は、あたしの部屋には、めったに来ないし……。
あたしだって、祐奈に、あたしが作ったごはんを食べてもらいたいです」
さびしそうに言った。
カフェでケーキを食べて、帰った。いい休日だった。
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