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7.スイート・キング3
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「いや……。こわい……」
「ごめん。大丈夫?」
「ぎゅって、して」
上から、抱きしめてくれた。はあっと、息がもれた。
「だいじょうぶ……。くらっと、したの」
「気絶しそうになった?」
「わかんない。まっしろに、なって……」
「激しすぎた?」
「かも……。でも、きもちよかった、です」
「抜くよ」
「あん、あ、ぁっ」
ずるっと、抜けていった。へんな声がでてしまった。いいところに、あたったから……。
使いおわったコンドームを、礼慈さんがごみ箱に捨てる。
もったいない、と思った。それから、あわてて、そう思ったことをなかったことにした。礼慈さんに、言えないことのひとつ……。
わたし、赤ちゃんがほしい。あなたと、わたしの。
ものすごく、ずうずうしいことを考えてるって、わかってる。
先月の末に、沢野さんの部屋に泊まった時に、沢野さんには、言ってしまった。べつに、笑われたり、怒られたりはしなかった。ただ、やさしく笑って、「いいと思うよ」とだけ、言ってくれた。
すごく、やさしかった。歌穂は、本当にすてきな人と出会えたんだって、今は思ってる。
「いくときって、どんな、感じですか」
「え」
「あの……。でるとき、の」
「分かってる。知りたいんだと思って、びっくりした」
「知りたいです」
「脳が、しびれるような感じ。そのことしか、考えられなくなる、みたいな。
一瞬だけだけど」
「いっしゅんだけ、なんですか?」
「うん。いって、気持ちいいと思うのと同時に、冷静になっていく、かな」
「そうなの……」
「祐奈は?」
「わたしは、だんだん……。ゆっくり、もどってきます。
そんなに、すぐには、もとどおりになれないです」
「一瞬だけ」という言葉が、妙に、心に残った。
わたしと礼慈さんのことを、言われたような気がした。
一瞬だけ。今だけ……。
長くは続かない。そんな言葉が、頭をよぎった。
どうしよう。この人と離れたら、生きていけない。
だってもう、愛してしまった。愛してる。
わたしからは、「愛してる」って、言ったことはない。
「好き」と「愛してる」は、違うと思ったから。礼慈さんに、重いと思われたくなかった。
一度だけ、「愛してるよ」って、言ってもらえたことがある。うれしかった。
でも、ものすごく、こわくなった……。
この愛をなくしたら、わたしはどうなっちゃうんだろうって、思って。
「ごめん。大丈夫?」
「ぎゅって、して」
上から、抱きしめてくれた。はあっと、息がもれた。
「だいじょうぶ……。くらっと、したの」
「気絶しそうになった?」
「わかんない。まっしろに、なって……」
「激しすぎた?」
「かも……。でも、きもちよかった、です」
「抜くよ」
「あん、あ、ぁっ」
ずるっと、抜けていった。へんな声がでてしまった。いいところに、あたったから……。
使いおわったコンドームを、礼慈さんがごみ箱に捨てる。
もったいない、と思った。それから、あわてて、そう思ったことをなかったことにした。礼慈さんに、言えないことのひとつ……。
わたし、赤ちゃんがほしい。あなたと、わたしの。
ものすごく、ずうずうしいことを考えてるって、わかってる。
先月の末に、沢野さんの部屋に泊まった時に、沢野さんには、言ってしまった。べつに、笑われたり、怒られたりはしなかった。ただ、やさしく笑って、「いいと思うよ」とだけ、言ってくれた。
すごく、やさしかった。歌穂は、本当にすてきな人と出会えたんだって、今は思ってる。
「いくときって、どんな、感じですか」
「え」
「あの……。でるとき、の」
「分かってる。知りたいんだと思って、びっくりした」
「知りたいです」
「脳が、しびれるような感じ。そのことしか、考えられなくなる、みたいな。
一瞬だけだけど」
「いっしゅんだけ、なんですか?」
「うん。いって、気持ちいいと思うのと同時に、冷静になっていく、かな」
「そうなの……」
「祐奈は?」
「わたしは、だんだん……。ゆっくり、もどってきます。
そんなに、すぐには、もとどおりになれないです」
「一瞬だけ」という言葉が、妙に、心に残った。
わたしと礼慈さんのことを、言われたような気がした。
一瞬だけ。今だけ……。
長くは続かない。そんな言葉が、頭をよぎった。
どうしよう。この人と離れたら、生きていけない。
だってもう、愛してしまった。愛してる。
わたしからは、「愛してる」って、言ったことはない。
「好き」と「愛してる」は、違うと思ったから。礼慈さんに、重いと思われたくなかった。
一度だけ、「愛してるよ」って、言ってもらえたことがある。うれしかった。
でも、ものすごく、こわくなった……。
この愛をなくしたら、わたしはどうなっちゃうんだろうって、思って。
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