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11.スイート・キング5

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 四時頃に、目がさめた。
 スマートフォンのアラームが鳴っている。
 わたしのベッドは、もう寝室に置いてある。今は、わたしのベッドで寝ていた。一緒に寝たつもりだったけど、無意識に移動してしまったのかもしれない。
 アラームを止めて、起き上がった。
 昨日は、ゴールデンウィークが始まる日だった。今日から行く旅行の準備をしたり、冷蔵庫の中にある食材を使い切ろうとしたり、していた。
 夜は、セックスをした。午後九時には、灯りを消した。
 フェリーの時間があるから、五時には、ここを出ていないといけないんだって。

 礼慈さんは、リビングのキッチンにいた。
「おはようー」
「おはよう」
「なに、作ってるの?」
「おにぎり」
「えー。手伝います……」
「もうできるよ。君は、朝ごはんを食べて」
「まだ、食べられない。持っていきます」
「おにぎりでいい? 車で食べていいよ」
「ほんと? お昼の分じゃないの?」
「そのつもりだったけど。向こうに、食べられるところがあるはずだから」
「じゃあ、そうします。ありがとうー」

 車で出発した。マンションの駐車場を出たのは、五時ちょうどくらいだった。

「結構かかると思う」
「大丈夫です。ドライブ、好きです」
「そうだったな。寝てもいいよ」
 やさしいなあと思った。
「音楽、かけていい?」
「いいです」
 なにをかけるんだろうと思っていたら、いつもの洋楽だった。ロックな感じの。
「目がさめました」
「……ごめん。変える?」
「ううん。いいの」
 せっかくだから、鼻歌を歌う礼慈さんを期待しようと思った。

 歌ってくれなかった。
 でも、楽しそうに運転していた。その姿を、横から眺めていた。
 もちろん、ずっと見ていたわけじゃなくて、ちゃんと、前とか、助手席の方の窓の景色も見ていた。
 おにぎりも食べた。鮭が入っていた。


 駐車場に、車が停まった。
 腕時計を見た。午前八時五十二分だった。
「一泊目の荷物だけ、持っていこう」
「はい」
 礼慈さんが、トランクからスーツケースを二つ出してくれた。この中に、神津島に泊まる時の着がえと、山登りで使うスニーカーが入れてある。
「港に行こう」
「間に合いますか?」
「大丈夫だと思う。すぐ近くだから」

 九時半。
 下田港から、フェリーに乗った。

 かなり、揺れてる。大きな揺れ方だった。
 広い床は、マットみたいになっていて、横になってもいいみたいだった。
 壁にはテレビがついていて、午前中のニュースが映っていた。
「船酔いしてない?」
「だいじょうぶ……。礼慈さんは?」
「大丈夫」
 フェリーのパンフレットを見た。曜日で、下田港から、それぞれの島をまわる順番がちがうのがわかった。
「これ、明日は逆なんですね」
「そう。昨日か明日に、神津島にフェリーで行くとしたら、四時間二十分かかる」
「わ、わあー」
「びっくりした?」
「しました。……伊豆大島じゃなくて、神津島にした理由って?」
「なんだろうな。伊豆大島だったら、東京からもフェリーが出てるんだよ。
 でも、神津島に行くには、夜に東京発の大型客船で半日かかる。
 調べてみたら、下田港から、神津島に行くフェリーがあるのが分かって……。片道二時間二十分だったら、いいかなって。
 こういう連休じゃないと、九時半までに、伊豆には来られないだろうなと思ったから」
「たしかに、そうかも……。
 いつか、伊豆大島にも行ってみたいです」
「そうだな。調布から飛行機で行けるよ。高いけど」
「いくら、かかるの?」
「一万五千ちょっと。一人分が」
「わあ……」
「このフェリーが、四千ちょっと。そこにも書いてあるな」
「そんなに、するんですね」

 神津島港に着いたのは、十二時になる少し前だった。
 洋風の建物の宿まで歩いていって、チェックインした。
 かわいい感じの部屋だった。
 礼慈さん作のおにぎりは、もう食べつくしてしまっていたので、宿で昼ごはんを頼んだ。洋食のプレートだった。
「これから、山登りですよね」
「そう。靴は、スニーカーにして。上着は、汚れてもいいジャンパーで」
「はあい」
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