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5.トリッキー・ナイト2
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「キスだけ。だめですか」
「あー、もう。だめじゃないよ。おいで」
言葉が終わる前に、抱きしめられていた。
あたしよりも、だいぶ背が高い沢野さんが、腰を屈めてくれている。
キスをした。した? された、感じ。
口に、何度かキスをされた。
目もとや、鼻の上に。ほっぺたにも。小さく声が出てしまって、あわてて、口を閉じた。
「舌、入れていい?」
「ん……。はい」
「無理してない?」
「だいじょうぶ」
舌が、あたしの口の中に入ってきた。ぞくぞくした。
きもちよかった。
「ん、んっ……」
上手だった。慣れてるんだと思った。
あたしの体を、沢野さんが抱きしめてくる。ぎゅうっと、音がするくらいに。強く。
ものすごく、リアルな感じがした。だけど、同時に、うそだとも思った。こんなふうに、あたしを、必死で求めてくれる人がいて、その人のことを、あたしが、心から尊敬してるってことが……。
沢野さんの息がみだれて、荒くなっていくのを、うれしいと思ってしまった。
「さわのさん……」
流されそうになった。流されてもいい、と思った。
あたし、ぬれてる……。
はずかしくなった。このまま、することになったら、ばれてしまう。
キスだけで、感じるような女だって。
「ごめんね。ここまで」
「はい。……ごめんなさい」
足もとが、ふらついていた。腰をささえてくれる腕の、力強い感じが、うれしかった。
「もっと。もう、すこしだけ」
「だめ」
「なんで……?」
「わかるでしょ?」
わかってた。あたしとキスをして、あたしを抱きしめるだけで、興奮してるんだって。
わからなかった。こんなふうになってくれる人と、セックスをして、なにが悪いの?
「困らせないでよ。大事にしたいんだって。それは、わかってほしい」
「……うん」
あたしから、体を離した。
沢野さんは、苦悩してるみたいな顔をしていた。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃない。
寝室で、一人でしてると思う。のぞきに来ないでね」
「それ、来てほしいっていう、フラグですか」
「違うよ! だめだよ」
「あたしが、しましょうか」
「いい。しなくて、いいから」
「そうですか」
本当は、口でするのはきらいだった。でも、沢野さんのだったら、いいと思った。してあげたい、とも思った。
「じゃあね。おやすみ。
明日は、ゆっくりしてていいからね」
「はーい。おやすみなさい」
沢野さんの姿が、寝室に消えた。
あたしは、ソファーに戻った。テーブルの上には、白い駒が置かれたままだった。ひとつずつ、箱に戻していった。
あたし、沢野さんのことが……。
もう、完全に好きじゃん! どうしよう。
たぶん、ぜんぜん、わかってもらえてない。そのことだけは、わかっていた。
「LINEしよ……」
もちろん、相手は祐奈だ。他に、ともだちなんて、いないし。
最後に残した、白のナイトを手にとった。
たてがみのところを、指で、そっとなでてあげた。あたしの手の中で、きれいな顔をした馬が、かわいく笑ったような気がした。
「あー、もう。だめじゃないよ。おいで」
言葉が終わる前に、抱きしめられていた。
あたしよりも、だいぶ背が高い沢野さんが、腰を屈めてくれている。
キスをした。した? された、感じ。
口に、何度かキスをされた。
目もとや、鼻の上に。ほっぺたにも。小さく声が出てしまって、あわてて、口を閉じた。
「舌、入れていい?」
「ん……。はい」
「無理してない?」
「だいじょうぶ」
舌が、あたしの口の中に入ってきた。ぞくぞくした。
きもちよかった。
「ん、んっ……」
上手だった。慣れてるんだと思った。
あたしの体を、沢野さんが抱きしめてくる。ぎゅうっと、音がするくらいに。強く。
ものすごく、リアルな感じがした。だけど、同時に、うそだとも思った。こんなふうに、あたしを、必死で求めてくれる人がいて、その人のことを、あたしが、心から尊敬してるってことが……。
沢野さんの息がみだれて、荒くなっていくのを、うれしいと思ってしまった。
「さわのさん……」
流されそうになった。流されてもいい、と思った。
あたし、ぬれてる……。
はずかしくなった。このまま、することになったら、ばれてしまう。
キスだけで、感じるような女だって。
「ごめんね。ここまで」
「はい。……ごめんなさい」
足もとが、ふらついていた。腰をささえてくれる腕の、力強い感じが、うれしかった。
「もっと。もう、すこしだけ」
「だめ」
「なんで……?」
「わかるでしょ?」
わかってた。あたしとキスをして、あたしを抱きしめるだけで、興奮してるんだって。
わからなかった。こんなふうになってくれる人と、セックスをして、なにが悪いの?
「困らせないでよ。大事にしたいんだって。それは、わかってほしい」
「……うん」
あたしから、体を離した。
沢野さんは、苦悩してるみたいな顔をしていた。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃない。
寝室で、一人でしてると思う。のぞきに来ないでね」
「それ、来てほしいっていう、フラグですか」
「違うよ! だめだよ」
「あたしが、しましょうか」
「いい。しなくて、いいから」
「そうですか」
本当は、口でするのはきらいだった。でも、沢野さんのだったら、いいと思った。してあげたい、とも思った。
「じゃあね。おやすみ。
明日は、ゆっくりしてていいからね」
「はーい。おやすみなさい」
沢野さんの姿が、寝室に消えた。
あたしは、ソファーに戻った。テーブルの上には、白い駒が置かれたままだった。ひとつずつ、箱に戻していった。
あたし、沢野さんのことが……。
もう、完全に好きじゃん! どうしよう。
たぶん、ぜんぜん、わかってもらえてない。そのことだけは、わかっていた。
「LINEしよ……」
もちろん、相手は祐奈だ。他に、ともだちなんて、いないし。
最後に残した、白のナイトを手にとった。
たてがみのところを、指で、そっとなでてあげた。あたしの手の中で、きれいな顔をした馬が、かわいく笑ったような気がした。
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