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ルワーネ王国 王都にて
提案という名の決定
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あれから俺は気を失わされたのだろうか。気がつくと朝になっており、見覚えのない部屋に寝かされていた。
重い身体を無理やり起こし、辺りをみまわすと、見張りは1人もいない。本当にここの警備はザルだな。そう思いそっと部屋のドアを開けて廊下の様子を伺うが、やはり誰も通る気配はない。するりとドアの隙間から抜け、逃げ出そうとしたそのとき、手首を後ろから捕まれた。そいつはそのまま俺の背後に回り手首をねじあげる。
「いっ…」
堪らず声を上げると、見覚えのあるその顔がまた嫌味な笑みを浮かべながら、
「いい子にしてなきゃダメだろ?昨晩はよく眠れたようだな」
と楽しそうに言った。やっぱり警備のザルは罠だったか……。俺はわざとそいつに聞こえるように舌打ちをした。
そいつは俺を部屋に連れ戻し、机に腰かけながら俺に顎で椅子に座れと示した。俺が椅子に座ると、彼は満足したかのように自己紹介を始めた。
「俺の名はルーアン。この国の第2王子だ。気安くルアンと呼んでくれていい。」
金髪をかきあげながらキザったらしい笑みを浮かべる。やつの真意は全くわからなかった。これから殺す相手になぜ名乗る必要があるのだろうか。今の時代は敵国に捕まれば、拷問され最終的には殺されるというのが定石である。こいつは俺の方をじっと見つめ、俺が名乗るのを待っているようだった。
「名前なんて聞かずに殺せばいいじゃないですか。」
俺が思ったことをそのまま口にすると、彼は少し目を丸くして俺のことをめずらしいものを見るかのように眺める。そしてくくっと笑って
「普通なら怖じ気づいて今頃命乞いをしてるはずなんだかな。」
と言った。俺は馬鹿にされている気がして、彼を睨み付けると、彼は嬉しそうな顔をして、
「度胸あんじゃねーか。おまえみたいなやつは初めてだな。」
と脚を組み換えながら続ける。
「あと、おまえ勘違いしてるぜ。俺はおまえを殺さねーよ。側に置くことに決めたと伝えにきたんだ。」
今度は俺が目を丸くする番だった。敵国の兵を側に置くなんて信じられない。こいつはきっと頭のねじがいくつか外れているんだろうと心の底から思った。彼は俺が断るなんて思ってもいないらしく、自信満々な顔でこちらを見ていた。
「俺があなたを殺すとは思わないんですか?」
俺は率直な疑問を彼に投げかけた。彼は口の端をあげて笑い、
「やれるものなら。」
と尊大な態度で口にした。
「まあ、考える時間をやらない訳でもない。答えが出たら、俺に…」
「やらせていただきます」
俺は間髪いれずにそう答えた。いつか絶対に母さんの敵をうってやる。その殺意が伝わったのだろうか。彼はなぜか満足そうに笑って、そうかよ、と呟き懐から小さなベルを取りだして、チリチリと鳴らした。すると、廊下からパタパタと走る音が聞こえ、13才くらいの小さな女の子が走ってきた。
「お呼びでしょうか」
その子は王子の前で止まり敬礼した。王子はその子の肩を掴みこちらの方を向かせ、
「俺の側仕えのやつだ。わからないことがあったら、こいつに聞け。」
と俺に紹介した。俺は彼に
「幼女が好みなんて、いい趣味してますね」
と鼻で笑いながら嫌味を言うと、その子はふっくらしたほほをさらに膨らませて
「僕は男ですよ!!」
と叫んだ。後ろで王子がくくっと笑う。わざとだな、と思い俺が睨むと、彼はにやついた顔で白々しく、
「あ、こいつの名前はケンっていうんだぜ?それに俺は19才だから、こいつとは4つしか違わない。」
