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6.バージン・クイーン2

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 リビングに戻ったところで、足が止まった。
 祐奈がいた。
 リビングの奥にある大きな窓から、夜景を見ているらしい。
 ガラス窓に右肩をつけて、寄りかかるようにして立っている。
「祐奈」
 顔を動かして、俺を見た。けだるそうに見えた。
 吸いよせられるように、自然と足が動いていた。

 祐奈の前に立った。
 俺の頭の中に、あってはならない光景が浮かんだ。ガラス窓に、華奢な体を押しつけるようにして、裸の祐奈を抱いているところだった。しかも、後ろからだった。
「礼慈さん……?」
「ごめん」
「わからないです。なんのこと?」
「自分の妄想に引いた」
「……考えたんですか。なにを?」
「何でもない」
「そう……?」
 眠そうな顔をしていた。
「夜景を見てた?」
「うん。きれいですね」
「新宿から見た夜景とは、違って見える?」
「どうかな……。あんまり、変わらない気がします」
 曖昧に笑う。色っぽいなと思った。

「眠れなかった?」
「ううん。ねてたの。でも、少し前に、歌穂が部屋に入ってきて……。ぱっと、目がさめちゃって。
 そこから、ねむれなくなっちゃった」
 眠い時の、かわいい話し方になっていた。たまらなかった。
 手を伸ばして、抱きよせた。
 祐奈が身を捩る。抵抗されたことで、余計に火がついた。
 顔をよせて、キスをした。触れるだけのキスをして、顔を離す。
「だめ……」
 祐奈の顔が、いやいやをするように、左右に動いた。幼い仕草に見えた。
「どうして?」
「よそのおうちで、だめです」
「そうだった」
「もし、見られちゃったら、気まずいです」
「だよな。ごめん。
 座ろうか。おいで」
 自分からソファーに座って、祐奈を誘った。
 祐奈は、少しの間、どうしようかと迷うようなそぶりをした。
「眠い?」
「ううん……。また、キスされちゃったら、やだなあと思って」
「しない。約束する」
「じゃあ、いいです」
 ふふっと笑って、こっちに向かってくる。かわいかった。

「飲む?」
「お酒のこと?」
「そう」
「いいです。よその、おうちだし……」
 もともと、飲む人じゃない。それでも訊いたのは、酒を飲めば、眠りやすくなるだろうかと思ったからだ。
 左にいる俺を見てから、目を伏せた。
「紘一のために、料理を作る気になったのは、どうして?」
「……はい?」
 失敗した。訊かなくてもいいようなことを訊いてしまった。
「わたしは、歌穂のつきそいみたいなもので……。少しだけ、手伝っただけです」
「だよな。ごめん」
 祐奈が、また俺を見た。問いかけるような目をしていた。
「やいたの?」
「うん」
「そう……」
「ごめん。困らせたいわけじゃない」
「わかってます」
「この部屋で、どんなことをしたの?」
「どんな、って。歌穂と、ごはんを作ったり。お昼寝、させてもらったり」
「昼寝したの? どこで?」
「今、お借りしてる部屋です」
「そうか」
「だめでしたか?」
「いや。いいんだけど。
 俺が来た時に、風呂上がりみたいだったから。びっくりした」
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