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7.スイート・キング3

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 遊園地を囲むように、ぐるっと、知らない街を車で一周した。
 運転席にいる礼慈さんを、じっと見ていた。好きだなあって、思いながら。
 運転の仕方も、やさしい。急に止まったりしないし、急発進したりもしない。
 ずっと、一緒にいたい……。うっかりすると、泣いてしまいそうだった。
 この時間が、幸せすぎて。

 だんだん暗くなってきた頃に、遊園地に戻ってきた。
 入り口のところから、もう、きらきらと光っていた。
 二人で、歩いていった。

 夏はプールになっている水槽の上が、イルミネーションになっていた。
 まぶしいくらいに、光っている。
 光の色は、青と白が多くて、あとは、少しだけ、黄色と緑。赤やピンクは、なかった。
 ところどころが、動物の形になっていた。りす、うさぎ、鳥。たぶん、鹿? 馬もいた。
 水の上に立って、じっとしているみたいに見えた。
 幻想的な眺めだった。
 童話の中にえがかれた、ファンタジーの世界に、迷いこんでしまったみたい……。
「きれい……」
 見とれてしまった。
「すごい、すてき」
 礼慈さんが、笑う気配がした。
「なあに……?」
「楽しい?」
「うん。たのしいー」
 よく見ると、水面に、ネットのようなものが浮かんでいた。ネットとネットの間に、細い柱がいくつも立っていて、そこに、イルミネーションの機械が取りつけられてるみたいだった。
「恐竜は、こういうところには現れないんだな」
「……うん」
「でも、鳥がいる。知ってる? 鳥は、恐竜の子孫かもしれないって」
「聞いたことは、あります」
「あの鳥は、プテロダクティルスだってことにしよう」
「うん。いいと思います」
「去年、ネットの記事で見たんだけど。鳥は、恐竜そのものだと主張してる人もいる」
「えっ?」
「つまり、恐竜は滅んでないってこと」
「そうなの……?」


 観覧車に乗ることにした。
 昼間にも乗ったけど、また、ちがう雰囲気だった。
 係の人に誘導してもらって、赤い色のゴンドラに乗った。
 少しずつ、ゆっくり上がっていく。
 いろんな色の光が、遊園地のいたるところで光ってるのが、よくわかった。

「あの……。あのね」
「うん?」
「てっぺんで、キスしたいの」
「それは、どこの情報?」
「漫画とか、ドラマ、かなあ……」
「分かった。てっぺん待ちしよう」
「……あきれてますか?」
「いや。かわいいなあ、と」

 一番、高いところに着いた。
 礼慈さんの顔が、ゆっくり近づいてくる。
 軽いキスだった。おでこと、唇に。一回ずつ。
「ふ、ふっ」
「嬉しい?」
「うん。ドラマの中の女優さんに、なった気分」
「なれそうだけどな。ふつうに」
「なに、言ってるの……。なれるわけ、ない」
「そうかな」
「わたしが歌穂だったら、『ばかじゃないの?』って、言っちゃいそうな発言ですよ。それ」
「なりたいものとか、ある?」
「わたし……? ううん。今は、ない。なにも」
「本当に?」
 礼慈さんの目が、すごく近くにある。目が、ちかちかした。
 本当は、ある。
 わたし、お嫁さんになりたい。あなたの……。
 自分で思っておいて、泣きそうになってしまった。こんなこと、言えるわけないって、わかっていた。
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