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ルーフ・ベルファの終演
しおりを挟む「ご主人様、ごめんなさい」
ペンシルは最後にこのようなことを言った気がする。
俺が3Dプロジェクターの部屋に入ってペンシルに「ありがとう」と言おうとした瞬間であった。俺の体は金縛りにあったように動かなくなったのであった。
「ごごごごごごご主人様ぁん!」
外で見ていたルームは泣き叫びながらこの部屋に入り込んだ。
「ご主人様、何やってんですか。まだ作戦は途中じゃないですか」
「ルーム、ここから離れて。私は上からの命令を処理しなければなりません」
ペンシルは無表情で言った。
「そんな、ペンシル!今まで怪しいなとは思ってたけどご主人様をこんな目にあわせるなんて」
普段物静かなルームがここまで叫ぶことは珍しい。
そしてルームはペンシルの胸倉をつかもうとした。するとペンシルは魔法でルームを突き飛ばして壁にたたきつけた。
「抵抗しても無駄です。私はあなたを傷つけるつもりはありません。桜柳を処理するだけですから」
「そんな、ペンシル。私と、ご主人様と、ロイドとの今までの楽しい思い出は全部演技だっていうんですか?」
「そのとおりです」
情熱的なルームの発言にペンシルは冷たく投げ返す。
「ペンシル。ご主人様はね、ペンシルのことを三人の中で一番愛しているってことわからなかったんですか?」
「それはそうなるように仕向けましたから」
「でも、あそこまで積極的なこと演技じゃできないじゃないですか。そのようなことくらい私にだってわかりますよ」
「演技は演技です。私が演技と言っているのだから演技です」
「そんな……いままでの思い出で楽しいとか思ったことはなかったんですか?」
目に涙を浮かべてつづけた、
「私はとても楽しかったですよ。どうしようもなかったご主人様に拾われて、ペンシルの提案で私は今の生活をすることができるようになりました。ロイドと、ペンシルとご主人様とたくさんのことをしました。ミツマタで作った自動車に乗ってドライブしたり。あの独裁者を押しのけて王になったり。ミツマタで作ったご主人様のビデオゲームはもう面白くて時間を忘れるほどの熱中をしました。4人で対戦したあのゲームの楽しさは今でも忘れられません。あと、4人で作った料理。あの味は今でも覚えています。毎日が新鮮で4人で暮らした日々……ペンシルは何にも感じなかったんですか?」
「……」
ペンシルは沈黙した。
「でも、私は命令を処理しなければならないんです。それはどうしようもないことなんですよ」
今まで無表情だったペンシルは涙をこぼした。
「だったらどうして」
ルームは言った。
「私は上からの命令を聞かなければいけない。いわば人間ロボットなんです。反論する権利なんてありません。反発した瞬間に私の存在はなかったことにされます。つまり消されるってことです」
「みんな、もうよしてくれ」
俺はミツマタで護身用に万能なる「魔除け」を作っていたので、金縛りを解くことができた。
「喧嘩は、しないでくれ」
「ご主人様!」
ルームは言った。
「ご、ご主人様、なんで私の魔法が」
「ペンシル、ルーム……あとロイド。俺を誰だと思ってる。おれは、桜柳桜蘭だ。俺にできないことなんてない。このミツマタがある限り。だからよお、俺のまえでどうしようもないなんていうな。そして、涙なんて流さないでくれ。俺たちは4人で一つだ。誰がかけてもだめだ。だからよう、進み続けないといけないんだ。」
「ご主人様、でもわたしは」
「俺は君が好きだよ。ペンシル。もちろん、ロイドもルームも」
「ペンシルがあの時言ってくれたこと。本当にうれしかったんだ」
「ご主人様」
ペンシルは複雑な表情で答えた。
「確かにペンシルと俺との出会いは非常に不自然であった。まず、見ず知らずの人に結婚しようだなんて普通は言わない。それに、結婚ができなければメイドになってくれだなんて」
今まで黙っていたことをここで言った。
「最初は少し疑っていた。でも、ペンシルは最初は演技をしていたけど、だんだんそれがそう感じなくなったんだ」
「そ、そんな」
「ペンシル、もう上の命令に従う必要なんてない」
「で、でも」
「お前の言うその上の人の存在は今消えてなくなろうとしているんだから」
「そうだろ!」
俺は、ボックスシートで気絶しているルーフ・ベルファの頬を引っ叩きながら言った。
「う、うそ!」
ルームは顔が青ざめた。
「ロイド!いまだ!」
「承知しました!ベーシック・インプット・アウトプット・システム起動、バトルオペレーティングシステム(ターミネーターモード)、空間制御ドライバー、読み込み完了。シュバルツ・ダークマター!!目の前の男『ルーフ・ベルファ』を敵性と判定。」
ロイドが叫んだその瞬間周囲は真っ黒な暗黒な漆黒に包まれたのち、ルーフ・ベルファが砂場に変化した。そしてその砂が次第に細かくなり、存在すらも見えなくなった。
「シュバルツ・ダークマター解除。ご主人様、ルーフ・ベルファをすべての時空平面状から消去しました」
「そ、そんな。今までそんなこと不可能だといわれてきたのに」
「俺は洞察力にも優れた桜柳だ。不可能なんてないし周りで何が起きているかもすぐに判断ができる」
「さすがはご主人様です。」
ルームは今までで一番うれしそうな表情をした。
「ご主人様、今まで騙してきて本当に申し訳ございません。」
ペンシルは涙をこぼしながら言った。
「ペンシル、涙なんて流さないでくれ。君もつらかったんだろう。わかってるって」
「ご、ご主人さまぁぁぁぁ」
ペンシルは泣きながら俺の胸に抱き着いてきた。
天敵であるルーフ・ベルファを処分することに成功したのちは目標はもはや一つしかない。
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