と言った。絶対にわざとだ。王子はケンの頭をくしゃりとなで、笑みを深くして、こいつの世話をよろしく頼むと言った。その言葉にケンは縦に大きく頭をふり、任せてくださいと誇らしげに答えた。
重い身体を無理やり起こし、辺りをみまわすと、見張りは1人もいない。本当にここの警備はザルだな。そう思いそっと部屋のドアを開けて廊下の様子を伺うが、やはり誰も通る気配はない。するりとドアの隙間から抜け、逃げ出そうとしたそのとき、手首を後ろから捕まれた。そいつはそのまま俺の背後に回り手首をねじあげる。
「いっ…」
堪らず声を上げると、見覚えのあるその顔がまた嫌味な笑みを浮かべながら、
「いい子にしてなきゃダメだろ?昨晩はよく眠れたようだな」
と楽しそうに言った。やっぱり警備のザルは罠だったか……。俺はわざとそいつに聞こえるように舌打ちをした。
そいつは俺を部屋に連れ戻し、机に腰かけながら俺に顎で椅子に座れと示した。俺が椅子に座ると、彼は満足したかのように自己紹介を始めた。
「俺の名はルーアン。この国の第2王子だ。気安くルアンと呼んでくれていい。」
金髪をかきあげながらキザったらしい笑みを浮かべる。やつの真意は全くわからなかった。これから殺す相手になぜ名乗る必要があるのだろうか。今の時代は敵国に捕まれば、拷問され最終的には殺されるというのが定石である。こいつは俺の方をじっと見つめ、俺が名乗るのを待っているようだった。
「名前なんて聞かずに殺せばいいじゃないですか。」
俺が思ったことをそのまま口にすると、彼は少し目を丸くして俺のことをめずらしいものを見るかのように眺める。そしてくくっと笑って
「普通なら怖じ気づいて今頃命乞いをしてるはずなんだかな。」
と言った。俺は馬鹿にされている気がして、彼を睨み付けると、彼は嬉しそうな顔をして、
「度胸あんじゃねーか。おまえみたいなやつは初めてだな。」
と脚を組み換えながら続ける。
「あと、おまえ勘違いしてるぜ。俺はおまえを殺さねーよ。側に置くことに決めたと伝えにきたんだ。」
今度は俺が目を丸くする番だった。敵国の兵を側に置くなんて信じられない。こいつはきっと頭のねじがいくつか外れているんだろうと心の底から思った。彼は俺が断るなんて思ってもいないらしく、自信満々な顔でこちらを見ていた。
「俺があなたを殺すとは思わないんですか?」
俺は率直な疑問を彼に投げかけた。彼は口の端をあげて笑い、
「やれるものなら。」
と尊大な態度で口にした。
「まあ、考える時間をやらない訳でもない。答えが出たら、俺に…」
「やらせていただきます」
俺は間髪いれずにそう答えた。いつか絶対に母さんの敵をうってやる。その殺意が伝わったのだろうか。彼はなぜか満足そうに笑って、そうかよ、と呟き懐から小さなベルを取りだして、チリチリと鳴らした。すると、廊下からパタパタと走る音が聞こえ、13才くらいの小さな女の子が走ってきた。
「お呼びでしょうか」
その子は王子の前で止まり敬礼した。王子はその子の肩を掴みこちらの方を向かせ、
「俺の側仕えのやつだ。わからないことがあったら、こいつに聞け。」
と俺に紹介した。俺は彼に
「幼女が好みなんて、いい趣味してますね」
と鼻で笑いながら嫌味を言うと、その子はふっくらしたほほをさらに膨らませて
「僕は男ですよ!!」
と叫んだ。後ろで王子がくくっと笑う。わざとだな、と思い俺が睨むと、彼はにやついた顔で白々しく、
「あ、こいつの名前はケンっていうんだぜ?それに俺は19才だから、こいつとは4つしか違わない。」
と言った。絶対にわざとだ。王子はケンの頭をくしゃりとなで、笑みを深くして、こいつの世話をよろしく頼むと言った。その言葉にケンは縦に大きく頭をふり、任せてくださいと誇らしげに答えた。
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